腎臓がいよいよ悪くなり、私のように「慢性腎不全」(適切な治療によって腎機能が大部分回復する「急性腎不全」とは区別される)が悪化すると、腎臓そのものがほとんど機能しなくなり、生命を維持していくために最終的に人工透析か腎臓移植を選択するしか道はありません。
 このうち、腎臓移植については、生体腎移植にしても死体腎移植にしても医療技術の進歩はともかくまだまだ社会的な腎移植環境が整っていないので、ほとんど人工透析を選択するのが現状です。

 人工透析と一言で言っても、大きく分けて人工透析には、
@ ダイアライザー(透析器)を使用した血液透析(「HD」)
A ダイアライザーの代わりに自己の腹膜を利用する腹膜透析(「PD」)
の2種類があります。

 「腹膜透析」は、お腹の中の内臓の表面を覆っている腹膜を利用して行う透析方法です。(詳細説明割愛)
<参考までに、「日本透析医学会」による「2009年版 腹膜透析ガイドライン(クリック)」を紹介しておきます。>
 わが国の「腹膜透析治療」は、いわゆる「EPS(被嚢性腹膜硬化症)」ショック後、腎不全治療における位置づけが徐々に低下、腹膜透析患者総数としてもこのところ減少傾向にあり、全体の人工透析患者数に占める腹膜透析患者数の割合は、1995年の5.4%をピークに年を逐うごとに下がってきており、大部分の人はダイアライザー(透析器)を使用した血液透析を選択しています。
血液透析や腹膜透析以外に、透析中の血圧低下や血圧不安定な患者(透析困難症)等に有効な「血液透析濾過法(HDF)」や「血液濾過法(HF)」等があります。
私の場合は血液透析・「血液透析濾過法(HDF)=オフライン=」を経て、現在は「血液透析濾過法(HDF)=オンライン=」を施行しています。


 この人工透析については、私達人工透析患者がこれまで主治医の先生方から説明されてきたことのおさらいの意味も含め、なるべく分かりやすく説明しておきます。
 まず、人工透析の説明に入る前に本来の腎臓の働きについて確認しておきましょう。
 人間の腎臓は、次の8つの働きがあります。

@ 体の中で不要になった老廃物(クレアチニン・尿素・尿酸等)を尿として排泄
A 水分調整(余分な水分を尿として排泄)
B 電解質(ナトリウム・カリウム・カルシウム・リン等)バランスの調整
C 血液の弱アルカリ性(Ph7.4)維持
D 造血刺激ホルモンの分泌
E ビタミンDを活性型ビタミンDにして血液中のカルシウム吸収補助
F 血圧調整
G 不要ホルモンの不活化

 このように、腎臓は単に老廃物の排泄や水分調節だけでなく他にいろいろ働きがあるんです。
 様々な理由によって、腎臓が上記の腎臓本来の機能を果たせなくなった病態を「慢性腎不全」と言い、私の場合は近年急激に増加している「糖尿病」の合併症である「糖尿病性腎症」を発症し、その後「慢性腎不全」に移行、ついに「糖尿病性腎症」発症から約4年3ヶ月で人工透析導入ということになったわけです。
 私の人工透析導入時の状況は、「慢性腎不全」に伴ういわゆる「尿毒症」の典型的な症状(「貧血」「全身倦怠」「寒気」「食欲不振」「不眠」「吐き気」「下半身のむくみ」「足・腕・背中のかゆみ」「肌荒れ」「乏尿」等)が顕著になり、正直なところ早く人工透析をやってもらいたいなどと思ったりいたしました。
 このときは、私の腎臓が一般的に人工透析導入の目安である正常の腎機能の10%以下(クレアチニン数値が8以上)になっていたと思われます。
 適正な人工透析導入基準は添付資料(クリック)の通りですが、臨床症状・腎機能・日常生活障害程度による評点法の導入基準に照らしても、私の場合人工透析導入はいたしかたなかったのです。尚、人工透析になってしまった後の腎臓の行く末ですが、ほとんどの腎不全は何らかの炎症による間質の繊維化が原因ですので、そのため炎症を起こした腎間質の細胞が繊維芽細胞に置き換わることにより、固く小さく縮みます。これを「腎萎縮」と言います。この萎縮に伴い、腎臓の血流は低下します。そしてしばらくすると萎縮腎に「のう胞」ができてきます。これを「後天性腎のう胞(ACDK)」と言います。この「腎のう胞」は特に悪さはしません。のう胞ができる詳しい理由は分かっていませんが、おそらく残っていた糸球体で作られたわずかな尿が長い間に腎臓の中に溜まって風船のようになってできているものと言われています。
 尚、平成25年12月に、日本透析医学会より、「維持血液透析ガイドライン:血液透析導入(クリック)」が公表されましたが、さらに今後、本ガイドラインをより包括的、エビデンスに基づいたものにするためには、「簡易的で正確な末期腎不全期のGFR(糸球体濾過量)を測定する方法の開発」をはじめとする多くの課題の研究が望まれています。
 それでは、腎臓の代わりをしてくれる人工透析の具体的な内容を説明しましょう。

