【1】わが国の慢性透析療法の現況(2008・12・31現在)
      <2009・6 「日本透析医学会」発表>


     ①施設数  4,072施設
                (22施設増・0.5%増<前年比以下同じ>)
      ②設備   ペーシェントステーション  111,690
                          (3,120台増・2.9%増③能力   同時透析            110,360
                          (2,906人増・2.7%増)
              最大収容能力         373,527人
                         (9,376人増・2.6%増④慢性透析患者数             282,622人7,503人増)
                                2.7%増)
            昼  間          230,891人(全体の81.7%)
            夜  間            42,385(全体の15.0%)
            在宅透析               194人(全体の0.1%)
            腹膜透析             9,157人(全体の3.2%)
              導入患者数         37,671人
                           762人増・2.1%増)
              死亡患者数         26,901人
                             (1,664人増・6.6%増)      
         導入平均年齢        67.2歳0.43歳増)
           患者平均年齢        65.3歳0.46歳増)
      ⑤透析年数別患者数
           (透析年数)       (男性) (女性)      (計)
        5年未満            85,659   47,527   133,186(49.0%)
        5年以上10年未満        41,777   26,371      68,148(25.1%)
       10年以上15年未満        19,669   13,833   33,502(12.3%)
       15年以上20年未満        9,538    7,622     17,160(6.3%)
       20年以上25年未満        5,274    4,476       9,750(3.6%)
       25年以上             5,539    4,428       9,967(3.7%)

     ⑥人口100万人対比         2,213.4人60.2人増)
                       <国民451.8人に一人>
    ⑦最長透析歴             40年8カ月 

   ⑧導入患者の原疾患(HDについて)
       1.糖尿病性腎症   16,126人(43.2%
       2.慢性糸球体腎炎  8,602人(23.0%
       3.腎硬化症     3,936人(10.5%
  

【2】「腎カードカルテ」⇒「腎Webカルテ」について
 平成15年3月から、わが腎クリニックにおいては、透析患者一人ごとの透析情報を記録した「腎カードカルテ」が発行・運用されることになりましたので、このカードの特徴・記録内容・問題点(私見)等について、紹介しておきましょう。

(1)特徴
 ①ほとんどのパソコンで内容を確認できる。
 ②カード型(名刺サイズ)なので、常時携行でき緊急時にも安心である。
 ③約8年分の検査データを1枚に記録できる。
 ④最近の検査結果10回分の変化をグラフで表示できる。
 ⑤自分の健康管理(自己管理)がパソコンで可能になる。
 ⑥他の医療機関でも透析情報を確認できる。
 ⑦パソコン画面を使った診療説明が近い将来可能になる。

(2)記録内容
 ①通院施設
 ②血液型
 ③本人連絡先
 ④緊急連絡先
 ⑤保険情報
 ⑥病歴情報
 ⑦透析条件
 ⑧シャント情報
 ⑨循環器情報
 ⑩検査結果(推移グラフ含む)
 ⑪投薬情報
 ⑫グループ施設案内
(3)問題点(私見)
本「腎カードカルテ」の発行・運用そのものは大賛成ですが、あくまで透析患者の一人としてこのカードを仔細に吟味してみると、まだ多くの問題点や疑問点が散見されますので、気のついた点私見ながら問題提起をしておきます。
①人工透析患者高齢化の中で、パソコンを操作できない人が大半ではないかと思われるので、その人達にとっては無用の長物である。
(中には病院・クリニックに預けっぱなしの人も・・・)
②ノート型パソコンは問題ないが、ディスクトップ型パソコンだと、本体が縦型に置くようになっているので、このままでは落ちてしまいしかたなく本体を平らに寝かさないとディスクドライブにきちんと入らない。(汎用性の欠如)
③データの更新・変更が毎月1回となっているが、その方法について具体的ルーチンが徹底されておらず不十分である。
④各種検査結果の最新情報が一定期間(回収されている間)インプットされないので、緊急時に携行していなかったり、携行していても古い情報のまま緊急時に備えることになってしまう。
(各種検査結果の最新情報等自分で「書き込み」できないものか)
⑤パソコンさえあれば誰でも見れるため、保険情報等個人情報のセキュリティ面に疑問を持たざるを得ない。
(緊急時との関連で要工夫)
⑥実際に実施している血液検査項目がすべて入っていない。
(半分位)
⑦透析患者として知りたい肝心の「PCR」「透析量(Kt/V)」等が血液検査項目に入っていない。
⑧すべて透析前の血液検査数値のみで透析後の採血による血液検査数値が一つも入っていない。
⑨血液検査数値の基準値が透析患者用の数値になっているが、普通の健康な人の基準値と混同する。(透析患者の場合はあるべき数値は目標値としたら如何)
⑩「心胸比」「心電図所見」についても、過去からのトレンドが欲しい。
せっかくIT時代にマッチしたこの「腎カードカルテ」システムをより良くするために、以上の諸点等について、医療側の一層の改善を望むところです。
 尚、上記「腎カードカルテ」に替わり、平成19年2月23日より、インターネット経由で最新の透析情報がいつでも・どこでも24時間365日確認できるという謳い文句で「腎Webカルテ」サービスがスタートしました。(それまでの「腎カードカルテ」は現在も生きています。)この「腎Webカルテ」の特長は次の通りです。
(1)インターネット環境だけで閲覧できる。(IE6.0に最適化)
(2)ID・パスワード(いずれもそれぞれの腎クリニックにて配布)・SSL(暗号化)でセキュリティ
   対策は万全。
(3)紛失の心配がない。
(4)常に最新の情報が更新される。(検査後1週間以内に更新)
   〔「検査結果情報<28項目>」「透析情報<透析条件・バスキュラーアクセス情報>」「病
   歴情報」「投薬情報」「個人基本情報<ID番号・氏名・住所・電話番号・携帯番号>」〕
(5)検査情報は過去1年分を表示。(データは永久保存)
(6)最近10回分の検査経過をグラフ表示できる。
 以上の「腎Webカルテ」については、IT化の観点からも画期的ではあるもののそれだけに「検査結果情報拡大(検査した項目すべて表示)」や「検査情報更新のスピードアップ」「すべての情報にわたる正確性・最新性アップ」等の改善点や要望事項がありますので、今後一透析患者としては、さらに一層この「腎Webカルテ」をより良くするため、これらを整理してまとめて提言したいと考えております。

