【1】わが国の慢性透析療法の現況(2006・12・31現在)
      <2007・6 「日本透析医学会」発表>


     ①施設数  3,985施設
                (45施設増・1.1増<前年比以下同じ>)
      ②設備   ペーシェントステーション  104,382
                          (3,830台増・3.8%増③能力   同時透析            103,573
                          (3,690人増・3.7%増)
              最大収容能力         350,943人
                         (11,528人増・3.4%増④慢性透析患者数             264,473人6,708人増)
                                2.6%増)
            昼  間          213,454人(全体の80.7%)
            夜  間            41,641人(全体の15.7%)
            家庭透析               147人(全体の0.1%)
            CAPD             9,003人(全体の3.4%)
            IPD                220人(全体の0.1%)
              導入患者数         36,373人
                           310人増・0.9%増)
              死亡患者数         24,034人
                             (51人増・0.2%増)      
         導入平均年齢        66.40歳0.20歳増)
           患者平均年齢        64.38歳0.48歳増)
      ⑤透析年数別患者数
           (透析年数)       (男性) (女性)      (計)
        5年未満            78,246   45,271   124,576(49.8%)
                                    (不詳59人含む)
        5年以上10年未満        37,735   24,378      62,117(24.9%)
                                   (不詳4人含む)
       10年以上15年未満        17,662   12,653   30,318(12.1%)
                                (不詳人含む)
       15年以上20年未満        8,496    6,923     15,419(6.2%)
       20年以上25年未満        5,042    4,210       9,252(3.7%)
       25年以上             4,707    3,568       8,275(3.3%)

     ⑥人口100万人対比         2,069.9人52.3人増)

    ⑦最長透析歴             39年0カ月 

   ⑧導入患者の原疾患
       1.糖尿病性腎症   14,968人(42.9%
       2.慢性糸球体腎炎  8,914人(25.6%
       3.腎硬化症     3,262人(9.4%
      尚、不明が3,454人(9.9%
  

【2】「腎カードカルテ」⇒「腎Webカルテ」について
 平成15年3月から、わが腎クリニックにおいては、透析患者一人ごとの透析情報を記録した「腎カードカルテ」が発行・運用されることになりましたので、このカードの特徴・記録内容・問題点(私見)等について、紹介しておきましょう。

(1)特徴
 ①ほとんどのパソコンで内容を確認できる。
 ②カード型(名刺サイズ)なので、常時携行でき緊急時にも安心である。
 ③約8年分の検査データを1枚に記録できる。
 ④最近の検査結果10回分の変化をグラフで表示できる。
 ⑤自分の健康管理(自己管理)がパソコンで可能になる。
 ⑥他の医療機関でも透析情報を確認できる。
 ⑦パソコン画面を使った診療説明が近い将来可能になる。

(2)記録内容
 ①通院施設
 ②血液型
 ③本人連絡先
 ④緊急連絡先
 ⑤保険情報
 ⑥病歴情報
 ⑦透析条件
 ⑧シャント情報
 ⑨循環器情報
 ⑩検査結果(推移グラフ含む)
 ⑪投薬情報
 ⑫グループ施設案内
(3)問題点(私見)
本「腎カードカルテ」の発行・運用そのものは大賛成ですが、あくまで透析患者の一人としてこのカードを仔細に吟味してみると、まだ多くの問題点や疑問点が散見されますので、気のついた点私見ながら問題提起をしておきます。
①人工透析患者高齢化の中で、パソコンを操作できない人が大半ではないかと思われるので、その人達にとっては無用の長物である。
(中には病院・クリニックに預けっぱなしの人も・・・)
②ノート型パソコンは問題ないが、ディスクトップ型パソコンだと、本体が縦型に置くようになっているので、このままでは落ちてしまいしかたなく本体を平らに寝かさないとディスクドライブにきちんと入らない。(汎用性の欠如)
③データの更新・変更が毎月1回となっているが、その方法について具体的ルーチンが徹底されておらず不十分である。
④各種検査結果の最新情報が一定期間(回収されている間)インプットされないので、緊急時に携行していなかったり、携行していても古い情報のまま緊急時に備えることになってしまう。
(各種検査結果の最新情報等自分で「書き込み」できないものか)
⑤パソコンさえあれば誰でも見れるため、保険情報等個人情報のセキュリティ面に疑問を持たざるを得ない。
(緊急時との関連で要工夫)
⑥実際に実施している血液検査項目がすべて入っていない。
(半分位)
⑦透析患者として知りたい肝心の「PCR」「透析量(Kt/V)」等が血液検査項目に入っていない。
⑧すべて透析前の血液検査数値のみで透析後の採血による血液検査数値が一つも入っていない。
⑨血液検査数値の基準値が透析患者用の数値になっているが、普通の健康な人の基準値と混同する。(透析患者の場合はあるべき数値は目標値としたら如何)
⑩「心胸比」「心電図所見」についても、過去からのトレンドが欲しい。
せっかくIT時代にマッチしたこの「腎カードカルテ」システムをより良くするために、以上の諸点等について、医療側の一層の改善を望むところです。
 尚、上記「腎カードカルテ」に替わり、平成19年2月23日より、インターネット経由で最新の透析情報がいつでも・どこでも24時間365日確認できるという謳い文句で「腎Webカルテ」サービスがスタートしました。(それまでの「腎カードカルテ」は現在も生きています。)この「腎Webカルテ」の特長は次の通りです。
(1)インターネット環境だけで閲覧できる。(IE6.0に最適化)
(2)ID・パスワード(いずれもそれぞれの腎クリニックにて配布)・SSL(暗号化)でセキュリティ
   対策は万全。
(3)紛失の心配がない。
(4)常に最新の情報が更新される。(検査後1週間以内に更新)
   〔「検査結果情報<28項目>」「透析情報<透析条件・バスキュラーアクセス情報>」「病
   歴情報」「投薬情報」「個人基本情報<ID番号・氏名・住所・電話番号・携帯番号>」〕
(5)検査情報は過去1年分を表示。(データは永久保存)
(6)最近10回分の検査経過をグラフ表示できる。
 以上の「腎Webカルテ」については、IT化の観点からも画期的ではあるもののそれだけに「検査結果情報拡大(検査した項目すべて表示)」や「検査情報更新のスピードアップ」「すべての情報にわたる正確性・最新性アップ」等の改善点や要望事項がありますので、今後一透析患者としては、さらに一層この「腎Webカルテ」をより良くするため、これらを整理してまとめて提言したいと考えております。

】家庭透析について家庭用透析装置
 人工透析患者が自宅で使え、従来より身体への負担も軽くできる日本初の人工透析装置を「帝人」が開発し、2002年12月の厚生労働省への承認申請を経て、早ければ2004年にも事業を開始する計画が明らかになりましたので、そのあらましを紹介しておきましょう。
<2002・12・24付朝日新聞より>
・厚生労働省から承認されれば、透析患者の生活の質(QOL)が向上し、年間の国民医療費の30分の1にあたる約1兆円といわれる透析治療費 の抑制につながるとみられる。
・開発された装置は、血液中から老廃物を取り除く透析や水の処理に必要な機器等を小型冷蔵庫大にまとめた在宅用の血液透析装置で、「帝人」が米国の医療機器ベンチャー(アクシス社<イリノイ州>)と共同で開発し、既に2002年春、米食品医薬品局(FDA)の承認を得た。
・一般的に透析患者は、週に3回程度医療機関に出向き、1回あたり4、5時間かけて透析を受けているが、こうした透析だと、体内にたまった数日分の老廃物を一度に濾過するため、急激な血圧低下で心臓に過大な負荷がかかることなどによる合併症が起きやすいと指摘されている。
・身体への負担を軽くするためには毎日、透析をすることが望ましいこともあり、1998年4月から透析患者自身が自宅で行なう在宅透析に公的医療保険が認められたが、そのときは在宅用装置がなく場所をとる医療機関向けの装置を設置するしか方法がなかったことに加え1台あたりの患者数を多くして収入を増やしたいと考える医療機関も多かったため、自宅で透析をする患者はほとんどいなかった。
・人工透析にかかわる患者の自己負担は、国の特定疾病療養制度や自治体の公費助成によりほぼゼロに抑えられている。この在宅用血液透析装置が厚生労働省から承認されると、在宅透析が適当と主治医が判断し、患者が同意すれば、「帝人」とリース契約を結んだ医療機関が患者に無償で貸与する予定である。在宅治療は、医療機関での治療と比べ診療報酬が低めに設定されていることや毎日透析することで合併症が少なくなると予想されるため、医療費の低減が見込める。
 「帝人」は、透析患者の自己管理が前提となる在宅でも、医療機関並みの治療や助言が受けられる体制を作ることにしている。

