私の透析日の一日について、自宅を出るところから自宅に戻るまでをできるだけ具体的に時間を追って紹介しますので、貴方が人工透析患者であれば、比較してみて下さい。

◆AM8:00前
 地元介護業者の車で自宅を出発
(私は別に障害があるので車椅子送迎)
・ 私担当のヘルパー(私と同様男性)さんはとても話題豊富な人なので、行き帰りの車中ではわずかな時間ですが四方山話に花が咲きます。

◆AM8:00過ぎ
 地元腎クリニックに到着
・ 入り口にそれぞれ専用の下駄箱が用意されており、ここでスリッパ(自分専用を用意)に履き替えます。
・ ロッカールームにそれぞれ専用のロッカーが備え付けられており、ここでパジャマに着替えます。(パジャマは毎回洗濯した新しいものを着用します。)
・ 透析室へは必ずシーツの上に敷くバスタオル1枚と普通のタオル2枚(枕カバー用と緊急時用)を持ち込みます。これらのタオルは1週間(月水金の3日間)使用して、金曜日に持ち帰り月曜日に新しいものを持ってきます。尚、その他透析室に持ち込むものは、(身体障害者手帳・国民健康保険証・特定疾病療養受領証・介護保険被保険者証・マル都医療券・テレビ<各ベッド毎に1台備え付け>用のイヤホーン・財布・止血バンド2本・ハンカチ・ティッシュペーパー・透析セルフケアノート・メモ帳・ボールペン・ソニー製「ウォークマン」・携帯電話・災害用携帯ラジオ<予備単4電池2本>・非常時血液回路切断用ハサミ・災害用カリウム吸着剤<カリメート>3日分・災害用リン吸着剤<ホスレノール>3日分・災害用糖尿病経口剤3日分等)が入った手頃なバッグです。

◆AM8:40〜9:00
 順番を待って「穿刺」して透析開始(透析では血管に針を刺すことを「穿刺」と言います。)
・ 穿刺、透析の前に次の準備を行ないます。
@ 体重を測定してその日の目標除水量とこれをベースに1時間あたりの除水量を設定してコンソール(透析装置)に入力します。
実際のその日の目標除水量は次の通りとなります。
(目標除水量)=(<透析前実測体重>−<ドライウエイト(DW)>)+(透析中の飲食分)+(血液回路内透析液充填分300ml)
A 体温と血圧と脈拍を測定します。また、看護師さんから問診によりその日の全身状態が把握されます。
(尚、私は自宅でも毎食前3回いわゆる家庭血圧<脈拍も>を測定しています。―いつも血圧は低目ですー)
・いよいよ穿刺ですが、穿刺針は通常16〜17G(私のはA側・V側ともクランプ針15G)の太さのものを使いますが、普通の注射針に比べ相当太いので、やはり刺すときにはかなりの痛みを感じます。
穿刺は、緊急時に備え普通返血血管(「V」という)の方から先に行い、その後に脱血血管(「A」という)に穿刺して透析開始です。
 尚、私の場合穿刺前や返血後のA・V2箇所の皮膚消毒には「イワコールGL液0.2%」を使用していましたが、平成21年10月より、「マスキンWエタノール液 0.5%」を使用しています。(現在は「ステリクロンBエタノール液0.5%10mL」を使用)消毒薬によっては体質的にその人に合わないなどの場合がありますので、この他に「ネオヨジン液(『イソジン液』と同じ『ポビドンヨード』)」「イソジン液」や「ヒビディール液」「ヒビテン液」「ハイポエタノール」等というのもあります。

・ その前に採血して血糖値を測定します。(糖尿病の持病があるため)
朝食後2時間位経過しているのですが、血糖値は糖尿病患者の食後2時間経過目標上限値の「200」を超えることはほとんどありません。)

◆AM8:40〜9:00→PM2:00〜2:20
  透析実施(透析時間5時間)
・透析開始の液温(≒血液温度)は、当初自動的に36.0℃に設定されていますが、私の場合は最初37.0℃に設定し、透析中に血圧低下が予想されたり、寒気等がある場合は、37.0℃〜35.0℃の範囲の中で、適宜調整してもらっています。
・ 透析患者共通に透析開始最初は血流速度(100〜120ml/分)をゆっくりさせて安全を確認してから、ダイアライザーをひっくり返して血流速度を患者ごとに決められた速度に上げます。
・透析に伴う血圧・脈拍測定(いわゆる基本的な「バイタルチェック」)は原則として、透析直前1回、透析中1時間経過毎に1回、透析終了直後に1回と合計6回測定しますが、私のように透析中の血圧低下(特に透析後半)が顕著な場合はかなり頻繁に測定します。(タイマーをかけて15〜20分おき)
この透析中の血圧低下を「透析時低血圧症」と言いますが、自律神経障害や動脈硬化により抹消血管がうまく閉まらない人(私はこれにあてはまるかも)、この反応の許容範囲を超えて除水が必要な人、また心臓の機能が低下した人に起こります。