】家庭透析について家庭用透析装置
 人工透析患者が自宅で使え、従来より身体への負担も軽くできる日本初の人工透析装置を「帝人」が開発し、2002年12月の厚生労働省への承認申請を経て、当時2004年に事業を開始する計画の新聞報道が「朝日新聞」でされましたので、そのあらましを紹介しておきましょう。
<2002・12・24付朝日新聞より>
・厚生労働省から承認されれば、透析患者の生活の質(QOL)が向上し、年間の国民医療費の30分の1にあたる約1兆円といわれる透析治療費 の抑制につながるとみられる。
・開発された装置は、血液中から老廃物を取り除く透析や水の処理に必要な機器等を小型冷蔵庫大にまとめた在宅用の血液透析装置で、「帝人」が米国の医療機器ベンチャー(アクシス社<イリノイ州>)と共同で開発し、既に2002年春、米食品医薬品局(FDA)の承認を得た。
・一般的に透析患者は、週に3回程度医療機関に出向き、1回あたり4、5時間かけて透析を受けているが、こうした透析だと、体内にたまった数日分の老廃物を一度に濾過するため、急激な血圧低下で心臓に過大な負荷がかかることなどによる合併症が起きやすいと指摘されている。
・身体への負担を軽くするためには毎日、透析をすることが望ましいこともあり、1998年4月から透析患者自身が自宅で行なう在宅透析に公的医療保険が認められたが、そのときは在宅用装置がなく場所をとる医療機関向けの装置を設置するしか方法がなかったことに加え1台あたりの患者数を多くして収入を増やしたいと考える医療機関も多かったため、自宅で透析をする患者はほとんどいなかった。
・人工透析にかかわる患者の自己負担は、国の特定疾病療養制度や自治体の公費助成によりほぼゼロに抑えられている。この在宅用血液透析装置が厚生労働省から承認されると、在宅透析が適当と主治医が判断し、患者が同意すれば、「帝人」とリース契約を結んだ医療機関が患者に無償で貸与する予定である。在宅治療は、医療機関での治療と比べ診療報酬が低めに設定されていることや毎日透析することで合併症が少なくなると予想されるため、医療費の低減が見込める。
 「帝人」は、透析患者の自己管理が前提となる在宅でも、医療機関並みの治療や助言が受けられる体制を作ることにしている。

 以上の新聞記事の内容通り在宅透析に期待がかかりますが、実際問題として、「1回あたりの時間はどの位になるのだろか」「毎日透析しなければいけないのだろうか」「プライミングは患者自身でできるのだろうか」「穿刺はどうするのだろう」「透析中に血圧が下がったら・・・」「血液検査等各種検査はどうするのだろう」「透析液管理はどうするのだろう」「何か事故が起きたときどうすればいいのだろう」「夜間睡眠中に透析可能だろうか」「ダイアライザー等透析の都度必要なものの供給面はどうなるのだろう」「食事・水分管理は楽になるのだろうか」など、透析患者にしてみると、まだまだ疑問・不安・期待が入り混じっていますが、基本的には私もこの在宅用血液透析装置を是非使ってみたいという気持ちは持っています。
 尚、参考までに家庭透析(在宅透析)の訓練・管理透析施設を全腎協の「透析をはじめる人のためのガイドブック」(改訂第9版)より次に引用しておきます。
 ・「岩見沢クリニック」
  〒068-0028
  北海道岩見沢市8条西10-8-1
  TEL 0126-24-8811
 ・「札幌北クリニック」
  〒001-0018
  北海道札幌市北区北18条西2-21
  TEL 011-747-7157
 ・「矢吹病院」
  〒990-0043
  山形県山形市元町1-6-17
  TEL 023-641-7330
 ・「奥田クリニック」
  〒321-0964
  栃木県宇都宮市駅前通り2-2ー21
  TEL 028-635-0310
 ・「埼玉医科大学病院」
  〒350-0495
  埼玉県入間郡毛呂山町毛呂本郷38
  TEL 049-276-1612 
 ・「阿佐谷すずき診療所」
  〒166-0004
  東京都杉並区阿佐谷南2-14ー3
  阿佐谷南2丁目住宅公団ビル1F
  TEL 03-5377-1512
 ・「信楽園病院」
  〒950-2087
  新潟県新潟市西有明町1-27
  TEL 025-267-1251
 ・「徳田病院」
  〒230-0061
  神奈川県横浜市鶴見区佃野町29-3
  TEL 045-571-3933
 ・「神奈川県立汐見台病院」
  〒235-0022
  神奈川県横浜市磯子区汐見台1-6-5
  TEL 045-761-3581
 ・「東海大学医学部腎・血液センター」
  〒259-1193
  神奈川県伊勢原市展望台
  TEL 0463-93-1121
 ・「多胡透析・泌尿器クリニック」
  〒409-3864
  山梨県中巨摩郡昭和町押越789
  TEL 0552-75-6550
 ・「サンシャインM&Dクリニック」
  〒501-0236
  岐阜県瑞穂市本田174-1
  TEL 058-329-5522
 ・「静岡県立総合病院」
  〒420-0881
  静岡県静岡市北安東4-27-1
  TEL 054-247-6111
 ・「新生会第一病院」
  〒467-8633
  愛知県名古屋市瑞穂区玉水町1-3-2
  TEL 052-832-8411
 ・「名古屋大学大幸医療センター」
  〒461-0047
  愛知県名古屋市東区大幸南1-1-20
  TEL 052-719-1981
 ・「富田クリニック」
  〒525-0025
  滋賀県草津市西渋川1-3ー22
  TEL 077-566-0303
 ・「芦屋坂井瑠実クリニック」
  〒689-0054
  兵庫県芦屋市浜芦屋町10-13
  TEL 0797-31-9911
 ・「香川県立中央病院」
  〒760-8557
  香川県高松市番町5-4-16
  TEL 0878-35-2222
 ・「高知高須病院」
  〒781-5103
  高知県高知市大津乙2705-1
  TEL 088-878-3377
 ・「田川市立病院」
  〒825-8567
  福岡県田川市大字糒1700-2
  TEL 0947-44-2100