 以上の新聞記事の内容通り在宅透析に期待がかかりますが、実際問題として、「1回あたりの時間はどの位になるのだろか」「毎日透析しなければいけないのだろうか」「プライミングは患者自身でできるのだろうか」「穿刺はどうするのだろう」「透析中に血圧が下がったら・・・」「血液検査等各種検査はどうするのだろう」「透析液管理はどうするのだろう」「何か事故が起きたときどうすればいいのだろう」「夜間睡眠中に透析可能だろうか」「ダイアライザー等透析の都度必要なものの供給面はどうなるのだろう」「食事・水分管理は楽になるのだろうか」など、透析患者にしてみると、まだまだ疑問・不安・期待が入り混じっていますが、基本的には私もこの在宅用血液透析装置を是非使ってみたいという気持ちは持っています。
 尚、参考までに家庭透析(在宅透析)の訓練・管理透析施設を全腎協の「透析をはじめる人のためのガイドブック」(改訂第7版)より次に引用しておきます。
 ・「岩見沢クリニック」
  〒068-0028
  北海道岩見沢市8条西10-8-1
  TEL 0126-24-8811
 ・「クリニック1・9・8札幌」
  〒064-0919
  北海道札幌市中央区南19条西8-2-38
  TEL 011-512-1216
 ・「札幌北クリニック」
  〒001-0018
  北海道札幌市北区北18条西2-21
  TEL 011-747-7157
 ・「奥田クリニック」
  〒321-0964
  栃木県宇都宮市駅前通り2-2ー21
  TEL 028-635-0310 
 ・「阿佐谷すずき診療所」
  〒166-0004
  東京都杉並区阿佐谷南2-14ー3
  阿佐谷南2丁目住宅公団ビル1F
  TEL 03-5377-1512
 ・「信楽園病院」
  〒950-2087
  新潟県新潟市西有明町1-27
  TEL 025-267-1251
 ・「徳田病院」
  〒230-0061
  神奈川県横浜市鶴見区佃野町29-3
  TEL 045-571-3933
 ・「神奈川県衛生看護専門学校付属病院内科」
  〒235-0022
  神奈川県横浜市磯子区汐見台1-6-5
  TEL 045-761-3581
 ・「東海大学医学部腎・血液センター」
  〒259-1193
  神奈川県伊勢原市展望台
  TEL 0463-93-1121
 ・「多胡透析・泌尿器クリニック」
  〒409-3864
  山梨県中巨摩郡昭和町押越789
  TEL 0552-75-6550
 ・「静岡県立総合病院」
  〒420-0881
  静岡県静岡市北安東4-27-1
  TEL 054-247-6111
 ・「新生会第一病院」
  〒467-8633
  愛知県名古屋市瑞穂区玉水町1-3-2
  TEL 052-832-8411
 ・「名古屋大学大幸医療センター」
  〒461-0047
  愛知県名古屋市東区大幸南1-1-20
  TEL 052-719-1981
 ・「長寿クリニック」
  〒590-0104
  大阪府堺市土佐屋台1567
  TEL 0722-30-2871
 ・「香川県立中央病院」
  〒760-8557
  香川県高松市番町5-4-16
  TEL 0878-35-2222
 ・「高知高須病院」
  〒781-5103
  高知県高知市大津乙2705-1
  TEL 088-878-3377
 ・「埼玉医科大学病院」
  〒350-0495
  埼玉県入間郡毛呂山町毛呂本郷38
  TEL 049-276-1612
 ・「田川市立病院」
  〒825-8567
  福岡県田川市大字糒1700-2
  TEL 0947-44-2100

】「透析患者の栄養評価」について
=自分で自分自身の栄養評価をしてみよう=
透析患者なら誰しも、日常の食生活の中で、「きちんと適正に栄養が摂れているだろうか、過剰に摂っていないだろうか」そして「その結果産生される老廃物は透析によって十分除去されているだろうか」など、とっても気になると思いますので、ここでインターネット検索ページより、自分で自分自身の栄養評価等が計算できるページを管理者の許可を得て紹介しておきましょう。

(1)何がわかるのか
①TAC BUN(一週間を平均したBUN)
②PCR
(「PCR」の解説は「人工透析と食事」コーナーの【2】食事管理(2)たんぱく質摂取量の項目参照)
③Kt/V
(「Kt/V」の解説は「私の人工透析環境」コーナーの【2】ダイアライザー(透析器)の項目参照)
④ナトリウム摂取量
⑤カリウム摂取量
⑥エネルギー摂取量
(2)必要項目・数値は何か
①性別
②ドライウエイト(適正体重)
③1回あたりの透析時間
④連続する透析日2日の採血による血液検査数値と体重(月水金透析の場合月曜日と水曜日、火木土透析の場合火曜日と木曜日)
・月曜日(又は火曜日)の検査結果
 透析前 BUN 体重
 透析後 BUN ナトリウム(Na)カリウム(K)体重
・水曜日(又は木曜日)の検査結果
 透析前 BUN ナトリウム(Na)カリウム(K)体重
 <水曜日(又は木曜日)の検査項目(透析前)にNaとKが入っていないと上記(1)のナトリウム・カリウム・エネルギー摂取量は計算されません。その他の項目は計算されます。>
それでは、下記インターネットのページをクリックして、「透析患者の栄養評価」画面を開き、上記項目・数値を入力して計算してみましょう。
   
http://www.seiseikai.jp/
<(医)清生会 谷口病院HP左メニューリンクの「透析関連便利情報」上から5番目>

 尚、このページの右下の(ーお読み下さいー)をクリックして開いたページに目を通しておいて下さい。
 それから、病院・クリニックサイドから「PCR」「Kt/V」等が知らされている場合(知らされてなければどんどん聴きましょう)は、本計算結果数値と比較されてみて下さい。違いがあれば、主治医の先生とその理由等についてヤリトリしてみて下さい。

】新「高リン血症治療剤」について
 ご承知の通り私達透析患者は、リンの排泄障害により高リン血症をきたしやすく、血中のリン濃度を低下させるために、透析によるリン除去及び食事療法によるリン摂取制限に加え、日本国内では主に「カルタン錠」等の炭酸カルシウム製剤がリン結合剤として使用されています。しかしながら、炭酸カルシウム製剤は、純粋にリンを吸着するための薬ではなく、本来カルシウムを補給する薬として用いられていたものです。従って、透析患者によってはどうしても血中カルシウムがあがり過ぎるという欠点がありました。
かねてより、中外製薬(株)とキリンビール(株)が共同で開発してきた『カルシウムを含まない新「高リン血症治療剤(リン結合性ポリマー)」』が、日本でも2001年12月に厚生労働省に対して承認申請され、2003年1月31日に同省から健康保険適用の薬として承認されました。
そこで、私達透析患者にとっていわば食生活の改善(=牛乳・小魚等のカルシウム食品がこれまでより摂れるなど=)が図れ、より長生きできる可能性が高くなったと言っても過言ではない待望のこの新「高リン血症治療剤」を具体的に紹介しておきましょう。
①商品名(2つとも同じ薬剤)
 「レナジェル錠250mg」(中外製薬<株>製造・販売)
 「フォスブロック錠250mg」(キリンビール<株>製造・販売)
②成分名
 塩酸セベラマー
③効能・効果
 透析中の慢性腎不全患者における高リン血症の改善と予防
④薬価
 「レナジェル錠250mg」「フォスブロック錠250mg」とも1錠「35.60円」
⑤発売日
 2003年6月26日(木)
 尚、これは主治医の先生に確認したわけではありませんが、もともと血中カルシウムが低い透析患者の場合は、従来の「カルタン錠」等の炭酸カルシウム製剤を引き続き使うか、あるいはこの新薬剤と併用ということも考えられますので、いずれにしても、主治医の先生の指示に従って下さい。
 ただ、この薬は、1日に10~30錠程度のたくさんの錠数を服用しなければならないという難点があり、さらに副作用として便秘の増悪が透析患者の約4割に認められるので、今まで以上上手に下剤や整腸剤を用いて便秘のコントロールすることが大切です。
尚、「レナジェル」(「フォスブロック」も同様)は、もともと高コレステロール血症治療剤 「コレバイン」のように 高脂血症の治療薬として開発していたものが、リンを下げることが判明して、高リン血症の治療薬に変更されたものです。
コレステロールが体内で生じる過程で胆汁酸を経由しますが、これはその胆汁酸を吸着することでコレステロールを下げます。その結果、悪玉コレステロール(LDL)を下げ、善玉コレステロール(HDL)を増加させる働きもあるのです。

