★K/DOQIの骨代謝ガイドラインについて
                          <CKDステージ5(透析)の場合のポイント(要旨)>
                                   (CKD=慢性腎疾患)

【1】ガイドライン1(Ca代謝及びP代謝の評価)
@ PTH、Ca、P値測定頻度
・PTH=3ヶ月ごと(わが腎クリニックでも基本的に3ヶ月ごと)
・Ca・P=毎月(わが腎クリニックでは毎週)
Ai―PTH値の目標値
  150〜300pg/ml
  (「善仁会グループ」―透析療法の手引きーによれば65〜200)
=PTH値のさらに正確な測定法必要=

【2】ガイドライン2(CKDに伴う骨疾患の評価)
@ ステージ5のCKD患者は、次の条件を有すれば「骨生検」を検討すべきである。
・微細な骨折または外傷がない骨折(病理学的骨折)がある透析患者
・i―PTH値が100〜500pg/mlであり、原因不明の高Ca血症、重度の骨痛、原因不明の骨型ALP活性上昇等を伴う透析患者
・臨床症状あるいはAl暴露歴から、Al骨症が疑われる透析患者
A 骨折透析患者および骨粗鬆の危険因子を有する透析患者では、DEXA法(二重エネルギーX線吸収法)によるBMD(骨密度)の測定を行なうべきである。(透析患者は、「橈骨」で測定)

【3】ガイドライン3(血清P値の評価)
・ P値維持範囲
3.5〜5.5mg/dl

【4】ガイドライン4(CKD患者の食事におけるP摂取制限)
・食事からのP摂取制限(基本的にi―PTHが目標値を超える場合)
1日800〜1,000mg
(たんぱく質1gあたりのP含有量は12〜16mg)

【5】ガイドライン5(CKD患者におけるP吸収剤の使用)
@ P値、i―PTH値が目標値範囲内にコントロールできない場合P吸着剤を使用する。
 (Ca含有P吸着剤及びCa・Al・Mg非含有P吸着剤<塩酸セベラマー>・両剤併用あり)
A 補正Ca値が10.2mg/dl以上、または2回の測定で連続してi−PTH値が150mg以下の透析患者にはCa含有P吸着剤は使用すべきではない。
 <注>
 補正Ca値(mg/dl)=実測Ca値(mg/dl)+0.8×〔4−Alb値(g/dl)〕
B P値が7mg以上の透析患者では、Al含有P吸着剤を短期間(4週間)使用し、その後は他のP吸着剤に変更する。透析回数を増やすことも考慮すべきである。

【6】ガイドライン6(Ca値及びCa×P値)
@ 補正Ca値許容値
8.4〜10.2mg/dl(下限値に近い方が好ましい)
A 補正Ca値10.2mg/dlを超えた場合の治療(是正)
・Ca含有P吸着剤の減量か、Ca・Al・Mg非含有P吸着剤<塩
  酸セベラマー>に変更
・ビタミンDの減量か、補正Ca値目標値(9.5mg/dl)に回
  復するまでビタミンD使用中止
・以上二つによっても、高Ca血症(補正Ca値10.2mg/dl
 以上)が続く場合は、低Ca透析液(1.5〜2.0mEq/l)
 による透析を3〜4週間行う。(短期間の処方透析)
B 「Ca×P値」は、「55mg/dl以下」を維持すべきである。

【7】ガイドライン7(CKD患者におけるビタミンD不足/欠乏の予防と治療)
―CKDステージ3〜4対象なので省略―

【8】ガイドライン8(ステージ5のCKD患者へのビタミンD療法)
@ i―PTH値が300pg/ml以上の透析患者には、目標範囲(150〜300pg/ml)に低下させるために、活性型ビタミンD製剤(一般名:「カルシトリオール」、または「カルシトリオール」のアナログ:「アルファカルシドール」「パリカルシトール」「ドキセルカルシフェロール」等)を投与すべきである。
★ビタミンD製剤の使用開始用量