】「透析患者の栄養評価」について
=自分で自分自身の栄養評価をしてみよう=
透析患者なら誰しも、日常の食生活の中で、「きちんと適正に栄養が摂れているだろうか、過剰に摂っていないだろうか」そして「その結果産生される老廃物は透析によって十分除去されているだろうか」など、とっても気になると思いますので、ここでインターネット検索ページより、自分で自分自身の栄養評価等が計算できるページを管理者の許可を得て紹介しておきましょう。

(1)何がわかるのか
①TAC BUN(一週間を平均したBUN)
②PCR
(「PCR」の解説は「人工透析と食事」コーナーの【2】食事管理(2)たんぱく質摂取量の項目参照)
③Kt/V
(「Kt/V」の解説は「私の人工透析環境」コーナーの【2】ダイアライザー(透析器)の項目参照)
④ナトリウム摂取量
⑤カリウム摂取量
⑥エネルギー摂取量
(2)必要項目・数値は何か
①性別
②ドライウエイト(適正体重)
③1回あたりの透析時間
④連続する透析日2日の採血による血液検査数値と体重(月水金透析の場合月曜日と水曜日、火木土透析の場合火曜日と木曜日)
・月曜日(又は火曜日)の検査結果
 透析前 BUN 体重
 透析後 BUN ナトリウム(Na)カリウム(K)体重
・水曜日(又は木曜日)の検査結果
 透析前 BUN ナトリウム(Na)カリウム(K)体重
 <水曜日(又は木曜日)の検査項目(透析前)にNaとKが入っていないと上記(1)のナトリウム・カリウム・エネルギー摂取量は計算されません。その他の項目は計算されます。>
それでは、下記インターネットのページをクリックして、「透析患者の栄養評価」画面を開き、上記項目・数値を入力して計算してみましょう。
   
http://sei-sei.st.wakwak.ne.jp:8080/Anesthesiology/HD_support/hd_nutrition.html
<(医)清生会 谷口病院HPより>

 尚、このページの右下の(ーお読み下さいー)をクリックして開いたページに目を通しておいて下さい。
 それから、病院・クリニックサイドから「PCR」「Kt/V」等が知らされている場合(知らされてなければどんどん聴きましょう)は、本計算結果数値と比較されてみて下さい。違いがあれば、主治医の先生とその理由等についてヤリトリしてみて下さい。

】新「高リン血症治療剤」について
 ご承知の通り私達透析患者は、リンの排泄障害により高リン血症をきたしやすく、血中のリン濃度を低下させるために、透析によるリン除去及び食事療法によるリン摂取制限に加え、日本国内では主に「カルタン錠」等の炭酸カルシウム製剤がリン結合剤として使用されています。しかしながら、炭酸カルシウム製剤は、純粋にリンを吸着するための薬ではなく、本来カルシウムを補給する薬として用いられていたものです。従って、透析患者によってはどうしても血中カルシウムがあがり過ぎるという欠点がありました。
かねてより、中外製薬(株)とキリンビール(株)が共同で開発してきた『カルシウムを含まない新「高リン血症治療剤(リン結合性ポリマー)」』が、日本でも2001年12月に厚生労働省に対して承認申請され、2003年1月31日に同省から健康保険適用の薬として承認されました。
そこで、私達透析患者にとっていわば食生活の改善(=牛乳・小魚等のカルシウム食品がこれまでより摂れるなど=)が図れ、より長生きできる可能性が高くなったと言っても過言ではない待望のこの新「高リン血症治療剤」を具体的に紹介しておきましょう。
①商品名(2つとも同じ薬剤)
 「レナジェル錠250mg」(中外製薬<株>製造・販売)
 「フォスブロック錠250mg」(キリンビール<株>製造・販売)
②成分名
 塩酸セベラマー
③効能・効果
 透析中の慢性腎不全患者における高リン血症の改善と予防
④薬価
 「レナジェル錠250mg」「フォスブロック錠250mg」とも1錠「35.60円」
⑤発売日
 2003年6月26日(木)
 尚、これは主治医の先生に確認したわけではありませんが、もともと血中カルシウムが低い透析患者の場合は、従来の「カルタン錠」等の炭酸カルシウム製剤を引き続き使うか、あるいはこの新薬剤と併用ということも考えられますので、いずれにしても、主治医の先生の指示に従って下さい。
 ただ、この薬は、1日に10~30錠程度のたくさんの錠数を服用しなければならないという難点があり、さらに副作用として便秘の増悪が透析患者の約4割に認められるので、今まで以上上手に下剤や整腸剤を用いて便秘のコントロールすることが大切です。
尚、「レナジェル」(「フォスブロック」も同様)は、もともと高コレステロール血症治療剤 「コレバイン」のように 高脂血症の治療薬として開発していたものが、リンを下げることが判明して、高リン血症の治療薬に変更されたものです。
コレステロールが体内で生じる過程で胆汁酸を経由しますが、これはその胆汁酸を吸着することでコレステロールを下げます。その結果、悪玉コレステロール(LDL)を下げ、善玉コレステロール(HDL)を増加させる働きもあるのです。