最後に、改めて「レナジェル錠」服用にあたっての注意事項を付記しておきます。
   <服用の仕方>
① できるだけ食事の直前に服用すること
② 飲み忘れても食事中や食後すぐに服用すること、それ以外の場合は服用しないで次の食事の直前に服用すること
③ 2回分を1度に服用しないこと
④ 間食をするときは主治医の先生と相談すること
⑤ 錠剤を口に入れたら、噛まずに速やかに飲み込むこと、またくだいて服用することはやめること(1回分を1口で飲みきれないときは何口かに分けて服用すること)
<副作用>
 腹痛・腹部膨満感(ゲップがでる)・便秘等
 (腸管穿孔、腸閉塞があらわれることがあるので、観察を十分に行うこと。これらの病態を疑わせる高度の便秘、持続する腹痛、嘔吐等の異常が認められた場合には、投与を中止し、触診、画像診断等を実施し、適切な処置を行うこと)

<次のような人は事前に主治医の先生に要相談>
① 以前に薬を飲んで発疹・痒みなどが出たことのある人
② 激しい腹痛・おなかが張る感じ・吐き気・嘔吐等の症状がある人
③ 便秘や痔のある人
④ 胃潰瘍や十二指腸潰瘍等にかかっている人又は以前にこれらの病気にかっかたことのある人
⑤ 医師から胃腸の働きが悪いと言われている人
⑥ 鼻血が出るなど出血しやすい人、あおあざができて消えない人、血が止まりにくい人
⑦ 胃や腸の手術をしたことがある人、食べ物や飲み物が飲み込みにくい人

】内部濾過促進型ダイアライザーについて
 「血液透析(HD」と「血液濾過(HF)」のそれぞれの長所を取り入れた「血液透析濾過(HDF)」と同じような効果が得られるダイアライザーを「内部濾過促進型ダイアライザー」と言います。
 この「内部濾過促進型ダイアライザー」は、まだ健康保険適用が認められていないなどのため現在本格的な実用段階にはないと思いますが、今後に期待するところ大ですので、このコーナーで簡単に紹介しておきましょう。
 (1)原理
  血液透析が血液中から半ば無理矢理老廃物を除去するのに対し、血液濾過は身体に無理をかけないように「濾過」という方法で老廃物を除去しています。そのため、濾過した分必要量を身体に補充しなければなりませんので、そのコストがかかりそう簡単にはできません。
  そこで、通常の透析を行なっていても、ダイアライザーに工夫を加えることによって、濾過の作用を持たせることができないだろうかという考え方が出てきました。
具体的には、ある部分では濾過として血液側から透析液側に物質を移動させ、ある部分では透析液側から血液側に物質を移動させるという作用です。こうした透析液側から血液側への物質の移動を「逆濾過」と言います。
この逆濾過と通常の濾過を合わせて「内部濾過」と言い、この機能を持ったダイアライザーが「内部濾過促進型ダイアライザー」です。
では、「内部濾過」をどうやって促進させるのでしょうか。その方法については二つの考え方がありますが、簡単な方を紹介しますと、ダイアライザーの中に入っている血液が通るストロー(中空糸)を細くしてダイアライザーへの充填率を高める方法です。即ち、透析膜面積が同じでも、中空糸の内径が小さくてダイアライザーへの充填率が高いダイアライザーの方が逆濾過が起こりやすくなります。
従って、現在のダイアライザーを改良しただけで逆濾過を促進させることができるので、誰もが「HDF」に近い透析を受けられるのではないかと期待されています。
 (2)効果(有効性)
 日本臨床工学技士会の第10回学術大会において発表された研究結果で「内部濾過促進型ダイアライザー」の実際の効果をみてみましょう。
 研究対象者の具体的な透析環境・条件は省略しますが、その結果は、対象者の透析膜面積が1.5㎡とあまり大きくないにも拘らず、小分子物質のみならず低分子蛋白質であるβ2―マイクログロブリンについても大きな除去率を示し、「内部濾過促進型ダイアライザー」が高い除去性能を持つことが確かめられました。
 結論として整理すれば以下の3点が確認されました。
 ①「内部濾過促進型ダイアライザー」は、特別な機器を必要とせず、通常の血液透析と同様の手法で施行できた。
 ②「内部濾過促進型ダイアライザー」は、低分子蛋白質の高い溶質除去率を持つことが確認できた。
 ③「内部濾過促進型ダイアライザー」を使用しても、蛋白漏出による血圧低下や逆濾過を促進させたためのエンドトキシン(細菌が出す毒素)による発熱等の副作用は認められなかった。
 (3)問題点
 逆濾過型のダイアライザーを使用するためには、透析液を身体の中に入れてしまうので、透析液がきれいであることが必須条件です。
即ち、身体内に入れることを想定したHDFの補充液の場合は、その組成自体透析液とほぼ同一ですが、補充液の方はしっかりと減菌されているのに対し、透析液はその原液が減菌処理されていないという問題点があります。
従って、普通に「内部濾過促進型ダイアライザー」を臨床使用するとなると、エンドトキシン(細菌が出す毒素)カットフィルターを2重に組み込むなど、経済性の面も含めエンドトキシンを徹底的に排除する透析液管理が誰にでも施せる透析環境が必須です。

】ドライウエイト(適正体重)の新判定手法について
 ドライウエイト(適正体重)を判定する手がかり・手法として、今は血圧・心胸比・HANP(血液検査データの一つ)・自覚症状(体調)等がありますが、これらに加え最近体内の水分量を測定し、それをドライウエイト(適正体重)を決める指標の一つにしようとする動きがありますので、このコーナーで簡単に紹介しておきましょう。
 この体内水分量は、ちょうど体脂肪計と同じ原理を応用して計測します。実際には、体重計のようなものの上に乗り、手に電極を握った状態で1~2分程度立っているだけで測定できるようです。握るタイプの体脂肪計と体重計タイプの体脂肪計を一緒にしたようなイメージの機器だと思います。
これで体内の水分量が計算されて結果か表示されます。この結果も含めてドライウエイト(適正体重)の判定に役立てようとするものです。ただ、これも万能ではありませんので、判定の指標が一つ増えたということで、今後より正確なドライウエイト(適正体重)の決定ができることへつながっていくと思います。

】長期生命維持の透析条件について   
 長期生命維持を可能とする透析条件をまとめてみました。当然のことながら、適正な食事・水分・薬剤管理といった自己管理を徹底して行ない、各種検査データ等の目標値をクリアーすることが大前提であることは言うまでもありません。その上で、診療報酬をベースにした透析施設経営維持等の問題もあり現時点すべてを実現することは極めて困難ではありますが、今現在透析医療界で標榜されている長期生命維持の透析条件について列挙すれば次の通りです。
(1)長時間透析(5時間以上)
「日本透析医学会」の統計調査委員会のデータ<(2)以降同じ>によれば、週3回透析の場合、1回透析時間が4時間の1年間の死亡危険度を「1.000」とすると、
①5時間以上の1年間の死亡危険度は「0.78」
②4時間未満の1年間の死亡危険度は「1.32」
この差は小さいようですが、年数が経てば経つほどその差は著しいものとなります。
<長時間透析の具体的成果>
①降圧剤を使用せずに血圧改善
②栄養状態の改善(感染症予防のための免疫力強化)
③心機能の改善 
④死亡率の大幅な減少
⑤皮膚の掻痒感や色素沈着、口臭の改善
⑥生活の質(QOL)の向上
(運動力・思考力・行動力の活性、食欲増進<制限緩和>、体調好転等)