【1】人工透析装置について

 人工透析を行うには、透析患者毎に設置されているコンピューター制御の「コンソール」(下写真)と呼ばれる透析装置が必要です。

 この透析装置は、血液を体外に導き出し、その心臓部と言うべきプラスチック円筒状のダイアライザー(透析器)の中に血液を血液ポンプで一定の速度を保って送り、血液中の老廃物(尿毒素)の排泄、血液中のナトリウム・カルシウム・カリウムといった電解質と酸性・アルカリ性のバランス維持、そして余分な水分の除去を行います。
尚、私の使用している「コンソール」は、日機装(株)製の「DCG−03」というオンラインHDF認可機種の多人数用の透析用監視装置です。


(1)ダイアライザー(右写真下)の機能

 ダイアライザーは、その中に中空糸状の半透膜(内径175〜280ミクロン、膜厚7〜50ミクロン)を数千〜1万数千本束ねられた円筒形(長さ15〜30cm、内径2〜5cm)のプラスティック容器です。
  このダイアライザーの中空糸の中を血液が通り各一本一本の半透膜の廻りを透析液(<注>後記の透析液の解説参照)が対方向に流れるような仕組みになっています。
 この半透膜とは無数の孔(あな)<「ポア」と言います。>があいた薄い膜です。この半透膜の孔を通っていろいろな物質が出入りします。つまり、半透膜の廻りに透析液が流れると、これらの物質は、すべて半透膜を通って透析液の各物質の濃度と等しくなるように移動します。この現象を「拡散」と言います。
 つまり、ダイアライザー内の半透膜を通して血液中の老廃物(尿毒素)を取り除き透析液側から身体に不足している電解質が補われます。
 しかしながら、物質の大きさによって半透膜の孔を通るものと通らないものがありますので、これらの物質はよく認識しておく必要があります。
・半透膜の孔を通るもの
  尿毒素(尿素窒素、クレアチニン、尿酸)
  電解質(ナトリウム、カリウム、カルシウム、リン等)
  パイロジェン(細菌が出す毒素)
  水分
 ・半透膜の孔を通りにくいもの
  β2−マイクログロブリン等の低分子蛋白
 ・半透膜の孔を通らないもの
  赤血球、たんぱく質、白血球、ウイルス、細菌