最後に、改めて「レナジェル錠」服用にあたっての注意事項を付記しておきます。
   <服用の仕方>
① できるだけ食事の直前に服用すること
② 飲み忘れても食事中や食後すぐに服用すること、それ以外の場合は服用しないで次の食事の直前に服用すること
③ 2回分を1度に服用しないこと
④ 間食をするときは主治医の先生と相談すること
⑤ 錠剤を口に入れたら、噛まずに速やかに飲み込むこと、またくだいて服用することはやめること(1回分を1口で飲みきれないときは何口かに分けて服用すること)
<副作用>
 腹痛・腹部膨満感(ゲップがでる)・便秘等
 (腸管穿孔、腸閉塞があらわれることがあるので、観察を十分に行うこと。これらの病態を疑わせる高度の便秘、持続する腹痛、嘔吐等の異常が認められた場合には、投与を中止し、触診、画像診断等を実施し、適切な処置を行うこと)

<次のような人は事前に主治医の先生に要相談>
① 以前に薬を飲んで発疹・痒みなどが出たことのある人
② 激しい腹痛・おなかが張る感じ・吐き気・嘔吐等の症状がある人
③ 便秘や痔のある人
④ 胃潰瘍や十二指腸潰瘍等にかかっている人又は以前にこれらの病気にかっかたことのある人
⑤ 医師から胃腸の働きが悪いと言われている人
⑥ 鼻血が出るなど出血しやすい人、あおあざができて消えない人、血が止まりにくい人
⑦ 胃や腸の手術をしたことがある人、食べ物や飲み物が飲み込みにくい人

】内部濾過促進型ダイアライザーについて
 「血液透析(HD」と「血液濾過(HF)」のそれぞれの長所を取り入れた「血液透析濾過(HDF)」と同じような効果が得られるダイアライザーを「内部濾過促進型ダイアライザー」と言います。
 この「内部濾過促進型ダイアライザー」は、まだ健康保険適用が認められていないなどのため現在本格的な実用段階にはないと思いますが、今後に期待するところ大ですので、このコーナーで簡単に紹介しておきましょう。
 (1)原理
  血液透析が血液中から半ば無理矢理老廃物を除去するのに対し、血液濾過は身体に無理をかけないように「濾過」という方法で老廃物を除去しています。そのため、濾過した分必要量を身体に補充しなければなりませんので、そのコストがかかりそう簡単にはできません。
  そこで、通常の透析を行なっていても、ダイアライザーに工夫を加えることによって、濾過の作用を持たせることができないだろうかという考え方が出てきました。
具体的には、ある部分では濾過として血液側から透析液側に物質を移動させ、ある部分では透析液側から血液側に物質を移動させるという作用です。こうした透析液側から血液側への物質の移動を「逆濾過」と言います。
この逆濾過と通常の濾過を合わせて「内部濾過」と言い、この機能を持ったダイアライザーが「内部濾過促進型ダイアライザー」です。
では、「内部濾過」をどうやって促進させるのでしょうか。その方法については二つの考え方がありますが、簡単な方を紹介しますと、ダイアライザーの中に入っている血液が通るストロー(中空糸)を細くしてダイアライザーへの充填率を高める方法です。即ち、透析膜面積が同じでも、中空糸の内径が小さくてダイアライザーへの充填率が高いダイアライザーの方が逆濾過が起こりやすくなります。
従って、現在のダイアライザーを改良しただけで逆濾過を促進させることができるので、誰もが「HDF」に近い透析を受けられるのではないかと期待されています。
 (2)効果(有効性)
 日本臨床工学技士会の第10回学術大会において発表された研究結果で「内部濾過促進型ダイアライザー」の実際の効果をみてみましょう。
 研究対象者の具体的な透析環境・条件は省略しますが、その結果は、対象者の透析膜面積が1.5㎡とあまり大きくないにも拘らず、小分子物質のみならず低分子蛋白質であるβ2―マイクログロブリンについても大きな除去率を示し、「内部濾過促進型ダイアライザー」が高い除去性能を持つことが確かめられました。
 結論として整理すれば以下の3点が確認されました。
 ①「内部濾過促進型ダイアライザー」は、特別な機器を必要とせず、通常の血液透析と同様の手法で施行できた。
 ②「内部濾過促進型ダイアライザー」は、低分子蛋白質の高い溶質除去率を持つことが確認できた。
 ③「内部濾過促進型ダイアライザー」を使用しても、蛋白漏出による血圧低下や逆濾過を促進させたためのエンドトキシン(細菌が出す毒素)による発熱等の副作用は認められなかった。
 (3)問題点
 逆濾過型のダイアライザーを使用するためには、透析液を身体の中に入れてしまうので、透析液がきれいであることが必須条件です。
即ち、身体内に入れることを想定したHDFの補充液の場合は、その組成自体透析液とほぼ同一ですが、補充液の方はしっかりと減菌されているのに対し、透析液はその原液が減菌処理されていないという問題点があります。
従って、普通に「内部濾過促進型ダイアライザー」を臨床使用するとなると、エンドトキシン(細菌が出す毒素)カットフィルターを2重に組み込むなど、経済性の面も含めエンドトキシンを徹底的に排除する透析液管理が誰にでも施せる透析環境が必須です。

】ドライウエイト(適正体重)の新判定手法について
 ドライウエイト(適正体重)を判定する手がかり・手法として、今は血圧・心胸比・HANP(血液検査データの一つ)・自覚症状(体調)等がありますが、これらに加え最近体内の水分量を測定し、それをドライウエイト(適正体重)を決める指標の一つにしようとする動きがありますので、このコーナーで簡単に紹介しておきましょう。
 この体内水分量は、ちょうど体脂肪計と同じ原理を応用して計測します。実際には、体重計のようなものの上に乗り、手に電極を握った状態で1~2分程度立っているだけで測定できるようです。握るタイプの体脂肪計と体重計タイプの体脂肪計を一緒にしたようなイメージの機器だと思います。
これで体内の水分量が計算されて結果か表示されます。この結果も含めてドライウエイト(適正体重)の判定に役立てようとするものです。ただ、これも万能ではありませんので、判定の指標が一つ増えたということで、今後より正確なドライウエイト(適正体重)の決定ができることへつながっていくと思います。