(2)透析量(Kt/V)の増大
 透析量(Kt/V)の値が「1.000」を基準とすると、この値が増えるほど死亡危険度は低下し、この値が「1.6以上」では1年間の死亡危険度は、「0.83」まで低下します。
<この値を上げる最大の方法は上記(1)の長時間透析です。>
(3)クレアチニン産生速度の増大
 同姓同年齢の健常人のクレアチニンの産生速度の平均値に対する速度を百分率で表した指標がクレアチニン産生速度ですが、この値が大きいほど死亡頻度は低下します。このクレアチニンは筋肉によって作られるため、運動して筋肉量を増やせば死亡の頻度は低下することを意味しています。(残念ながらわが腎クリニックではこの数値は使っていません。)
(4)中2日の週初めの透析前体重増加4%以内
 この条件を満たすためには、塩分や水分を制限することが基本ですが、十分な透析を行い体液中の尿素等を低下させておくと喉の渇きが抑えられて飲水量が少なくて済みます。(この点からも長時間透析は重要です。)
(5)血清アルブミン濃度の高水準維持
 十分な栄養を摂って、血清アルブミン濃度を常に「4.0g/dl以上」に保つことが必要です。
(6)ヘマトクリット値の高水準維持
 ヘマトクリット値を常に「35%程度」に保つことが必要です。
(7)処方透析の実現
 それぞれの個々の状態に適合した透析液の最適化(処方透析)も必要です。
(8)生体適合性の良いダイアライザーの選択
 透析開始直後の白血球減少の少ないなど生体適合が良 く透析効率・性能の高いダイアライザー(次世代の「内部濾過促進型ダイアライザー」含め)を選択することです。
その他、「オンラインHDF」等透析方法の変更も長期生命維持には効果があると言われています。

】「オンラインHDF」と「プッシュ&プルHDF」について 
まず、「HDF」について簡単に説明をしておきます。
通常の血液透析(HD)では、尿毒素を拡散の原理によって除去します。
即ち、ダイアライザー内は半透膜の両側に毒素の溶けている血液と毒素の溶けていない透析液が流れているわけですが、この半透膜の孔(あな)の大きさが毒素の大きさよりも大きければ、毒素は透析液の方に移動する原理、これが「拡散」です。
ところが、この「拡散の原理」がはたらくのは、孔の大きさが毒素の大きさよりもずっと大きな場合に限られるのです。例えば、あるダイアライザーが分子量が約1万2千のβ2-MGが除去されるギリギリの大きさの孔を持っているとしましょう。この時に、分子量が60の尿素窒素(BUN)は拡散で除去されますが、β2-MGは除去されにくいか、あるいはほとんど除去されないのです。
では、どうすればよいのでしょうか。その答の一つは、孔の大きさをもっと大きくすることです。しかしながら、あまり孔の大きさを大きくしてしまうと、毒素以外の必要なもの、例えばアルブミンという重要なタンパク質までもが除去されてしまいます。そこで、もう一つの答が、たくさん除水をしてしまうことです。
「拡散」は、除水が全く行われなくても起こります。水の流れがなくても、分子量の小さな毒素は、透析膜を通って透析液の方に移動してくれるのです。実際の血液透析では除水も行われていますので、この時、水分が血液側から透析液側に流れているのですが、この流れに乗って、分子量の大きな毒素が移動をします。従って、分子量の大きなβ2-MGのような毒素を除去するためには、1回に15L(リットル)とか20Lとかといった大量除水をすればいいわけです。ただ除水をするだけでは、脱水になってしまいますから、大量の補液も同時に行います。例えば、透析で2kgの除水をしたい時には、15Lの補液をして、17Lの除水を行えば、除水もできて、しかも分子量の大きな毒素も除去できることになるのです。これが「HDF」の原理です。
「HDF」を行う時に、重要なことは補液量と除水量が正確に設定通りに行われることです。もし、設定通りに補液されなければ脱水になりますし、除水不足になった場合は大量の水分が体内に残ってしまいます。いずれの場合にも、生命が危険にさらされることになります。
そこで、「HDF」では専用の機械が使用されます。この機械が高価で、一般の透析用の機械のほぼ倍の値段がします。補液用の液も専用のものが売られていますので、これを使用します。
そうなりますと、問題となってくるのは、医療費の問題であり、「HDF」は血液透析よりもお金がかかる治療になります。そのため、健康保険でも適応が限られていて、透析アミロイドーシスや通常の血液透析には耐えられない心機能低下などが健康保険の適応となっています。
このように、「HDF」は慢性腎不全の治療としては血液透析よりもメリットの多い治療なのです。そこで、「HDF」を普及させるために、あまりお金をかけずにこの治療を行うことを目的に考案されたのが、「オンラインHDF」と「プッシュ&プルHDF」です。
「オンラインHDF」では、補液は専用のものを用いずに、透析液自体を補液することになります。透析液はほぼ使い捨てですし、「HDF」用の補液に比べたらずっと安価です。
除水量と補液量の厳密な制御が必要なことは、通常の「HDF(これを最近はオフラインHDFと呼んだりします。)」と同じです。透析液を15Lから30Lあるいはこの倍以上も体内に入れるのですから、重要なことは透析液がきれいなことです。ご承知の通り、通常透析液は「エンドトキシン」という物質で汚染されています。血液透析で、透析液から血液の中に流れ込むエンドトキシンはごく微量であると考えられていますが、それでも、十分に透析液をきれいにすることが必要であるというのが最近の考え方です。
透析液をきれいにするためには、エンドトキシンフィルターという機器を取り付けて、かつきちんとメンテナンスすることが必要です。しかし、残念ながら、透析液を十分に清浄化している施設はまだまだ限られています。
法的な規制がなく、エンドトキシンフィルターを装着することが義務づけられていないことから、エンドトキシンフィルターをつけてもその分のお金が医療施設の持ち出しになってしまうからです。
さて、この「オンラインHDF」ですが、「オンラインHDF」では、透析液が直接大量に血液内に入ってきます。従って、血液透析の場合の透析液の清浄化よりも、ずっときれいにしておくことが必要です。実はこの透析液の清浄化がなかなか難しく、「オンラインHDF」のネックになる重大なポイントの一つです。
一方、「プッシュ&プルHDF」はどうでしょうか。
この方法は、補液をダイアライザーを通じて行う方法です。即ち、除水と除水の反対(つまり、透析液側から血液側に水分が入る)とを交互に行う方法です。この方法を用いると、やはり30Lくらい補液をしたのと同等の治療効果が得られます。この「プッシュ&プルHDF」でも、補液は透析液を用いるわけですから、「オンラインHDF」の時と同じく、透析液の清浄化は必須条件です。しかしながら、「オンラインHDF」と違って、透析液が血液に入ってくる時にダイアライザーを通過しますから、ここでエンドトキシンが多少除去されるというメリットがあります。
従って、「オンラインHDF」に比べて、「プッシュ&プルHDF」の方がエンドトキシンが体内に大量に入ってきてしまうリスクは小さいと考えてよいかと思います。だからといって、清浄化しなくてもよいと言うことにはもちろんなりません。
要するに、「オンラインHDF」にしても「プッシュ&プルHDF」にしても、いかにして透析液をきれいにするのかが極めて重要なことなのです。
因みに、この二通りの方法は、現時点では保険では「HDF」として認められていません。現下の厳しい経済・財政状況の中で、この治療法が「HDF」として認められて点数がつくかどうかは不明ですが、普及型の「HDF」としての可能性は十分にあると考えられます。

10】糖尿病患者のフットケアについて
  足に流れている血液が十分に抹消まで行かなくなって起こる糖尿病患者の足の"壊疽"を防ぐためには、日頃の血糖コントロールはもちろんですが、加えて次のような足の管理(フットケア)が必要です。
尚、"壊疽"による足など四肢の一部や乳房などを切断することを「隠語」で「アンプタ」と言います。(もともと切断を意味するドイツ語)
① 外傷を防ぐために素足で歩くことは止める。
(出血の有無がすぐわかる白い靴下着用)
② 窮屈な靴下(ゴムの強い靴下は要注意、女子学生のルーズソックスを見習うこと)、窮屈な足袋、窮屈な靴をはかない。(サンダルは指先を怪我する危険性があるので避けること)
③ 部分的な圧迫を防止するために特殊な靴を注文する。
 (病院の整形外科に専属の装具屋さんがいるので相談するとよい)
④ つめを切るときには、まず石鹸で足全体をよく洗い、ヒビテン又はイ
ソジンで十分に消毒してから切るようにする。つめ切りは自分専属のものを用意しておき、また使う前には消毒用アルコールに侵すようにする。深爪はしないで、やすりで角をよくおとす。
⑤ マメは自分で処置しないようにする。
⑥ 汗をかきやすい人は、足に傷がなければ石鹸を使用して頻繁に洗う。もし、傷があれば微温で洗う。熱い湯は、感覚が鈍っているので絶対に使用しないようにする。汗取りのパウダーを使用する場合には、頻繁に洗い落とす。
⑦ 皮膚が乾燥している場合には、油性のクリームを使用する。この場合にも、頻繁に洗い落とすことが重要である。
⑧ 毎日、必ず足をよく洗い、足の指の間を石鹸できれいに洗う。足の指の裏側、足さきから、かかと、足の裏まで観察する。
⑨ 足首から、先端部の運動を毎日行なう。(血行をよくし、流れの悪くなった血管のバイパスを発達させるのに役立つ)