 ここでよく行なう私の透析中の血圧低下対策を列挙してみますと次の通りです。
@ 血圧上昇剤服用
 透析前の血圧が低かったり、透析中の血圧低下が予想されるときは、 あらかじめ末梢血管を緊張・収縮させて血圧を上げる飲み薬(「メトリジン」透析開始前後1〜2錠)を服用します。この他、「リズミック」「ドプス」「カフェイン」等の薬もありま す。(昇圧剤の詳細は「人工透析Q&A」コーナーのQ68.A参照)
A 下肢上げ
 ベッドの足の方を心臓よりも高くして物理的に血圧が高くなるようにします
B 液温下げ
 液温が低いほど血圧低下になりにくいので、液温を最低35.0℃まで下げることをしますが、低温透析は、下肢痙攣を引き起こす・透析効率の悪化・血液凝固・残血等の懸念がありますので、注意が必要です。
C ジュップロ投入
 10%濃度の食塩水を「ジュップロ」と言いますが、これをそのときの状況に応じて20cc〜80cc位を血液回路から血液中にワンショットないし持続的に直接投入します。血管の浸透圧の関係で血圧が上昇します。
 但し、このジュップロは、透析終了の30分前からは投入しません。
 30分前を過ぎても投入し続けると、塩分が透析で抜けきらず透析後のどが渇くようになってしまうからです。
D ブドウ糖投入
 透析中に低血糖になっても血圧低下の要因になりますので、糖尿病の治療薬等で低血糖(透析中に血糖値測定の結果)になった場合は血液回路から血液中に直接50%濃度のブドウ糖(ワンショット=20cc)を投入することがあります。それから、透析終了までの透析の最後の1時間に、ダイアライザーの静脈側から50%ブドウ糖溶液100mlを輸液ポンプにより均一の速度で持続注入すると、透析中の血圧低下を防ぐことができるとの報告もあります。(原疾患糖尿病でもOK)
E その日の除水量が多いと血圧低下が起こりやすくなりますので、体重増加が顕著な場合は日常の水分(飲水)管理を徹底します。
 尚、上記@〜Dの血圧低下対策は必ずしもこの順番通りとは限りませんし、すべて行なうわけではありません。その人の状態やそのときの状況に応じて臨機応変に対応します。また、その他の方法として、除水量を下げるとか、除水一時中止とか、生食を100mlとか使って水を身体に戻すとか(補液)、これらの方法でもだめなら血液回路から血液中に血圧上昇剤「エチレフリン(エホチール)」「ドパミン(イノバン・カタボン)」等を直接投入することもあります。
(血圧低下が透析のたびに現れ顕著な場合はドライウエイトが適正<低すぎ>でないこともありますので、主治医の先生に確認する必要があります。)
・ 透析中の血圧低下(特に透析後半及び透析終了後)は、いわば人工透析に伴う合併症の一つと言えます が、その他人工透析に伴う透析中の合併症としては主に次のような症状があります。(私も時々なります。)
@ 不均衡症候群(特に透析導入期)
 透析により、血液中の電解質、尿素は急激に除去され、浸透圧が低下します。反対に脳組織での除去は血液―脳関門があるために遅れ、浸透圧の不均衡が生じ、一過性の脳浮腫、脳圧が亢進した状態になります。ほぼ同様の理由で眼圧も亢進します。脳圧・眼圧が上昇してくると、主に悪心・吐き気・嘔吐・頭痛(前額部含む)・イライラ感(下肢に限局した「イライラ」症状は特にレストレス・レッグ症候群もしくは下肢静止不能症候群と呼ばれます。)・緑内障発作等が症状として出てきます。
 高度になると、筋肉のつれ(痙攣)、意識障害等が起こります。
 対策としては、そのときの状況に応じ基本的には低血圧対策と同様の対策を講じます。
A穿刺痛・血管痛
  これらは、穿刺の場所や使用血管の状態により起きますが、血管痛は透析中の血圧低下によっても起きます。また、何かの拍子に静脈圧計(モニター表示)が急激に上がった場合にも起こることがあります。
穿刺痛がひどい場合は、事前に貼付用局所麻酔剤「ペンレス」やスプレー表面麻酔剤「リドカイン」等を使用します。私は「キシロカインポンプスプレー8%<一般名「リドカイン」>」を使用していましたが、今は何もしていません。
血管痛がひどい場合は、温湿布をしてもらうときがあります。
(冷湿布の場合もあります。)―少し痛みが引きます。―
また、透析中にシャントのある方の手の指先が血流が悪くなるため冷たくなったり、痛みがあったり、しびれたりすることがよくありますが、この場合は肘に枕をあてがってもらったり、手を握ったり開いたり、手首を内側に曲げたり、さらには使い捨てカイロを握って暖めたり(これは効果あり)、いろんなことをしています。
・ 透析中主治医の先生の回診が必ず1度あります。
 私は、何か体調面で不具合があったり、血液検査結果等透析に関して解からないことや疑問点が少しでもあれば、毎回積極的に先生に質問したり確認したりして納得のいく医療が受けられるようにしています。
・透析中にお昼12時を迎えますが、私の場合透析中の血圧低下があるので、従来はあらかじめ外部業者に予約注文してある透析弁当を透析終了後にわが腎クリニック休憩室にて食べていましたが、透析方法のHDF変更に伴い透析中の血圧低下もHDF施行前より改善されてきたことと1日の血糖コントロールの観点から、基本的に、平成17年1月24日から透析中のAM10:30〜11:30に食べるようにいたしました。その時の状況・状態により、透析中の昼食を一定期間摂らない場合があります。(一般的に食事をすると血圧は下がる傾向にあります。)
・透析中に看護師さんか臨床工学技士さんが基本的に開始時とあとは1時間おきにコンソール(透析監視装置)のモニター画面等を見て、コンソール運転状態等に問題ないかどうかチェックして、必要項目についてはその日の患者ごとの「血液浄化記録」に書き込みます。(血流速度・透析液速度・静脈圧・透析液圧・除水速度・積算除水量・透析液温度・穿刺部位の出血の有無・針とテープ固定の確認・血液回路の接続部や固定状態の確認・へパリン等抗凝固剤の投入状況・ピローのふくらみ具合等)私達透析患者も、できうる限り、自己管理の一環や透析事故を未然に防ぐため、以上の点については日頃自らもチェックするようにしましょう。
・ 透析中に身体に何か不具合が生じたら、主治医の先生や看護師さんにどんな小さなことでも遠慮せずに言いましょう!
・ 透析中の過ごし方はテレビだけでは退屈しますので、他のこともやっていますが、具体的には「私の趣味」のコーナーで詳しく紹介します。