尚、「血液透析と除去対象物質領域」の一覧表を添付(クリック)いたします。

<注>透析液の解説
 @ 透析液は、透析効果をいつも一定にするため毎分400〜500mlの流量が必要であり、そのため に大量に透析液を流す一括集中管理の「透析液供給装置」が透析施設内に必要です。
 A透析液は、原液を水道水で薄めて使用しますが、水道水に含まれる不純物を取り除くために「逆浸 透圧装置(水道水を純化し、精製水を作る<RO装置>)」が併せて設置されており、希釈された透析液が患者個々のコンソール(透析装置)へ供給されているのです。
 B透析液は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、グルコース、アルカリ剤等のような組成で構成されて おり、現在もその組成について適正な電解質濃度をどの程度にするかなど、即ち透析液についても、低血圧や一連の不均衡症候群の予防等の観点から、一層の永続的・長期的な透析維持を可能に すべくいわゆる「透析液の至適化」が様々な角度から検討されています。
 基本的にこの透析液は、施設内透析患者共通の組成(標準液)になっていますが、透析患者の状態によっては、その人にとって最適な組成の透析液をやむなく個々に使用する場合があります。
 (低カリウム血症や高カルシウム血症がある場合には透析液をその患者専用に調整することがあり ます。これを「処方透析」と言いいます。)
 本来であれば、透析患者全員がそれぞれの状態に適合した透析液を使用すべきですが、透析管理・経済性等の面からその実現はなかなか難しいようです。
尚、ここで最近特に注目しておかなければならない「透析液の清浄度ガイドライン」について、紹介しておきましょう。
◆透析液の清浄度ガイドライン
 透析膜による除去対象が尿素やクレアチニン等の小分子量物質から中分子量物質へ、さらにはアミロイドの前駆蛋白であるβ2ーマイクログロブリン(β2ーMG:分子量11,800ダルトン<D>)へと拡大し
てきた実態に合わせて、透析膜もより物質除去性能を向上させたハイフラックス膜へと移行してきた結果、「逆濾過」や「逆拡散」によって透析液側から血液側への「パイロジェン」等の発熱物質の移行が懸念されるようになってきました。通常の透析医療現場では、「パイロジェン」として、「エンドトキシン(ET)」
が測定されています。
<注>「パイロジェン」とは。
細菌(特にグラム陰性菌)の菌体成分の一部で、これが体内に侵入することで発熱が起こります。分子量は非常に大きく、「パイロジェン」そのものは透析膜を通過できません。しかし「パイロジェン」の小さなかけらの一部は、透析膜を通過する可能性があり、血液内に入れば発熱を生じます。しかし、細菌自体の侵入ではありませんので、感染症に発展することはありません。
 この「ET」の分子量は百万ダルトン以上もあるため、ハイフラックス膜といえども通常では膜を透過しえないはずですが、実際の透析液中には4,000ダルトン前後及び数万ダルトンのETフラグメントが存在し、「β2ーMG」を透過させる透析膜ならば、4,000ダルトン前後の「ET」が透析液から血液中に移行することは充分起こりうることです。
 そこで、「日本透析医学会(JSDT)」提言の「透析液水質基準2008」のポイントを次に紹介しておきましょう。本水質基準では、明確な基準がなかった細菌数についても示されています。
@透析用水
・細菌数 100CFU/mL未満
・ET  0.050EU/mL未満
A標準透析液(血液透析を行う場合の最低限の水質)
・細菌数 100CFU/mL未満
・ET  0.050EU/mL未満
B超純粋透析液
・細菌数 0.1CFU/mL未満
・ET  0.001EU/mL未満(測定感度未満)
Cオンライン補充液(オンラインHDF/HF)
・細菌数 10のマイナス6乗CFU/mL未満
・ET  0.001EU/mL未満(測定感度未満)
尚、本水質基準については、本HP左メニュー「その他インフォメーション【25】の後半も参照して下さい。 

 以上の透析液浄化の臨床効果として、@手根管症候群の発生頻度の減少Aβ2ーMG値の低下BCRP値の低下Cアルブミン値の上昇D貧血の改善E高血圧の改善F透析中の低血圧発作の改善(透析中の血圧安定)G体重の増加Hシャントトラブルの減少I動脈硬化の進展抑制等が報告されています。

(2)除水方法
 では、余分な水分の除去はどうなるのでしょうか。血液中の水分は、半透膜の両側の圧力差によって除去されます。これを「限外濾過」と言います。この限外濾過による水分除去方法には二つの方法があります。
 一つは、ダイアライザーのすぐ下あたりをクリップ等で締め、血液の方に圧力をかけて押し出すようにする方法(陽圧法)と、もう一つは、透析液の圧力を機械的に下げて透析側に水分を引っ張り出す方法(陰圧法)があります。
 昔は陽圧法がほとんどでしたが、今は陰圧法が主流を占めています。
 限外濾過では、除水のみならず除水とともにダイアライザーの透析膜の孔(あな)を通過可能な溶質がほぼもとの濃度で除去されます。
 そのため、拡散による尿毒症物質移動と異なり、中分子量等の比較的大きな分子量領域の物質についてもその除去が容易になります。
 従って、ひとくちに「透析」と言っても、実際は「拡散」と「限外濾過」を組み合わせたものと言えます。
 限外濾過における水分除去能力を限外濾過率(UFR)と呼び、透析膜の厚さと孔(あな)の大きさによって規定されます。
 この「UFR」は透析膜の種類によっても様々であり、また血中の蛋白濃度やヘマトクリットの数値によって影響を受けるため、個々の患者の状態や治療の目的に応じたダイアライザーを選択する必要があります。
【2】ブラッドアクセス(シャント)について

 血液を体外に導き出し、ダイアライザーできれいにしてから体内に戻す方法を「体外循環」と言います。
 ブラッドアクセスとは、この「体外循環」に用いるための血液を出し入れする出入り口のことです。人工透析が開始された初期には、透析毎に手術を行い、動脈・静脈を露出し、カテーテルを挿入するという現在では考えられない煩雑な方法でブラッドアクセスが確保されていました。
 その後、永続的・長期的な透析維持を可能にしたのは"内シャント"(シャントとは元来「近道」とか「わき道」の意味)と言う画期的なブラッドアクセス方法が確立されたからであり、現在ではブラッドアクセスの主流を占めています。尚、最近では、ブラッドアクセスのことをバスキュラーアクセスと言うことも多くあります。(海外ではこの方が正式)

