1995年の阪神・淡路大震災、2004年の新潟県中越地震・スマトラ沖地震、2005年の福岡西方沖地震、2007年の能登半島地震、2011年の東日本大震災、最近では2016年4月の平成28年熊本地震の例を挙げるまでもなく、地震等の災害は、突然ふりかかってくるものです。時と場所を選びません。

 実際に透析に何らかの支障が生じるような大災害が起きた時にあわてないために、どう行動すればよいのか「全腎協」の資料を基本にまとめてみました。

 具体的行動の順序に沿って説明します。
【1】 まず、自分が普段通っている透析施設に電話連絡をとります。
  (この場合、一般家庭の据え置き電話や携帯電話よりも公衆電話を使った方が通じやすい。)

【2】 電話がつながったら、施設の透析スタッフから具体的指示を受けます。

【3】 電話がつながらなかったら、直接施設へ行くことも必要です。
  (この場合、交通事情や道路の安全確認についてなど、情報収集を充分に行なうことが必須です。)

【4】透析施設までたどりつけてもそこで透析が受けられなかった場合(施設が災害のため透析を行なえない・緊急の患者を多数受け入れて通常通っている患者の透析をすべて行なうことができない・施設まで遠すぎて行くのは辛いなど)は、自分の力で別の透析施設を探し出さなければなりません。

【5】そのためには、大災害が起きた時にあわてないように、普段から自分の家の近隣の透析施設や、親族や知人のそばの透析施設の連絡先を調べて覚えておく必要があります。

【6】透析施設を探すのは電話帳からでもOKですが、保健所や各都道府県の腎協に問い合わせても、それぞれの都道府県の透析施設の情報を得ることができます。尚、日本透析医会は、過去の大地震の経験を教訓として支援の広域化を目指し「災害情報ネットワーク(クリック)」の整備を行い、支援の中核を担えるようになっています。

【7】何とか透析を引き受けてくれる病院を探しあてたが、その病院まで行く手段がない場合(車を持っていないとか・電車やバスも動いていな いとか)は、迷わず119番や110番に通報して、透析患者であることを説明して、救急車やパトカーやヘリコプターなどの出動を要請しましょう。(尚、一人で病院を探した場合は心配するので普段通っている病院・施設に必ず連絡しましょう。)

【8】いつもの病院・施設以外で透析を受ける場合、普段使用しているダイアライザーの種類や血流量、定期的な透析検査データ等はきちんと把握しておくと、緊急受け入れ先の透析スタッフはとても助かるそうです。とは言っても、災害時ですから、基本データが全く分らなくても透析を行なってくれます。
 いずれにしても、「緊急時透析患者手帳」や「携帯用透析患者カード」等をもらっている人は肌身離さず携帯し、定期的に新しいデータに書き換えることが大切です。
 私の通っている腎クリニックでは、平成15年3月に名刺の大きさの「腎カードカルテ」(詳細は「その他インフォメーション」【2】参照)が配布されました。そして、平成19年2月23日より、「腎カードカルテ」に替わり、インターネット経由で最新の透析情報がいつでも・どこでも24時間365日確認できる「腎Webカルテ」サービスがスタートしました。それぞれの患者に与えられた「ID番号」と「パスワード」を使用し、緊急時の際でもパソコンがあれば対応可能です。

【9】どこの病院・施設で透析を受けるにしても、透析の間隔が空いてしまうことも考えておかなければなりません。
 阪神・淡路大震災の時は、中4日以上空いてようやく透析を受けられた人が全体の1割にも達しました。大災害が発生したら、透析を1週間近く受けられない最悪の可能性も想定しておかなければなりません。即ち、透析を受けられない間、食事管理を普段より厳しく気をつけることが極めて重要です。
 食事管理等特に気をつけなければならないことを列挙すれば次の通りです。
 @高カリウム血症
 カリウムの高い食品を控えようとするのは誰でも実行することですが、それに伴ってついつい食事全体の量も少なくなったりします。カロリーが不足すると、身体が自分の組織を分解してエネルギーを作り出そうとします。その時に組織の中のカリウムも一緒に血液に流れ出てしまいます。従って、カリウムの多い食べ物を控えるだけでなく、カロリーを十分に摂ることも大事です。
 A水分摂取
 カリウムだけではなく水分も、透析を受けられない期間に応じて、通常の半分から3分の2に制限することが当然必要になります。
 B使用薬剤
 カリウム・リン吸着剤、降圧剤、糖尿病薬(インスリン・服用薬)等それぞれ日頃使っている薬も3〜4日分以上は余計に常備しておく必要があります。
 平成16年5月17日に、「災害時における非常用カリメート」として、私のように普段処方されていない患者も含めて処方されましたので、その添付文書を参考までに原文そのまま紹介しておきましょう。
 『阪神大震災のような非常事態が生じた場合には、ライフラインの分断等により、透析が受けられない事態も考えられます。その時に最も問題となるのは高カリウム血症です。カリウムが7.5mEq/lを超えると心臓が止まります。非常用として14包処方いたします。災害時にすぐ持って出られる場所に保管するとか、常に10包程度身につけておくとかして患者さん各自で工夫して災害に備えて下さい。室温で数年間は保存可能です。非常時にはできたら食直後に食物が手に入らない場合でも1日3包程度1〜3回に分けて、災害の起こった日から服用して下さい。もし口の周りが痺れる、手足に力が入らずにガクガクするなどの症状が現れた場合はすぐに透析しなければ心臓が止まる状態ですので、6包程服用してできるだけ早く透析可能な施設に向かって下さい。』
 その後、平成27年10月14日にも、災害時用に「カリメート経口液20% 25g(詳細クリック)」が7日分(21包<1日3回毎食後1包服用>)処方されました。