i−PTH値(pg/ml) 300〜600 600〜1,000 >1,000
Ca値(mg/dl) <9.5 <9.5 <10.0
P値(mg/dl) <5.5 <5.5 <5.5
Ca×P値(mg/dl) <55 <55 <55
カルシトリオール
(ロカルトロール)
静注0.5〜1.5μg
経口0.5〜1.5μg
静注1.0〜3.0μg
経口1〜4μg
静注3.0〜5.0μg
経口3〜7μg
パリカルシトール 静注2.5〜5.0μg 静注6.0〜10μg 静注10〜15μg
ドキセルカルシフェロール 経口 5μg
静注 2μg
経口 5〜10μg
静注 2〜4μg
経口10〜20μg
静注 4〜8μg

A 「カルシトリオール」のi―PTH値低下の効果は、断続的静注投与の方が連日経口投与より強い。(Pを上げない新しいビタミンD製剤が待たれる。)

【9】ガイドライン9(透析液Ca濃度)
・ 透析液Ca濃度は、2.5mEq/lとすべきである。
(わが腎クリニックは「キンダリー液AF−3P号」が標準液なので2.5mEq/l)

【10】ガイドライン10(β2−MGアミロイドーシス)
・ β2−MGアミロイドーシスのスクーリングは、β2−MG値の測定も含め推奨できない。
1.β2−MGアミロイドーシスの進行を阻止できる・あるいは緩和できる治療法は現在腎移植を除いて他にない。
2.β2−MGアミロイドーシスの徴候が認められる透析患者、またはそのリスクを有する透析患者には、ハイフラックス(ハイパーフォーマンス)膜を使用すべきである。

【11】ガイドライン11(CKD患者におけるAl過剰及び毒性)
@ Al毒性を予防するために、Alの定期的投与は避け、透析液のAl濃度は10μg/l以下に維持すべきである。
A Al値の測定は、少なくとも年1回、Al含有製剤の投与を受けている場合は3ヶ月ごとに行うべきである。
(Al値のベースラインは20μg/l以下)
B Al値が上昇(60〜200μg/l)した場合、またはAl毒性の臨床的徴候や症状(略)がみられる場合には、デフェロキサミン(DFO)試験を行うべきである。
・DFO試験では、透析終了1時間前にDFO5mg/kgを注入し、Al値の測定は注入前及び2日後の次回透析前に行なう。
・この試験は、Al値の上昇が50μg/l以上の場合を陽性とする。
・DFOによる神経毒性を回避するために、Al値が200μg/l以上の場合はDFO試験を実施すべきではない。
C DFO試験後にAl値が50μg/l以上上昇し、かつi―PTHが150pg/ml以下の場合は、Al骨症の存在が予測できる。
(確定診断は、骨生検においてアルミニウム染色部位の増加(15〜25%以下)を認めることである。この場合、無形成骨や骨軟化症がしばしば認められる。)

【12】ガイドライン12(Al毒性の治療)
@ Al値が60μg/l以上200μg/l以下、またはAlの上昇が50μg/lを超える症候すべてを有する透析患者には、Al過剰の治療としてDFOを投与すべきである。
A Al値200μg/l以上の透析患者でDFOによる神経毒性を回避するためには、ハイフラックス膜とAl濃度5μg/l以下の透析液を用いた週6日の集中透析を行い、Al値200μg/l以下に低下するまでは、DFOを投与すべきでない。