11】透析患者に多い便秘対策について 
  透析患者には便秘が多く、ある統計によれば、透析患者の40%以上が何らかの便秘を訴えているようです。そこで、透析患者の便秘の原因とその理由、便秘のタイプによる対策及び便秘薬(下剤)の種類について次の通りまとめてみました。

(1)便秘の原因とその理由
便秘の原因 その理由
大腸の運動が弱い 運動不足、原疾患が糖尿病の場合の自律神経障害、動脈硬化、ビタミンB(特にパントテン酸等)不足等
きばれない 運動不足により腹筋が弱くなっている。
繊維の不足

Kと水分制限のために食物繊維の豊富な野菜類や乳製品、豆類、海藻類を充分に摂れない。
(1日の最低必要量10g以上)

飲水制限 摂る水分量を減らさないとむくみ、心不全等になりやすいので、水分が厳しく制限される。
大腸の病気

あまりにも便秘がひどいとき(1週間も出ない・便が細い・下痢と便秘を繰り返す・便に血が混じる・便が黒いなど)の大腸の病気

(腹膜炎・手術による腸の癒着・アミロイドの沈着・大腸癌等)
薬の副作用

P吸着剤(レナジェル・フォスブロック)
K吸着剤(カリメート・アーガメイトゼリー)
コレステロールを下げる薬(コレバイン)等


(2)便秘のタイプによる対策
便秘のタイプ 原因 対策
便が固い・ウサギの糞のような便

・腸から水分がたくさん吸収されてしまう。
・水分を吸収する薬を飲んでいる。(レナジェル・フォスブロック・カリメート・コレバイン等)
・腹筋が弱い、運動不足

・水分の摂り方にメリハリをつける。(制限範囲内で冷たい水100~150mlを一気に朝飲むなど)
・便をやわらかくする薬を処方してもらう。
・便秘体操をする。
・出口付近の便が固くなりすぎたときに下剤を使うと腸に穴が開く危険があるので、先に浣腸や摘便で塊を取り除く。

便の量が少ない

・繊維が少ない。
・食べる量が少ない。

・繊維の多い食事をとる。
・サプリメントで食物繊維を摂る。(主治医の先生や栄養士さんに要相談)
・栄養士さんに相談する

便意を催さない 腸の運動が弱い。 刺激性下剤を用いる。

(3)便秘薬(下剤)の種類
 
便秘薬の働き別種類 特徴 薬の名前

便の出をよくする薬
(刺激性下剤)

大腸の働きを高めて、排便を促す。
通常効き目が出るのが8~10時間後なので就寝前に服用する。
ただ、連用すると次第に効かなくなってしまう(これを耐性と言います。)ことがある。

よく使われるのは漢方薬の「センナ」やその類(「センノシド」)等を用いた薬で、「アローゼン」「プルゼニド」「ヨーデルS」「アジャストA」等がある。(私は「プルゼニド」を服用しています。)
また大黄や甘草を用いた漢方薬も使われる。
以上の下剤は耐性を生じることがあるが、「ラキソべロン」には耐性が少ないようである。
「ラキソべロン」は、液状の下剤で水に滴下して服用する。これには、便をやわらかくする効果もある。

便をやわらかくする薬 透析患者が服用できる薬は残念ながらあまりない。

「D―ソルビトール」は糖類の一種で頻回(2~4回)に服用すると効果的である。
この薬は、よく「カリメート」と一緒に服用されていたが、腹痛や腸に穴が開くなどの重篤な副作用が報告されたことから最近はあまり使われていない。従って、固い便が出口付近にあるときは危険である。
同様に、「モニラック」「ラクツロース」といった薬剤も糖の一種でとても良いが、これらの薬は便秘には保険適用がされない。いずれも、腸から吸収されないので、糖尿病の人も服用できる。

漢方薬 その人の体質により、効果的な薬、逆効果な薬があるので、合った薬を処方してもらう。

「潤腸湯」「麻子仁丸」「大黄甘草湯」「桂枝加芍薬湯」「大建中湯」「小建中湯」「大紫胡湯」「加味逍遥散」等がある。
いずれも医師の処方が必要である。

透析患者が服用しない方が良い薬 身体に溜まる成分を含んでいたり、大量の水分と一緒に服用する必要のある薬剤

「カマ」等マグネシウムを含んだ便秘薬は、マグネシウムが血液中に溜まってしまうので、長期に服用してはいけない。
「バルコーゼ」は、大量の水と服用しなければならないので、飲水量の制限のある患者は服用できない。


<注>
①透析患者の場合、合う薬とそうでない薬がありますので、安易に市販の薬を用いず、必ず主治医の先生に処方してもらいましょう。
②漢方薬を服用する場合の注意点
・漢方薬は、その人の体質によって効くものやかえって悪くしてしまうものがあります。それは、身体を「虚」と「実」という二つのタイプのどちらかであるか診断し、それぞれに合った漢方が処方されます。
・多くの漢方薬に含まれているカリウムはそれほど多くありませんが、多いものもあります。
・漢方薬だからといって副作用がないわけではありません。たくさん飲みすぎれば当然副作用があります。
・多くの漢方薬はぬるいお湯30ml程度に溶かして1日3回毎食後服用します。水分制限のある場合はその範囲内にしましょう。
・必ず医師の診断を受けてからにしましょう。


12】シャントが全身に与える影響について
シャントの局所的な合併症については、本HP「人工透析基礎知識コーナー」のところで説明しましたが、ここでは血流をシャントさせると全身的にいろいろな問題が起きる可能性がありますので、この点について説明しておきます。
血流をシャントさせると心臓に負担がかかります。何故かと言いますと、心臓が血液を送り出すと送り出された血液は抵抗の少ない腕即ちシャントのある腕の方へ流れていき、さらにその中でもシャントに直接つながっている動脈の方にいきます。そうすると、その血管は血液がたくさん流れていきますからどんどん太くなり、その分だけ心臓は余計に仕事をしなければならなくなります。このように、心臓が多量の血液を送り出せば、それだけ空回りする血液が増えるという困った問題が出てきます。
心臓は1分間に5リットル前後の血液を送り出していますが、シャントをしている血液の量は、普通の外シャントで1分間に200~300ml、内シャントで同500ml、さらによく流れているシャントですと1リットル以上にもなります。
それでは一体どの位ならば空回りしていても差し支えないのでしょうか。これは、貧血の度合い、心臓を養っている冠動脈硬化の程度、あるいは年齢等透析患者の条件によって一概には言えませんが、平均的にみれば10%位即ち心臓の拍出量が5リットル程度ならば500ml位まではそれほど大きな問題にはならないようです。しかし、それ以上特に20%以上になってくると、不整脈や心不全を起こしてくる場合も少なくありませんので、シャントする血液流を減少させる必要が生じます。そのため、シャントの血流量が多い人は、運動をさせて心電図を調べたりすることが大切です。もちろん、階段の昇り降りが非常に苦しいとか、疲れやすいというのであれば、つなぎ口を狭くしてもらう手術を試みる価値があります。
このように、シャントする血流量が多ければ心臓にかなりの影響を及ぼしますので、ほどほどの血流量で長持ちするシャント、これが長期透析の一つの鍵を握っていると言っても過言ではありません。