】長期生命維持の透析条件について   
 長期生命維持を可能とする透析条件をまとめてみました。当然のことながら、適正な食事・水分・薬剤管理といった自己管理を徹底して行ない、各種検査データ等の目標値をクリアーすることが大前提であることは言うまでもありません。その上で、診療報酬をベースにした透析施設経営維持等の問題もあり現時点すべてを実現することは極めて困難ではありますが、今現在透析医療界で標榜されている長期生命維持の透析条件について列挙すれば次の通りです。
(1)長時間透析(5時間以上)
「日本透析医学会」の統計調査委員会のデータ<(2)以降同じ>によれば、週3回透析の場合、1回透析時間が4時間の1年間の死亡危険度を「1.000」とすると、
①5時間以上の1年間の死亡危険度は「0.78」
②4時間未満の1年間の死亡危険度は「1.32」
この差は小さいようですが、年数が経てば経つほどその差は著しいものとなります。
<長時間透析の具体的成果>
①降圧剤を使用せずに血圧改善
②栄養状態の改善(感染症予防のための免疫力強化)
③心機能の改善 
④死亡率の大幅な減少
⑤皮膚の掻痒感や色素沈着、口臭の改善
⑥生活の質(QOL)の向上
(運動力・思考力・行動力の活性、食欲増進<制限緩和>、体調好転等)

(2)透析量(Kt/V)の増大
 透析量(Kt/V)の値が「1.000」を基準とすると、この値が増えるほど死亡危険度は低下し、この値が「1.6以上」では1年間の死亡危険度は、「0.83」まで低下します。
<この値を上げる最大の方法は上記(1)の長時間透析です。>
(3)クレアチニン産生速度の増大
 同姓同年齢の健常人のクレアチニンの産生速度の平均値に対する速度を百分率で表した指標がクレアチニン産生速度ですが、この値が大きいほど死亡頻度は低下します。このクレアチニンは筋肉によって作られるため、運動して筋肉量を増やせば死亡の頻度は低下することを意味しています。(残念ながらわが腎クリニックではこの数値は使っていません。)
(4)中2日の週初めの透析前体重増加4%以内
 この条件を満たすためには、塩分や水分を制限することが基本ですが、十分な透析を行い体液中の尿素等を低下させておくと喉の渇きが抑えられて飲水量が少なくて済みます。(この点からも長時間透析は重要です。)
(5)血清アルブミン濃度の高水準維持
 十分な栄養を摂って、血清アルブミン濃度を常に「4.0g/dl以上」に保つことが必要です。
(6)ヘマトクリット値の高水準維持
 ヘマトクリット値を常に「35%程度」に保つことが必要です。
(7)処方透析の実現
 それぞれの個々の状態に適合した透析液の最適化(処方透析)も必要です。
(8)生体適合性の良いダイアライザーの選択
 透析開始直後の白血球減少の少ないなど生体適合が良 く透析効率・性能の高いダイアライザー(次世代の「内部濾過促進型ダイアライザー」含め)を選択することです。
その他、「オンラインHDF」等透析方法の変更も長期生命維持には効果があると言われています。