【13】ガイドライン13(CKD患者における骨疾患の治療)
(1) ガイドライン13A<副甲状腺機能亢進症(高回転骨)及び混合型(石灰化障害を伴う高回転骨)骨疾患>
i−PTH値が300pg/mlに上昇した場合は、PTH過剰がもたらす骨の状態(高回転骨性疾患等)を改善させるため、及び石灰化障害を治療するために、「カルシトリオール」またはそのアナログ(「アルファカルシドール」「パリカルシトール」「ドキセルカルシフェロール」)の一つを投与すべきである。
(2) ガイドライン13B<骨軟化症>
@ Al骨症をもたらすAl過剰は、DFOで治療すべきである。
A ビタミンD2またはD3欠乏、P除去によって生じる骨軟化症は稀ではあるが、それぞれビタミンD2またはD3補給、及び/またはP投与によって治療すべきである。
(特にステージ5では活性型ビタミンD製剤使用可)
(3) ガイドライン13C<無形成骨>
@ 無形成骨(骨生検またはi―PTH値100pg/ml以下で診断)は、骨回転を亢進させるためにi―PTH値の上昇を図ることで治療すべきである。
A @は、Ca含有P吸着剤及びビタミンD療法の用量減量または中止によって達成できる。

【14】ガイドライン14(CKD患者の副甲状腺摘出手術)
@ 副甲状腺摘出手術(PTX)は、副甲状腺機能亢進症(i―PTH値800pg/ml以上が持続)透析患者で、内科的治療に抵抗性の高Ca血症や高P血症を伴う場合に推奨されるべきである。
A 副甲状腺摘出手術(PTX)は、副甲状腺亜全摘術または副甲状腺組織自家移植を行う全摘術によって達成できる。
 (手術実施に先立って画像診断<超音波検査・CTスキャン等>必要)
B 副甲状腺摘出手術(PTX)を行った透析患者においては、次のことを実施すべきである。
・血中イオン化Ca値の測定は、術後最初の48〜72時間は4〜6時間ごとに、その後は安定するまで1日2回実施すべきである。
・血中イオン化Ca値または補正総Ca値が正常値未満(血中イオン化Ca値3.6mg/dl以下<=総Ca値7.2mg/dl>)に低下した場合は、グルコン酸Ca静注をCaとして、1〜2mg/kg/hで投与開始し、イオン化Ca値が正常範囲(4.6〜5.4mg/dl)を維持するように調整すべきである。(10%グルコン酸Caの10mlアンプルにはCaが90mg含まれている。)
・イオン化Ca値が正常範囲に達し安定している場合には、Ca剤静注は徐々に減らすべきである。
・経口投与が可能な場合には、炭酸Ca1〜2gを1日3回及びカルシトリオール(ロカルトロール)1日2μgを投与すべきである。
 (これらは必要に応じ調整)
・手術に先立ち該当透析患者にP吸着剤を投与している場合は、この治療はP値に応じて中止または減量する必要がある。

【15】ガイドライン15(代謝性アシドーシス)
@ 血清総CO2値を測定すべきである。(少なくとも毎月)
A 血清総CO2値は、22mEq/l以上に維持すべきで、必要であれば、目標値達成のためアルカリ塩の補給を行うべきである。

【16】ガイドライン16(腎移植患者の骨疾患)
@ 腎移植後は、Ca・P・i―PTH・総CO2をモニターすべきである。

パラメータ 最初の3ヶ月 移植後3ヶ月〜1年
Ca 2週ごと 毎月
2週ごと 毎月
i-PTH 毎月 3ヵ月ごと
総CO2 2週ごと 毎月


 <注>
 移植後1年以降は、腎機能の程度に応じて、ガイドライン1に従って測定されるべきである。
A 腎移植後最初の1週間は、P値を毎日測定すべきである。 
P低値(2.5mg/dl以下)が持続する場合にはP補給を行う。
B 骨量減少及び骨壊死を最小限にするために、免疫抑制レジメンは糖質コルチコイドの有効な最小用量に調整すべきである。
C 骨粗鬆症の有無や進行を確認するために、DEXAによってBMDを測定すべきである。
D 移植後の骨及びミネラル代謝障害の治療は、ガイドライン1から15に示すように、腎機能の程度によって決定する。

<注>ここで取り上げた薬剤の効能・効果及び用法・用量は、日本国内で承認されている内容と異なる場合があり、また日本国内で承認されていない薬剤が取り上げられている場合があります。