13】タバチエールの内シャントについて
 従来の内シャントのスタンダード方式では、ご承知の通りちょうど腕時計の下辺りに作りました。確かにこの部位に作った内シャントが一番長持ちするのですが、私のようにこれに失敗するともっと上の方よりということになります。しかし、スタンダードの位置を使う前にもう1箇所、内シャントを作る場所があるのです。その場所とは、スタンダードの位置から5cmほどの腕の先で親指の付け根に近い部位(この場所を「タバチエール」と言います。)です。この場所は、内シャントを作るために吻合する血管が非常に近くにあり、手術は比較的やりやすくて成功率が高く、小さな傷ですむというメリットがあります。
 この部位を使うと内シャントを作れる部位が左右で2箇所増えるということ以外に、動脈が細いから心臓に対する負担が少なく、また後からスタンダードの位置に作る場合には静脈が既に内シャントとして使われているので血管が拡張しており、作りやすくなるという利点もあります。それから、スタンダードの位置にある静脈が閉塞している場合でも、別ルートで血流を流して内シャントを確保しうるという可能性があります。
 ただ、手術の傷が袖口から外へ出てしまうということやいわゆる手術野が少し狭く、また閉塞率もスタンダードの位置より少し高いということはあります。いずれにしても、そう大きな欠点はありません。
 尚、タバチエールの内シャントの画像が載っている長野県の「北信総合病院 」の心臓血管外科のインターネットページを次に掲げておきます。
 http://www.hokushin-hosp.jp/syokai/shanto.html
 他にもいろいろなシャントの画像も載っています。

14】ボタンホール穿刺について 
 透析終了後、穿刺針を抜去した跡の穿刺ルートに、血管表面近くにまで到達しないポリカーボネート製の画鋲型スティックを挿入し、これを透析毎に新しいものに取り替えつつ、数日間留置することにより固定された穿刺ルートを作製し、そのルートを使って穿刺する方法をボタンホール穿刺と言います。
簡単に言いいますと、血管に到達する道を作り先の鋭くない穿刺針を導きやすくして針を刺す感覚ではなく挿入するといった感覚のものです。
 ボタンホールとは、同一部位を反復穿刺してできた皮膚の形状がボタンホールに似ているところから名付けられたものです。
 ボタンホールの方法により固定された穿刺ルートを作製すると、以後は透析毎に先端が鈍(どん)の翼つき金属針(ダルAVFニードル;D-AVF)を用いてボタンホール穿刺を行います。
 (ポリカーボネート製の画鋲型スティック<バイオホールキッド;BHキッド>とD―AVFは二プロ<株>で販売されています。)
 画鋲型スティックは、長さが5mmで先端が鈍(にぶ)く反対側には直径3mmの球状のストッパーが接着されています。 画鋲型スティックは、通常の穿刺針の抜去後に皮膚表面の刺入口から穿刺ルートに沿って挿入しますが、長さが5mmと短いので先端は血管表面近くにまでしか到達しません。
ボタンホール穿刺に至るまで即ち画鋲型スティックを用いた固定穿刺ルートの作製法と穿刺までの工程・手順は次の通りです。
①通常の針を用いて血液透析を施行する。(このときの角度は25~30°)
②透析終了後に針を抜去し、圧迫止血する。
③止血を確認した後、刺入口及び周辺を十分消毒する。
④画鋲型スティックを皮膚表面の刺入口から針の穿刺ルートに沿って挿入する。
⑤画鋲型スティックの球状のストッパーの上を撥水性の減菌絆創膏で覆い帰宅させる。
⑥次の透析日に、留置しておいた画鋲型スティックを抜去し、消毒後に新しいスティックに取り替える。このときの穿刺は留置部を避ける。
⑦このように(⑥)、画鋲型スティックを透析の都度取り替えながら7日程度留置する。(最長2ヶ月の例あり)
<この期間は入浴を避け、非透析日の入浴もシャント肢を濡らさない工夫をして、入浴後は画鋲型スティックの部分の消毒を行なうなどの注意が必要です。画鋲型スティックの留置期間が終了したら通常の入浴OKです。>
⑧固定ルートが完成したと判断されれば、画鋲型スティックの抜去後に、形成されたアクセス血管にいまだ到達していない固定ルートの方向(角度)を十分観察し、これに沿ってそれぞれの施設で使用している先端が鋭い通常の針をアクセス血管内に挿入して穿刺ルートをアクセス血管内に開通させる。
⑨透析終了後、最後の画鋲型スティック留置を行い、帰宅させる。
⑩次の透析は、⑧と同様に正円形のホールを慎重に観察し、固定ルートの方向に沿って、今度は「D-AVF」を用いて刺入する。
⑪以後は、透析毎に固定穿刺ルートの痂疲を剥がしたうえで、「D-AVF」を用いて角度に注意しながらボタンホール穿刺を行なう。
⑦の留置期間は、アクセス血管と皮膚の状態、穿刺スタッフの技量等により、それぞれの施設で判断しなければなりませんが、なれれば週末に画鋲型スティックを留置し、中2日後の週明けに上記⑥⑦⑧⑨を省略し⑩に進めたり、⑧の段階で「D-AVF」を用いることも可能です。
ボタンホール穿刺は、痛みも少なく、合併症も認められず、止血時間も短くて済むなどメリットがありますが、次の諸点に注意が必要です。
①ボタンホールの痂疲を確実に除去すること。感染リスクが高まる可能性もあるので、その前後に十分消毒を行なうこと。
②通常の穿刺時と同様に必ず流水で洗い、必要に応じ撥水テープを貼って保護すること。
③通常の穿刺に適さない部位は避けること。
④刺入の感触が通常と異なるので、穿刺者の慣れが必要であること。
⑤ボタンホールに何らかの異常が認められたときはボタンホール穿刺に固執しないこと。
尚、このボタンホール穿刺は、最近になって確立された技術ですので、長期に亘る実績がありません。従来の穿刺法では10年、20年のシャント開存例が報告されていますが、ボタンホール穿刺で10年、20年と同じシャントを使用できるのかというのはまだ分かりません。また、実際の穿刺にあたって、ボタンホール穿刺用の針を使わず、普通の翼状針、べニューラ針を使う場合があります。
透析患者によってはトンネルがかなり閉じており、針先でトンネルを切り裂いて開いていけるため、かえって痛みが少ないというメリットがあります。さらに、ボタンホール作成時にスティックを用いず、熟練した一人の穿刺者が同一部位を、同じ角度で、同じ方向に何度も穿刺することによってボタンホールを作製している透析施設もあります。