】「オンラインHDF」と「プッシュ&プルHDF」について 
まず、「HDF」について簡単に説明をしておきます。
通常の血液透析(HD)では、尿毒素を拡散の原理によって除去します。
即ち、ダイアライザー内は半透膜の両側に毒素の溶けている血液と毒素の溶けていない透析液が流れているわけですが、この半透膜の孔(あな)の大きさが毒素の大きさよりも大きければ、毒素は透析液の方に移動する原理、これが「拡散」です。
ところが、この「拡散の原理」がはたらくのは、孔の大きさが毒素の大きさよりもずっと大きな場合に限られるのです。例えば、あるダイアライザーが分子量が約1万2千のβ2-MGが除去されるギリギリの大きさの孔を持っているとしましょう。この時に、分子量が60の尿素窒素(BUN)は拡散で除去されますが、β2-MGは除去されにくいか、あるいはほとんど除去されないのです。
では、どうすればよいのでしょうか。その答の一つは、孔の大きさをもっと大きくすることです。しかしながら、あまり孔の大きさを大きくしてしまうと、毒素以外の必要なもの、例えばアルブミンという重要なタンパク質までもが除去されてしまいます。そこで、もう一つの答が、たくさん除水をしてしまうことです。
「拡散」は、除水が全く行われなくても起こります。水の流れがなくても、分子量の小さな毒素は、透析膜を通って透析液の方に移動してくれるのです。実際の血液透析では除水も行われていますので、この時、水分が血液側から透析液側に流れているのですが、この流れに乗って、分子量の大きな毒素が移動をします。従って、分子量の大きなβ2-MGのような毒素を除去するためには、1回に15L(リットル)とか20Lとかといった大量除水をすればいいわけです。ただ除水をするだけでは、脱水になってしまいますから、大量の補液も同時に行います。例えば、透析で2kgの除水をしたい時には、15Lの補液をして、17Lの除水を行えば、除水もできて、しかも分子量の大きな毒素も除去できることになるのです。これが「HDF」の原理です。
「HDF」を行う時に、重要なことは補液量と除水量が正確に設定通りに行われることです。もし、設定通りに補液されなければ脱水になりますし、除水不足になった場合は大量の水分が体内に残ってしまいます。いずれの場合にも、生命が危険にさらされることになります。
そこで、「HDF」では専用の機械が使用されます。この機械が高価で、一般の透析用の機械のほぼ倍の値段がします。補液用の液も専用のものが売られていますので、これを使用します。
そうなりますと、問題となってくるのは、医療費の問題であり、「HDF」は血液透析よりもお金がかかる治療になります。そのため、健康保険でも適応が限られていて、透析アミロイドーシスや通常の血液透析には耐えられない心機能低下などが健康保険の適応となっています。
このように、「HDF」は慢性腎不全の治療としては血液透析よりもメリットの多い治療なのです。そこで、「HDF」を普及させるために、あまりお金をかけずにこの治療を行うことを目的に考案されたのが、「オンラインHDF」と「プッシュ&プルHDF」です。
「オンラインHDF」では、補液は専用のものを用いずに、透析液自体を補液することになります。透析液はほぼ使い捨てですし、「HDF」用の補液に比べたらずっと安価です。
除水量と補液量の厳密な制御が必要なことは、通常の「HDF(これを最近はオフラインHDFと呼んだりします。)」と同じです。透析液を15Lから30Lあるいはこの倍以上も体内に入れるのですから、重要なことは透析液がきれいなことです。ご承知の通り、通常透析液は「エンドトキシン」という物質で汚染されています。血液透析で、透析液から血液の中に流れ込むエンドトキシンはごく微量であると考えられていますが、それでも、十分に透析液をきれいにすることが必要であるというのが最近の考え方です。
透析液をきれいにするためには、エンドトキシンフィルターという機器を取り付けて、かつきちんとメンテナンスすることが必要です。しかし、残念ながら、透析液を十分に清浄化している施設はまだまだ限られています。
法的な規制がなく、エンドトキシンフィルターを装着することが義務づけられていないことから、エンドトキシンフィルターをつけてもその分のお金が医療施設の持ち出しになってしまうからです。
さて、この「オンラインHDF」ですが、「オンラインHDF」では、透析液が直接大量に血液内に入ってきます。従って、血液透析の場合の透析液の清浄化よりも、ずっときれいにしておくことが必要です。実はこの透析液の清浄化がなかなか難しく、「オンラインHDF」のネックになる重大なポイントの一つです。
一方、「プッシュ&プルHDF」はどうでしょうか。
この方法は、補液をダイアライザーを通じて行う方法です。即ち、除水と除水の反対(つまり、透析液側から血液側に水分が入る)とを交互に行う方法です。この方法を用いると、やはり30Lくらい補液をしたのと同等の治療効果が得られます。この「プッシュ&プルHDF」でも、補液は透析液を用いるわけですから、「オンラインHDF」の時と同じく、透析液の清浄化は必須条件です。しかしながら、「オンラインHDF」と違って、透析液が血液に入ってくる時にダイアライザーを通過しますから、ここでエンドトキシンが多少除去されるというメリットがあります。
従って、「オンラインHDF」に比べて、「プッシュ&プルHDF」の方がエンドトキシンが体内に大量に入ってきてしまうリスクは小さいと考えてよいかと思います。だからといって、清浄化しなくてもよいと言うことにはもちろんなりません。
要するに、「オンラインHDF」にしても「プッシュ&プルHDF」にしても、いかにして透析液をきれいにするのかが極めて重要なことなのです。
因みに、この二通りの方法は、現時点では保険では「HDF」として認められていません。現下の厳しい経済・財政状況の中で、この治療法が「HDF」として認められて点数がつくかどうかは不明ですが、普及型の「HDF」としての可能性は十分にあると考えられます。

10】糖尿病患者のフットケアについて
  足に流れている血液が十分に抹消まで行かなくなって起こる糖尿病患者の足の"壊疽"を防ぐためには、日頃の血糖コントロールはもちろんですが、加えて次のような足の管理(フットケア)が必要です。
尚、"壊疽"による足など四肢の一部や乳房などを切断することを「隠語」で「アンプタ」と言います。(もともと切断を意味するドイツ語)
① 外傷を防ぐために素足で歩くことは止める。
(出血の有無がすぐわかる白い靴下着用)
② 窮屈な靴下(ゴムの強い靴下は要注意、女子学生のルーズソックスを見習うこと)、窮屈な足袋、窮屈な靴をはかない。(サンダルは指先を怪我する危険性があるので避けること)
③ 部分的な圧迫を防止するために特殊な靴を注文する。
 (病院の整形外科に専属の装具屋さんがいるので相談するとよい)
④ つめを切るときには、まず石鹸で足全体をよく洗い、ヒビテン又はイ
ソジンで十分に消毒してから切るようにする。つめ切りは自分専属のものを用意しておき、また使う前には消毒用アルコールに侵すようにする。深爪はしないで、やすりで角をよくおとす。
⑤ マメは自分で処置しないようにする。
⑥ 汗をかきやすい人は、足に傷がなければ石鹸を使用して頻繁に洗う。もし、傷があれば微温で洗う。熱い湯は、感覚が鈍っているので絶対に使用しないようにする。汗取りのパウダーを使用する場合には、頻繁に洗い落とす。
⑦ 皮膚が乾燥している場合には、油性のクリームを使用する。この場合にも、頻繁に洗い落とすことが重要である。
⑧ 毎日、必ず足をよく洗い、足の指の間を石鹸できれいに洗う。足の指の裏側、足さきから、かかと、足の裏まで観察する。
⑨ 足首から、先端部の運動を毎日行なう。(血行をよくし、流れの悪くなった血管のバイパスを発達させるのに役立つ)
 尚、参考までに「ヒヤリ・フット指数(HIYARI FOOT INDEX<HFT>)」というのを紹介しておきましょう。
 ・HIYARI FOOT INDEX(HFT)=年齢+透析年数+糖尿病の有無(あれば+10、なければ0)
この式に点数を入れ、「HFT>75」の人は、足病変のハイリスク群というわけです。「HFT>75」の人は、特に足をチェックしましょう。足の壊疽を起こす危険性が高くなるからです。それから、フットケアの一環として、この「その他インフォメーション」コンテンツの【18】人工炭酸泉浴剤を使用した足浴も参考にされて下さい。
 尚、全国的に最近はいわゆる「フットケア外来」が増えつつありますが、ここで「日本フットケア学会」認定資格の「フットケア指導士」の役割と受験資格について説明しておきましょう。
〔1〕役割
一般的な足の清潔ケア・保湿や洗浄と靴選びから症状別、リスク別に応じた生活指導までを範疇とする。指導士の業務範囲は各個人が持つ国家資格の範囲に準じる。
〔2〕受験資格
①日本国における医師、看護師、准看護師、理学療法士、臨床検査技士、臨床工学技士、介護福祉士、義肢装具士等、いずれかの国家資格を有していること。(都道府県知事の認める准看護師も含む)
②上記資格取得後3年以上の実務経験を有すること。
③フットケアの実務経験を有すること。
④フットケア指導士認定セミナーを受講していること。
⑤「日本フットケア学会」の会員であること。
最後に、上記「日本フットケア学会」のホームページとその中の「フットケア指導士認定について」というページ(PDFファイル)のそれぞれのURLを次に紹介しておきましょう。
http://footcare.main.jp/
http://footcare.main.jp/shidoshi-nintei.pdf