◆PM2:00〜2:20
透析終了
・ 透析が終了するとベッド毎に異なるメロディー(私の場合「喜びの歌」)が流れ、コンソールのてっぺんのランプが点滅します。尚、患者の中にはその日の体重増加が多いため更に時間を延長して除水だけ行なう人もいますが、この場合は青いランプが点灯します。
 (私達はこの居残り除水時間を「お残り」とか「残業」と呼んでいます。)
 このように、限外濾過の原理を応用し、ダイアライザーに透析液を流さず、圧力のみ(陰圧のみ)で血液中の水分や電解質を取り除くことを「イーカム(ECUM)」と言います。血圧が下がりにくいので、急速に水分を除水するときに行ないます。但し、老廃物は取り除くことができません。
・ 看護師さんか技師さんが少し時間をかけてダイアライザーの中の血液を返血血管を通じ身体に戻してくれます。そのときにスムースに血液が身体に戻るように生食300mlを使います。
返血の前に、貧血剤と必要に応じ鉄剤等を投与します。(具体的には「私の使用薬剤」参照)
<貧血については「人工透析と合併症」のコーナーで詳細説明>
尚、ダイアライザーや血液回路に残血があると、身体にどこか炎症を起こしているか、抗凝固剤(ヘパリン等)が薄すぎる・ダイアライザーに生体適合性がないなどが考えられます。
・ 最後に穿刺針で刺したところ2箇所の止血を看護師さんにやってもらいますが、私の場合は脱血血管、返血血管の順にそれぞれ「ステプティー(止血用パッド)」を貼ってもらい、その上からそれぞれ「ハイゼガーゼ」を使って押さえながらほとんど同時に抜針して自分で「用手止血」をします。
止血時間(10分タイマー)を待って止血を確認してから、「ハイゼガーゼ」を外してその上から止血バンドを軽くします。 それから、看護師さんにシャント音を聴診器で確認、左腕にて血圧・脈拍を測定してもらいます。尚、「ステプティー(止血用パッド)」は、翌朝はがします。
(今のところ右腕肘部再作製シャントに特に問題は起きていません。)
 尚、基本的に止血は、自己止血を含めいわゆる「用手止血」を行うべきで特にブラッドアクセス作製間もない患者やブラッドアクセス不良の患者には 確実に「用手止血」を行うことが必要です。しかしながら、現実的にはすべての患者が「用手止血」行うことは難しく、上記のように止血バンド等の止血用具を使用することもやむをえません。止血バンドの場合、簡便に止血を行えますが、全体的に圧迫となるため血流を阻害するという短所があります。
 従って、穿刺部を中心に適切な強さで圧迫し、止血後は速やかにはずすことが大切です。
 また、止血用の「カットバン」は、遅くても透析日の翌日の朝には剥がすようにしたいものです。血液か付着して湿度を帯びた絆創膏は、細菌の繁殖に最適の環境だからです。絆創膏をなるべく早く剥がし乾燥させることが感染予防において重要なことなのです。
・ 帰る前に体重測定を行ないます。(透析後体重)
 このときの体重がドライウエイトと同じならば除水が計算通りということになります。しかし、透析中に血圧低下のため、ジュップロや生食を予定以上に使ったりすると、100gとかドライウエイトを超える場合があります。これを「100残り」などと言ったりします。
 その日の体重増加が多すぎて決められた透析時間を超えて居残り除水を行なってもなお除水しきれない場合等は意識的に残さざるを得ないときもあります。
(この場合、次回透析で除水することになりますので、その分次回透析までの厳しい水分管理が要求されます。)
 また、機械の誤差等により100gとかドライウエイトを下回る場合もあります。これを「100引け」などと言ったりします。