 =シャントには「内シャント」と「外シャント」があるが、血栓形成・感染等が起やすい「外シャント」より「内シャント」が一般的で主流を占めているので、ここでは「内シャント」を単に「シャント」と定義=

(1)シャント作製の必要性
 このシャントを作る理由は次の通りです。
 透析を効率よく行うには透析中通常毎分150〜300mlの血流量を保つ必要があります。つまり、血液を 通常右腕か左腕の静脈から体外に導き出し(これを「脱血」と言います。)、右腕か左腕の静脈へ返す(これを「返血」と言います。)ために、たくさんの血液をダイアライザーに送り、そして浄化されたたくさんの血液を身体にまた戻さなければなりません。
 このため、血液流量の多い太い静脈血管をあらかじめ確保することが必要になります。
 また、シャントは血液流量の充分な確保以外に次の条件を満たしていることが必要です。

 @穿刺(センシ)しやすく透析回路との接続や取り外しが簡単である。
 A閉塞や感染等のトラブルが少ない。
 B心臓への負担が少なく、手先足先の血液の流れを悪くしない。
 C長期にわたり使用でき、日常生活(入浴・運動等)の邪魔にならない。

  (2)シャント作製手術
 そこで、手術していわゆるシャントを作るわけです。
 具体的には、通常利き腕と反対の手首、ちょうど腕時計をするあたりで、動脈と静脈をつなぎ合わせ、動脈の血流量の多さを利用して静脈の血流を増加させるとともに結果として静脈の血管が太くなるような手術を行います。(右写真)

 この手術時間は、その人の血管の状態等によって異なりますが、私の場合、多分糖尿病により血管に問題(?)があったため、最初手首のところは失敗に終わり、さらに上部の肘の表の曲がるところに手術をやり直しましたので、合計4時間という長い手術になってしまいました。
 手術してシャントを作ってから静脈への血流が充分大きくなって機能するまで普通1〜2週間位(私の場合10日)かかりますが、現在ではシャントを作り直さなければならない場合以外は入院せずに外来で手術することが可能です。
 このシャントの位置は人によってまちまちであり、中には何度もシャントを作り変える人もいます。また、シャント作製にあたって自己の抹消・表在血管が荒廃し利用できない場合は合成材料等を使った代用血管(これはテフロンやポリウレタンで作られたもので、「グラフト」と言います。)で代用することもできます。
 シャントは、あらかじめ人工透析導入を見越して作っておくこともできます。即ち、慢性腎不全が悪化して近い将来人工透析を行なう必要があると考えられる場合に、あらかじめシャント手術を施行して透析に備えるという方針がよくとられます。尿毒症の諸症状が出現してからでは、私のように透析開始後に手術を受けることになり、手術後早期に穿刺しなければならないことになります。血管があまり発達していない状態で穿刺すると、血管が細すぎたり漏れやすかったり穿刺が困難になる可能性があります。
 従って、あらかじめシャント手術を受けておくと、実際に透析になるまでの期間に血管が充分に発達することが期待できます。一般的にクレアチニンが7.0mg/dl位になった段階でシャントを作っておいて、透析開始に備えます。この時期は、年齢・原疾患・血管の状態等で多少の差があります。
 しかしながら、急に人工透析が必要になりシャントを作製する間のない場合には、シャントが使えるようになるまで一時的に、私の例のように「頚部静脈」(首すじのあたり)、あるいは 「鎖骨下静脈」(胸の辺り)か「大腿静脈」(ふとももの辺り)にカテーテルを挿入する「留置カテーテル法」と動脈に直接穿刺する「直接穿刺法」等の方法もあります。これらの方法では、2〜3週間の治療が可能です。
 尚、上肢に作製する内シャントは大きく次の4種類です。
@橈骨(とうこつ)動脈と橈側皮静脈を親指の付け根でつなぐ「タバチェール」
A橈骨動脈と橈側皮静脈を前腕の手首部分でつなぐ「前腕内シャント」
B上腕動脈が分岐する付近で動静脈をつなぐ「肘部内シャント」=私のがこれにあたります=
C上腕動脈が分岐する付近で動静脈と人工血管をつなぐ「ループグラフト」
一般に利き腕と反対の腕にシャントを作製するのが基本ですが、利き腕の方が血管が発達していることが多いため、やむなく利き腕にシャントを作製する場合もあります。(利き腕と反対の腕にと決まっているわけではありません。)内シャントのことがよく分かる「小島外科胃腸科」ホームページの該当ページ(クリック)を紹介しておきましょう。
 尚、平成19年1月、「左腕肘部内シャント」が閉塞したため、同年1月27日に東京都の大学総合病院に入院し、同年1月30日に利き腕「右腕肘部内シャント」新造設手術を受けました。(入院期間18日、病院透析合計7回<最後の1回を除き左腕動脈ダイレクト穿刺で乗り切る>)そして、手術後13日目・6回目の透析において、右腕初穿刺・透析が無事成功しました。(このときの主な透析条件は、「透析方法HD」「透析時間5時間」「ダイアライザーFPX180」「血液流量200ml/分」「穿刺針脱血側<A>返血側<V>ともクランプ針18G」)
それから参考までに、シャント再造設した大学病院から渡された「シャントを造設された患者様へ」と題したシャント造設後の注意点を添付(PDFファイル)しておきます。
尚、さらに参考までに、「日本透析医学会」による「慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作製および修復に関するガイドライン(クリック)」を紹介しておきます。