11】透析患者に多い便秘対策について 
  透析患者には便秘が多く、ある統計によれば、透析患者の40%以上が何らかの便秘を訴えているようです。そこで、透析患者の便秘の原因とその理由、便秘のタイプによる対策及び便秘薬(下剤)の種類について次の通りまとめてみました。

(1)便秘の原因とその理由
便秘の原因 その理由
大腸の運動が弱い 運動不足、原疾患が糖尿病の場合の自律神経障害、動脈硬化、ビタミンB(特にパントテン酸等)不足等
きばれない 運動不足により腹筋が弱くなっている。
繊維の不足

Kと水分制限のために食物繊維の豊富な野菜類や乳製品、豆類、海藻類を充分に摂れない。
(1日の最低必要量10g以上)

飲水制限 摂る水分量を減らさないとむくみ、心不全等になりやすいので、水分が厳しく制限される。
大腸の病気

あまりにも便秘がひどいとき(1週間も出ない・便が細い・下痢と便秘を繰り返す・便に血が混じる・便が黒いなど)の大腸の病気

(腹膜炎・手術による腸の癒着・アミロイドの沈着・大腸癌等)
薬の副作用

P吸着剤(レナジェル・フォスブロック)
K吸着剤(カリメート・アーガメイトゼリー)
コレステロールを下げる薬(コレバイン)等


(2)便秘のタイプによる対策
便秘のタイプ 原因 対策
便が固い・ウサギの糞のような便

・腸から水分がたくさん吸収されてしまう。
・水分を吸収する薬を飲んでいる。(レナジェル・フォスブロック・カリメート・コレバイン等)
・腹筋が弱い、運動不足

・水分の摂り方にメリハリをつける。(制限範囲内で冷たい水100~150mlを一気に朝飲むなど)
・便をやわらかくする薬を処方してもらう。
・便秘体操をする。
・出口付近の便が固くなりすぎたときに下剤を使うと腸に穴が開く危険があるので、先に浣腸や摘便で塊を取り除く。

便の量が少ない

・繊維が少ない。
・食べる量が少ない。

・繊維の多い食事をとる。
・サプリメントで食物繊維を摂る。(主治医の先生や栄養士さんに要相談)
・栄養士さんに相談する

便意を催さない 腸の運動が弱い。 刺激性下剤を用いる。

(3)便秘薬(下剤)の種類
 
便秘薬の働き別種類 特徴 薬の名前

便の出をよくする薬
(刺激性下剤)

大腸の働きを高めて、排便を促す。
通常効き目が出るのが8~10時間後なので就寝前に服用する。
ただ、連用すると次第に効かなくなってしまう(これを耐性と言います。)ことがある。

よく使われるのは漢方薬の「センナ」やその類(「センノシド」)等を用いた薬で、「アローゼン」「プルゼニド」「ヨーデルS」「アジャストA」等がある。(私は「プルゼニド」を服用しています。)
また大黄や甘草を用いた漢方薬も使われる。
以上の下剤は耐性を生じることがあるが、「ラキソべロン」には耐性が少ないようである。
「ラキソべロン」は、液状の下剤で水に滴下して服用する。これには、便をやわらかくする効果もある。

便をやわらかくする薬 透析患者が服用できる薬は残念ながらあまりない。

「D―ソルビトール」は糖類の一種で頻回(2~4回)に服用すると効果的である。
この薬は、よく「カリメート」と一緒に服用されていたが、腹痛や腸に穴が開くなどの重篤な副作用が報告されたことから最近はあまり使われていない。従って、固い便が出口付近にあるときは危険である。
同様に、「モニラック」「ラクツロース」といった薬剤も糖の一種でとても良いが、これらの薬は便秘には保険適用がされない。いずれも、腸から吸収されないので、糖尿病の人も服用できる。

漢方薬 その人の体質により、効果的な薬、逆効果な薬があるので、合った薬を処方してもらう。

「潤腸湯」「麻子仁丸」「大黄甘草湯」「桂枝加芍薬湯」「大建中湯」「小建中湯」「大紫胡湯」「加味逍遥散」等がある。
いずれも医師の処方が必要である。

透析患者が服用しない方が良い薬 身体に溜まる成分を含んでいたり、大量の水分と一緒に服用する必要のある薬剤

「カマ」等マグネシウムを含んだ便秘薬は、マグネシウムが血液中に溜まってしまうので、長期に服用してはいけない。
「バルコーゼ」は、大量の水と服用しなければならないので、飲水量の制限のある患者は服用できない。


<注>
①透析患者の場合、合う薬とそうでない薬がありますので、安易に市販の薬を用いず、必ず主治医の先生に処方してもらいましょう。
②漢方薬を服用する場合の注意点
・漢方薬は、その人の体質によって効くものやかえって悪くしてしまうものがあります。それは、身体を「虚」と「実」という二つのタイプのどちらかであるか診断し、それぞれに合った漢方が処方されます。
・多くの漢方薬に含まれているカリウムはそれほど多くありませんが、多いものもあります。
・漢方薬だからといって副作用がないわけではありません。たくさん飲みすぎれば当然副作用があります。
・多くの漢方薬はぬるいお湯30ml程度に溶かして1日3回毎食後服用します。水分制限のある場合はその範囲内にしましょう。
・必ず医師の診断を受けてからにしましょう。