15】透析患者と動脈硬化について
 "動脈硬化"という言葉は、病気というよりも、血管の病的な状態(病態)を表しています。この動脈硬化は加齢とともに進行し、老化には避け得ない病態ですが、透析患者の場合はその進行が早いとも言われています。
2004年12月31日現在の「わが国の慢性透析療法の現況」によれば、2004年1年間の透析患者死亡原因の第1位は「心不全」で25.1%、第2位が「感染症」で18.8%、第3位が「脳血管障害」で10.6%となっており、続いて「悪性腫瘍」「心筋梗塞」という順になっています。この中で、第1位の「心不全」では溢水(水分・塩分が溜まること)が原因であるものが多いと考えられますが、この場合、心臓の機能に問題があり、その原因疾患として「心筋梗塞」や「虚血性心疾患」もかなりの程度含まれていると思われますので、実際は死因に動脈硬化が直接的・間接的にかかわっているものが相当あることが予想されます。また、動脈硬化そのものが慢性炎症であるという説もあります。
 そこで、「動脈硬化とはどういうものか」「動脈硬化はどうやって診断するか」「どうして動脈硬化が起こるのか」「透析患者の動脈硬化の特徴は何か」「動脈硬化のリスクファクター(危険因子)」「動脈硬化の予防と進展防止」及び「動脈硬化によって起こる疾患(病気)とその治療」について、次に言及しておきましょう。
(1)動脈硬化とはどういうものか
動脈硬化になると、血管の弾力性が失われ、ちょうど古いゴムホースのように硬くもろくなり、拡張したり、圧により破れたりします。また、血管の壁が肥厚し、内腔は狭くなり、詰まったり、血流が減ったり、石灰化して血管がガチガチに硬くなる変化が見られることもあります。このような動脈硬化の様々な病態が大きさの異なった動脈で同様に生じることもあれば、動脈の大きさにより少しずつ異なる場合等もあり、病像をより複雑にしています。さらに、この様々な病態により、身体のいろいろな器官や臓器に血管の破綻や出血、血栓や閉塞、狭窄や血流不全が起きます。
例えば、脳の血管が破綻し出血が起これば「脳出血」、血栓や閉塞が起これば「脳梗塞」、心臓の栄養血管である冠動脈に血栓や閉塞が起これば「心筋梗塞」、狭窄や血流不全が起これば「狭心症」となるわけです。
(2)動脈硬化はどうやって診断するか
 ①動脈硬化による個々の臓器の疾患
 ・臨床症状や検査所見によるそれぞれの診断法
 ②直接動脈そのものの狭窄や閉塞を見る手段
 ・造影剤を用いた血管造影やMRIアンギオ
 ・血管の石灰化に対しては通常のX線撮影
 ・EBCT(エレクトロンビームCT)という血管の石灰化を定量化できるCT装置
 ・動脈の状態を反映する眼底検査
 ・その他全身の動脈硬化の指標として、頚動脈の厚さや内径・石灰化を超音波(エコー)を用いて調べる方法、脳波速度を用いて動脈硬化の程度を判定する(動脈硬化が進むと速度は次第に大きくなっていく)方法
(3) どうして動脈硬化が起こるのか
 まず最初に血管の一番内側にある血管内皮が、酸化LDL(酸化され低比重リポたんぱく=悪玉コレステロール)、喫煙、高血圧、糖尿病等により障害され、マクロファージという細胞が血管内皮下に入り込みます。この細胞は血液中を流れてくる酸化LDLを食べて処理(泡沫細胞化)しようとしますが、食べ過ぎて死亡するマクロファージも出てきます。これらが血管内皮下に溜まり、リンパ球(T細胞)やサイトカイン(リンパ球より出る生理活性物質)の働きをうけて粥腫(アデローム)を形成し、内膜が肥厚し、血管の内腔は狭くなります。これらの変化は主として大血管に起こるもので、粥状動脈硬化といいますが、この他に中程度の大きさの動脈に起こる血管中膜の石灰化を特徴とするメンケベルグ型動脈硬化や細小動脈に生じる細小動脈硬化があります。
(4) 透析患者の動脈硬化の特徴は何か
①病因的には、「慢性的な体液過剰」「骨代謝の異常」「尿毒症の病態」「アシドーシス」「高脂血症(高トリグリセライド血症)」等に加えて透析治療そのものも動脈硬化の発症進展にかかわってきていると考えられています。このうちいくつかは、透析患者しか認められないものです。
②形態学的には、透析患者の動脈硬化の主体は中小動脈に起こるメンケベルグ型動脈硬化と言われています。実際透析患者の心臓の冠動脈は石灰化が強く、より広範囲であると指摘されています。
③臨床的には、動脈硬化による「虚血性心疾患」「心筋梗塞」「脳血管障害」による死亡率を一般人口と比較すると透析患者は10倍以上高いと言われています。
(5) 動脈硬化のリスクファクター(危険因子)
 リスクファクター(危険因子)とは、病気の発症・進展を促進する因子のことです。一般的に、「高血圧」「肥満」「高脂血症(高コレステロール血症)」「高脂血症(高コレステロール血症)「喫煙」「糖尿病」「ストレス」「加齢」等が挙げられます。
これらに加え、透析患者では、「体液過剰」「尿毒症の病態」「透析」「カルシウム・リン代謝異常」等が関与しています。さらに、低栄養(低アルブミン血症)やきれいでない透析液も動脈硬化を促進すると考えられています。
(6) 動脈硬化の予防と進展防止
 ①(5)の一般的なリスクファクターを減らす。 
 ②高血圧をコントロールする。
  =降圧剤だけでなく食事中の塩分制限重要=
 ③リン・カルシウムとリン×カルシウム積をコントロールする。
  =P×Caを「55以下」(理想値)=
 ④透析間の体重増加を適正に保つ。
  =3~5%=
 ⑤栄養を十分に摂る。
  =たんぱく質必要量摂取=
 ⑥透析液を清浄化する。
 ⑦その他
  =抗酸化作用のあるビタミンC・ビタミンE・食品の摂取等=
(7) 動脈硬化によって起こる疾患(病気)とその治療
 ここではよく見られる三つの疾患を取り上げてみます。
 ①脳血管障害
 脳血管障害は透析患者の死亡原因の第3位に挙げられている重要な疾患です。脳血管障害は「脳出血」と「脳梗塞」が主な疾患ですが、現在ではCT検査により両疾患の有無と鑑別は容易です。
 手足の麻痺や言葉がしゃべりにくいなどの症状があったら、すぐにスタッフに相談しましょう。早期診断、早期治療、早期リハビリが必要な疾患です。
 「脳出血」は原則的に保存的な治療ですが、時に手術の適応となるものもあります。
 「脳梗塞」は血液が固まりにくくするアスピリン等を用いて治療しますが、日常的には脱水に注意することです。
 ②虚血性心臓病
 主なものは、「狭心症」と「心筋梗塞」があります。
 「狭心症」は冠動脈の血流が極端に減少した状態、「心筋梗塞」は冠動脈が血栓等で完全に閉塞しその支配領域の心筋が壊死に陥った状態で、どちらも強い胸痛を伴います。
 確定診断は、どちらも冠動脈造影法(CAG)により行ないます。
 「狭心症」の場合はニトログリセリン等で冠動脈を拡張させて、胸痛を取り、心臓に対しては直接的な処置を加えないで治療することもありますが、基本的には両疾患とも冠動脈の動脈硬化による狭細化があるので、根本的治療として次の二つの方法があります。
・一つは、冠動脈にカテーテルを入れバルーン(風船)をふくらませて動脈を拡張する「PTCA」という方法です。手術をしない利点がありますが、再狭窄をきたすことがあり、再度治療を要する場合も少なくありません。
・もう一つは、透析患者の場合は、石灰化の程度が強かったり、その範囲が広いことも多いため、「PTCA」で拡張が無理な場合も多く、その場合は冠動脈バイパス術(CABG)という方法をとります。この手術は狭窄した冠動脈に代わって自家動脈や静脈を使い、バイパスを作るものです。
 ③閉塞性動脈硬化症(ASO)
 これは糖尿病の患者に多く見られますが、糖尿病以外にも見られます。病変は腹部の大動脈から下肢の中小動脈の粥状動脈病変で、血管の分岐部に多発します。この疾患は下肢に起こりますが、臨床症状として、
 ・Ⅰ度=しびれ感・冷感
 ・Ⅱ度=間欠性跛行
 ・Ⅲ度=安静時疼痛
 ・Ⅳ度=潰瘍・壊死 
 に分類されます。この中で「間欠性跛行」は特徴的で、長い間歩くと痛みのため足を引きずるようになってしまいます。
 治療としては、まず足より中枢側に狭窄があれば、「PTA」でその部分を拡張するか、人工血管や自家血管で置換するか、あるいは反対側の動脈からのバイパス術を行ないます。
 次にフットケアを行ないます。足指を常に観察し、清潔に保ち、爪をよく切り(深爪はせず)、傷を作らず、湯たんぽ等の低温やけどに注意し、足を締めつけないようなゆったりとした履物を用います。最近の治療として炭酸浴の有効性が報告されています。(この「その他インフォメーション」コーナー【18】参照)
尚、閉塞性動脈硬化症(ASO)には喫煙は禁忌です。閉塞性動脈硬化症(ASO)のことがよくわかるインターネットサイトを二つ次に紹介しておきましょう。
http://www.otsuka.co.jp/health/disease/aso/htm2/index.htm# 
http://www.suita.saiseikai.or.jp/kakehashi/shinzoukekkann/no-2/doumyakukouka.htm