(3)シャントの合併症
 シャントというブラッドアクセスには次のような合併症の恐れがあります。これら合併症は、透析患者自身の自覚で避けることのできるものもありますので、知識として持っておく必要があります。

 @閉塞;動静脈に動脈硬化のような病変がなくても大量の除水による血圧の低下・下痢等の脱水・長時間の圧迫が原因となって閉塞します。
 A狭窄;動脈の高い圧力の血液が静脈に流れ込むことにより、静脈内側の膜が傷つき厚みが増して内腔が細くなります。狭窄距離が短ければ風船つきの管(PTAカテーテル)で治すことも可能です。
 Bシャント瘤;動脈の高い圧力の血液が静脈に流れ込むことにより、静脈の内側の膜が傷つき、静脈の壁が薄くなり瘤を形成します。また同じ場所の度重なる穿刺で血管の壁が壊れ瘤が形成されます。
  急速に大きくなった場合・青紫色に変色した場合・あるいは感染した場合は止血が困難となり破裂することがあります。
 神経を圧迫してしびれ感が出てくるときや破裂しそうなときは手術をして取り除きます。
 Cスチール症候群;シャント血流が多くなると、指先に血液が流れず、冷たく・白くなり、痛みを感じます。透析時や夜間に強くなります。進行した場合指先が腐ってくることがあります。
 動脈硬化が強い場合や手術時の動静脈の吻合径が大きい場合にも起こります。
 D静脈高血圧;返血側に圧がかかり、指先に腫れ・痛み・熱感を自覚します。進行した場合指先が腐ってくることがあります。同じ場所の穿刺により起きることが多いようです。
 E感染;透析終了後に穿刺部に痛み・赤み・腫れ・膿があることで気付きます。進行すると全身感染を起こすことがあります。
 多くの場合、同じ部位の穿刺・穿刺時の不潔操作(消毒不足)・抜針後の不潔操作・止血が不充分な場合に起こります。

(4)シャントの維持管理
 シャントはできる限り長持ちさせるため、シャント部は、清潔に保ち、透析日の入浴は避けるなど感染を引き起こさないように気を付けることが必要です。
 普段の生活で注意しなければならないことは、強く血管を圧迫しないことです。例を挙げると、シャント側の腕を手枕にするとか、ハンドバッグ等の重いものを乗せたり抱えたりすることは避けなければなりません。また、シャント側に腕時計をはめたり、手首の部分にゴムの入ったデザインの衣服は着用しないことです。しかし、ものを抱えないで、手に提げることは全く差し支えありません。
 スポーツ(野球、サッカー、テニス等)は、シャントには全く問題なく、むしろ血管を発達させるのでお勧めです。
 それから、私達透析患者サイドだけではどうにもなりませんが、実は穿刺部位を透析のたびに少しずつ(毎回5mm)ずらしてもらうことがシャントを長持ちさせる最大のポイントです。
 余談ですが、このシャントは手で触ると脈拍とは比べものにならないほどザワザワという振動(スリル)や拍動があるので、シャントを「第2の心臓」などと言う人もいます。
 1日1〜2回はシャントを自分で確かめる習慣をつけましょう。

◆尚、特に透析前の「保存期腎不全」の方々が参考とすべき日本腎臓学会編の「エビデンスに基づくCKD診療ガイド2013」という書籍(東京医学社発行、税込み2,940円)を是非お買い求めになって、熟読されてください。
また、Web上の日本腎臓学会編の「エビデンスに基づくCKD診療ガイド2013(クリック)」も紹介しておきましょう。