 尚、災害が起きた時の摂取・制限栄養量を整理すれば次表の通りです。

             ★災害が起きた時の栄養量
                       <1日あたり>

(「防災の手引き(透析患者のための)」;全腎協・東海ブロック災害対策研究会編、2000年)


<ポイント>
透析が受けられない時、たんぱく質は通常の1/2、カリウムは通常の1/4に制限されています。

尚、参考までに「ご存知ですか、災害時の食事管理」と題した「全腎協」の機関誌「ぜんじんきょうNO.279」の(記事2Pクリック)を引用・紹介させていただきます。

◆次に、透析中の緊急事態における対処方法について、私の通っている腎クリニックの対策・指導(年に2回防災訓練あり)を紹介しておきましょう。

★地震・火災等によって透析中に緊急避難の必要が生じた場合
 
【1】 まず、落ち着いて行動することが大切です。
【2】 血液回路内の血液を回収する時間的余裕のない場合
 @ コンソールの血液ポンプの電源をOFFにする。
 A コンソールの患者側にクリアケースに収めて設置されている「セイフティカット(腎不全患者の透析
 回路からの緊急離脱器具)」=図入り説明書添付PDFファイルクリック=」を動脈回路と静脈回路を
 切断するために二つ使用します。
 =大きな洗濯バサミみたいなもので、透析機械側と患者側にクリップが二つついています。=
 B 本品に対する装着方向は、動脈回路と静脈回路とも本品の開いている方向(患者側クリップ)を
 留置針側にする。
 C 動脈回路・静脈回路切断時は、本品を手のひらに包み込むようにして力強く、迅速に握って切断
 する。
 (2回連続して「カチッ」「カチッ」と切断音がします。)
 D 動脈回路・静脈回路を切断した際、本品のロックを確実にかかっていることを確認する。ロックが
 外れている場合は、ロックを確実に掛ける操作を行った後に避難する。
 E 動脈回路・静脈回路の患者側クリップが外れないように、切断後のクリップを手で保持して避難
 する。
尚、以上のように血液回路内の血液を回収する時間的余裕のない場合には、血液回路をつけたまま回路を切断することが推奨されてきましたが、しかし最近では、穿刺針を抜いて、圧迫止血用のバンドを巻きつけて脱出する方がよいという意見が多くなりました。
 @ポンプを停止してスタート
 AA・V両側をクランプ
 Bテープを剥がす
 C腕の下に止血バンドを敷く
 DA側を抜針して止血バンドを巻く
 DV側を抜針して止血バンドを巻く
 E終了
皆さんの施設では、日頃どのように指導・説明されていますか。わが腎クリニックでは、それまで前者の方法でしたが、平成19年1月15日より、添付PDFファイル(クリック)の通りに変更されました。(コンソールの患者側の側面に「プラスチックペアン」2本、「金属ペアン」2本、回路切断用「ハサミ」1個がぶら下がっています。)
その後、平成21年10月より、わが腎クリニックでも上記後半の@〜Eの穿刺針を抜いて、圧迫止血用のバンドを巻きつけて脱出する方法に切り替わりました。
現在は、透析中に「地震だ!と思ったら・・・」
・穿刺針が抜けないように血液回路をしっかり握り、ベッドの柵につかまって、振り落とされないようにしましょう。
・布団や毛布をかぶって蛍光灯などの落下物を防ぎましょう。
と、わが腎クリニックでは指導されており、建物倒壊や火災の心配がなければ基本的に緊急離脱せはず、停電含めその必要があった場合、スタッフが情報収集し、医師の判断により緊急離脱を行い、透析をしている回路から離していくことになっており、「決して自分の判断で針を抜かないでください!」と、厳しく言われています。

【3】 スタッフの誘導に従ってあらかじめ決められている避難場所に避難します。但し、気分の悪い人や血圧低下が心配な人は無理せずスタッフに申し出るように指示されています。
 尚、上記の措置は基本的に透析スタッフが施行することになっていますが、1年に2回の防災訓練では、上記の行動が一人一人自分でできるよう確認・指導されます。

★停電等によって透析を中断せざるを得なくなった場合

【1】 自分が今使用している透析装置は、停電の時、血液ポンプ、注入ポンプを電池で運転することができます。

【2】 従って停電の時、自動的に電池運転に切り替わります。

【3】 満充電状態での運転可能時間は約40分です。

【4】 通電が期待できない場合、医師の指示により透析を中止しスタッフが返血にあたります。回収の順番が前後するが、イライラしたり、あわてたりすると気分が悪くなったり、あるいは他の事故を併発したりして、透析室が大混乱となるので、辛抱強く待機するよう指導されています。

【追記】
わが東京都では、「災害時における透析医療活動マニュアル」が平成26年3月に改訂され、都内の透析医療機関に配布されましたので、全文の閲覧、印刷ができる「東京都福祉保健局」ホームページの該当ページのアドレスを次に紹介しておきましょう。(平成26年3月改訂版・PDFファイル)

http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/iryo/koho/books.html
   (この「出版物・参考図書のご案内」のページの一番最初)

 尚、このマニュアルの一部を「透析患者用防災の手引(ー災害時にどう行動するかー)」として抜粋した添付PDFファイル(クリック)も紹介しておきます。

【追記】
最後に「171災害用伝言ダイヤルの使用方法」を紹介しておきましょう。(ココクリック・PDFファイル)