 以上の「動脈硬化」にも共通する快適で長生きできるキーワードは、「自己コントロール」ですので、私達透析患者はこのことを改めて肝に銘じるべきです。


16】透析患者の骨密度について
二重エネルギーX線吸収法(DEXA法)による骨塩定量装置が普及し、透析患者においても日常的に骨密度(BMD)の測定が行なわれるようになってきましたが、透析患者におけるBMD測定の意義については必ずしも明確にされていないというのが現状です。
まず、BMD測定の目的ですが、その目的は「骨折しやすい患者を発見して早期の治療を行い、骨折を回避する」ことにあります。
その根拠となっているのは、
①骨強度の約80%は骨塩量に依存していること
②健常若年者の平均BMD値の70%未満では骨折頻度が高いという疫学的事実があること
 の二つです。しかし、この根拠は非腎不全・非透析患者についてのことであり、透析患者にも上記二つの前提があてはまるというエビデンスはこれまでのところ得られていません。即ち、透析患者における骨強度は、単に骨塩量減少のみならず、「カルシウムやリンの代謝異常」「活性型ビタミンDの欠乏」「副甲状腺ホルモン(PTH)の異常分泌」「代謝性アシドーシス(体液が過度に酸性化した状態)」等による“骨質の変化”が大きく骨強度に影響していると推測されています。以上のことから透析患者におけるBMD測定で“骨折の予測”をすることは極めて困難であると言えます。
 一般的なBMD測定は「腰椎」で測定しますが、透析患者における腰椎BMD値の有用性は低いと考えられている一方、「橈骨」で測定する橈骨BMD値は「副甲状腺機能亢進症における高回転骨(繊維性骨炎)の重症度を比較的良好に反映している」と考えられるため、透析患者BMD測定部位としては「腰椎」より「橈骨」での測定が望ましいと思われます。
 尚、2003年10月にアメリカの腎臓団体から、K/DOQIの一環として「慢性腎疾患における骨の代謝と疾患のための実施臨床ガイドライン」が発表され、東海大学総合医学研究所「斉藤明」教授が監訳された内容を要約したものを参考までに添付(クリック)いたします。この要約内容は、GFR(糸球体濾過量)に基く腎障害の程度をステージ5(透析)に絞ってまとめたもので、いわゆる一つの考え方・見方として紹介するものです。
 わが国では、未だ科学的な評価に耐えうる研究報告が十分とは言えませんので、アメリカと同様のガイドラインを作成するのは時期尚早と言えますが、目下日本の透析臨床医も本ガイドラインを十分学習し、検証していることは 間違いのないところです。


17】透析中に起こりうる事故について
透析中の事故は、機械の故障と操作ミス等の人為的ミスが絡むことが多いですので、透析中に起こりうる事故については私達透析患者もよく認識しておく必要があります。透析中に起こりうる事故について列記してみますと次の通りです。
①透析液に関する事故
 ・原水処理の不適
 ・濃度の異常
 ・液温の異常
 ・汚染
②透析器(ダイアライザー)に関する事故
 ・血液漏出
 ・使用前洗浄の不適
③ブラッドアクセスに関する事故
 ・血流不良
 ・静脈圧上昇
 ・穿刺ミス
④空気の誤入(混入)
⑤血液回路内の血液凝固
⑥接続部の逸脱(出血・汚染)
⑦除水の過剰・不足
⑧誤穿刺
⑨アナフィラキーショック(急性のアレルギー反応)
⑩停電及び断水
⑪地震及び火災等
以上の透析中の事故の中で、生命の危険に直結する「空気の誤入」は、回路内のどこからでも発生する危険性があります。透析患者の体内に空気の誤入が起きたときの症状として、咳、胸部不快感、呼吸困難、チアノーゼ、血圧下降、意識障害等が出現し、極めて重大な状態に陥ることが予測されます。こうしたときの対応は、次の通りです。
①速やかに血液ポンプを止める。
②頭部を下げ、下肢を挙上し、左側臥位にする。
③気道確保
④酸素吸入

18】透析患者の末梢神経障害に対する人工炭酸泉浴の改善効果について
日本透析医学会の報告によれば、2006年12月末時点では、それまで1年間の透析導入患者のうち糖尿病性腎症を原疾患とする透析患者が約42.9%と第1位を占め、糖尿病性腎症の患者が増加しています。また、糖尿病性腎不全に伴う下肢または上肢病変は多種多様に変化するため、臨床の現場ではその対策に苦慮しています。そこで、透析患者の「疼痛」「しびれ感」「冷感」」等の下肢または上肢病変即ち抹消循環障害に対して、人工炭酸泉浴剤を使用(足浴等)することによる有用性が報告されていますので、次の2例を紹介します。
(1)下肢病変に対する人工炭酸泉浴剤の使用症例
症例は51歳、女性、1970年に糖尿病と診断され、1990年4月より糖尿病性腎症を原疾患として透析が導入された。
2001年4月より左下肢第1指の深爪と第5指の靴擦れの後、変色と潰瘍形成を認めた。閉塞性動脈硬化症(ASO)の診断のもと各種処置とともにプロスタグランジン製剤の投与を行うも完治しなかった。
そこで、人工炭酸泉浴剤を併用した。その結果、人工炭酸泉浴剤使用前後において、「疼痛」「冷感」「しびれ感」が改善し、2001年4月20日の左下肢のABI(抹消神経障害の指標)は測定不能であったものが、同年11月7日には0.41と改善した。
(2)上肢病変に対する人工炭酸泉浴剤の使用症例
症例は55歳、女性、1982年に慢性糸球体腎炎を原疾患とする慢性腎不全と診断され透析導入となった。2001年11月頃より強度の左肩痛が出現し、臨床症状は"透析中、穿刺針の入っている間だけ痛く、透析終了とともに軽快する"というものであった。各種治療を試みるも改善せず、2002年7月8日より左上肢の血管痛に対して人工炭酸泉浴を15分間施行した。具体的には、水温37℃の水1.25Lに人工炭酸泉浴剤9.37g溶解して使用した。その後これを約2ヶ月間継続治療した。その結果、「冷感」「しびれ感」に対しては変化が認められなかったものの、「疼痛」に対しては改善が認められた。
以上の人工炭酸泉は、水温34℃以上(35~37℃が適温)で高濃度即ち700~800ppm以上の炭酸ガス濃度を有するものでなければ効果が得られにくいと言われています。その効果としては次のようなことが挙げられます。
①炭酸泉に浸すと、炭酸ガスが体内に吸収され、血管が拡張し血液の流れが円滑になる。
②炭酸泉には温水と血液間の熱交換率が向上し、皮膚・軟部皮下組織の血流改善効果がある。
③炭酸泉は人体のpHに近い弱酸性なので、肌に優しく、アストリンゼン効果により肌をすべすべにする効果がある。
④炭酸泉は筋肉に蓄積した疲労物質を排出したり、血行促進により皮膚創傷を改善する効果がある。
人工炭酸泉浴剤使用による効果は、現時点統計学的には有意差は認められていませんが、疼痛(特に血管痛)等の自覚症状が明らかに改善したことは注目すべき効果と思われます。また、いわゆる人工炭酸泉浴療法は、潰瘍や壊疽等の足病変に対しても改善効果が得られるとの報告もあります。今後、人工炭酸泉浴時の水温は何℃が最適か、さらに足浴時間等についても、症例数を増やして詳細な検討が必要です。
 尚、家庭でできる具体的な人工炭酸泉足浴の方法をあるドクターに教えてもらいましたので、その方法について紹介しておきます。
 透析医療施設では、人工炭酸泉を作る装置を購入して、それで炭酸泉浴を行っているのですが、この機械は比較的高価ですから、もちろん家庭で買うわけにはいきません。
 そこで人工炭酸泉浴剤使用ということになるのですが、最も簡単に手に入る花王の入浴剤「バブ」でいいんだそうです。
 これは、普通1錠をお風呂に入れるのですが、それでは炭酸の濃度が十分に大きくなりません。両足が入るくらいの底の面積が大きめのバケツに、足が浸るくらいの水量(約10L)で、「バブ」を1錠から2錠入れれば、十分な炭酸の濃度になります。
 注意が必要なのは、お風呂のような温度では高すぎるということです。お風呂はぬるめでも40度くらいになっていますが、この温度では炭酸がガスになってしまって、抜けてしまうので、できれば温度計を使って、水温を測って37度くらいの方が良く、適温だそうです。足を入れるとずいぶん冷たく感じるかも知れませんが、炭酸の濃度が十分に大きくなっていれば、5~10分間も足をつけておくと、真っ赤になるくらい血行がよくなっていることが実感できるはずです。(とにかく、あたたかなお湯は使用しないのがポイントです。)
 私も、現在毎日朝晩2回、1回につき20分間、湯量10L、湯温37℃、「バブ」1錠使用(溶かしきってから)を基本に実行しています。この結果・効果は後日このコーナーで改めて報告させて頂きます。
 ただ、この人工炭酸泉足浴