PM2:00頃〜2:20頃
 地元介護業者の車で地元腎クリニックを出発
 (自宅出発時と同様のヘルパーさんが迎えに来てくれています。)

PM2:20頃〜2:40頃
 自宅に帰着
・ 帰着後すぐ入念に「うがい」と「手洗い」を励行します。
平成17年11月の報道で、「うがい」はうがい薬を使用するより「ただの水」の方が効果があるとされていましたので(うがい薬を使うと善玉菌も殺してしまうから)、それ以降は「水」でするようにしています。


 以上が自宅を出るところから自宅に戻るまでの「私の透析日の一日」ですが、自覚症状はあまりないにせよ、何はともあれ透析中の血圧低下を何とかしてらいたいといつも思っています。
 透析患者の貴方は透析中の血圧低下はありませんか。貴方の場合の低血圧対策を教えて下さい。

尚、
(1)透析中の血圧低下対策として、その後上記以外の方法として、@「段階除水(除水量が多いとき)」A「グリセオール注200〜500ml」B「高ナトリウム液透析(処方透析)」C「カフェイン100〜300mg摂取(透析後半)」D「AFB(無酢酸透析)=血圧低下だけでなく、アシドーシスの是正に伴う栄養状態改善効果あり(血清アルブミン濃度上昇)= 」E「HES100ml投入」等があることがわかり、いくつもまだ選択肢があるということで心強く思っています。しかしながら、このうち「グリセオール注200ml」を透析中持続投入したことがありましたが、どういうわけか透析開始後1時間後あたりから「蕁麻疹」が顕著に出現してきてしまい、透析中の血圧低下は防げたものの一度限りで止めてしまいました。いずれにしても、その他の方法も今後の透析中の血圧低下の状況をみて、試みてみたいと考えています。
(2)上記にもあるように、日常看護師さんや技師さんから、「マニュアル」に基き私達透析患者に対して日常の透析治療を施してもらっているわけですが、最近においても透析医療事故は、なお高頻度に発生がみられるというのが実態です。
 もちろん、私がわが腎クリニックの透析スタッフを信頼・信用していないわけではありませんが、今後の透析医療事故の撲滅を図るため、私達透析患者も両識(意識と知識)を持っておく必要があると思います。
 その意味で、日本透析医会の「透析医療事故防止のための標準的透析マニュアル」がネット上に掲載(PDFファイル)されておりますので、次の通り日本透析医会HPのアドレスを記載しておきます。(「透析医療における標準的な透析操作と院内感染予防に関するマニュアル」もあります。)

     http://www.touseki-ikai.or.jp/

 一度、一通り目を通してみては如何でしょうか。
 この透析マニュアルの中で、私が最も気になるのは「返血法」です。
 返血法には、「生食置換返血法」と「エアー置換返血法」の二つに大別され、さらにそれぞれ「血液ポンプを使用する方法」と「自然落差を利用する方法」があります。安全性の観点から、「生食置換返血法」を用い、「エアー置換返血法」は行なってはならないとされています。
 因みに、わが腎クリニックは、「生食置換返血法」と「血液ポンプを使用する方法」の組み合わせで行なっています。これが、一番良いと思いますが、皆さん方の透析施設ではどの返血法が行なわれていますか。