12】シャントが全身に与える影響について
シャントの局所的な合併症については、本HP「人工透析基礎知識コーナー」のところで説明しましたが、ここでは血流をシャントさせると全身的にいろいろな問題が起きる可能性がありますので、この点について説明しておきます。
血流をシャントさせると心臓に負担がかかります。何故かと言いますと、心臓が血液を送り出すと送り出された血液は抵抗の少ない腕即ちシャントのある腕の方へ流れていき、さらにその中でもシャントに直接つながっている動脈の方にいきます。そうすると、その血管は血液がたくさん流れていきますからどんどん太くなり、その分だけ心臓は余計に仕事をしなければならなくなります。このように、心臓が多量の血液を送り出せば、それだけ空回りする血液が増えるという困った問題が出てきます。
心臓は1分間に5リットル前後の血液を送り出していますが、シャントをしている血液の量は、普通の外シャントで1分間に200~300ml、内シャントで同500ml、さらによく流れているシャントですと1リットル以上にもなります。
それでは一体どの位ならば空回りしていても差し支えないのでしょうか。これは、貧血の度合い、心臓を養っている冠動脈硬化の程度、あるいは年齢等透析患者の条件によって一概には言えませんが、平均的にみれば10%位即ち心臓の拍出量が5リットル程度ならば500ml位まではそれほど大きな問題にはならないようです。しかし、それ以上特に20%以上になってくると、不整脈や心不全を起こしてくる場合も少なくありませんので、シャントする血液流を減少させる必要が生じます。そのため、シャントの血流量が多い人は、運動をさせて心電図を調べたりすることが大切です。もちろん、階段の昇り降りが非常に苦しいとか、疲れやすいというのであれば、つなぎ口を狭くしてもらう手術を試みる価値があります。
このように、シャントする血流量が多ければ心臓にかなりの影響を及ぼしますので、ほどほどの血流量で長持ちするシャント、これが長期透析の一つの鍵を握っていると言っても過言ではありません。

13】タバチエールの内シャントについて
 従来の内シャントのスタンダード方式では、ご承知の通りちょうど腕時計の下辺りに作りました。確かにこの部位に作った内シャントが一番長持ちするのですが、私のようにこれに失敗するともっと上の方よりということになります。しかし、スタンダードの位置を使う前にもう1箇所、内シャントを作る場所があるのです。その場所とは、スタンダードの位置から5cmほどの腕の先で親指の付け根に近い部位(この場所を「タバチエール」と言います。)です。この場所は、内シャントを作るために吻合する血管が非常に近くにあり、手術は比較的やりやすくて成功率が高く、小さな傷ですむというメリットがあります。
 この部位を使うと内シャントを作れる部位が左右で2箇所増えるということ以外に、動脈が細いから心臓に対する負担が少なく、また後からスタンダードの位置に作る場合には静脈が既に内シャントとして使われているので血管が拡張しており、作りやすくなるという利点もあります。それから、スタンダードの位置にある静脈が閉塞している場合でも、別ルートで血流を流して内シャントを確保しうるという可能性があります。
 ただ、手術の傷が袖口から外へ出てしまうということやいわゆる手術野が少し狭く、また閉塞率もスタンダードの位置より少し高いということはあります。いずれにしても、そう大きな欠点はありません。

14】ボタンホール穿刺について 
 透析終了後、穿刺針を抜去した跡の穿刺ルートに、血管表面近くにまで到達しないポリカーボネート製の画鋲型スティックを挿入し、これを透析毎に新しいものに取り替えつつ、数日間留置することにより固定された穿刺ルートを作製し、そのルートを使って穿刺する方法をボタンホール穿刺と言います。
簡単に言いいますと、血管に到達する道を作り先の鋭くない穿刺針を導きやすくして針を刺す感覚ではなく挿入するといった感覚のものです。
 ボタンホールとは、同一部位を反復穿刺してできた皮膚の形状がボタンホールに似ているところから名付けられたものです。
 ボタンホールの方法により固定された穿刺ルートを作製すると、以後は透析毎に先端が鈍(どん)の翼つき金属針(ダルAVFニードル;D-AVF)を用いてボタンホール穿刺を行います。
 (ポリカーボネート製の画鋲型スティック<バイオホールキッド;BHキッド>とD―AVFは二プロ<株>で販売されています。)
 画鋲型スティックは、長さが5mmで先端が鈍(にぶ)く反対側には直径3mmの球状のストッパーが接着されています。 画鋲型スティックは、通常の穿刺針の抜去後に皮膚表面の刺入口から穿刺ルートに沿って挿入しますが、長さが5mmと短いので先端は血管表面近くにまでしか到達しません。
ボタンホール穿刺に至るまで即ち画鋲型スティックを用いた固定穿刺ルートの作製法と穿刺までの工程・手順は次の通りです。
①通常の針を用いて血液透析を施行する。(このときの角度は25~30°)
②透析終了後に針を抜去し、圧迫止血する。
③止血を確認した後、刺入口及び周辺を十分消毒する。
④画鋲型スティックを皮膚表面の刺入口から針の穿刺ルートに沿って挿入する。
⑤画鋲型スティックの球状のストッパーの上を撥水性の減菌絆創膏で覆い帰宅させる。
⑥次の透析日に、留置しておいた画鋲型スティックを抜去し、消毒後に新しいスティックに取り替える。このときの穿刺は留置部を避ける。
⑦このように(⑥)、画鋲型スティックを透析の都度取り替えながら7日程度留置する。(最長2ヶ月の例あり)
<この期間は入浴を避け、非透析日の入浴もシャント肢を濡らさない工夫をして、入浴後は画鋲型スティックの部分の消毒を行なうなどの注意が必要です。画鋲型スティックの留置期間が終了したら通常の入浴OKです。>
⑧固定ルートが完成したと判断されれば、画鋲型スティックの抜去後に、形成されたアクセス血管にいまだ到達していない固定ルートの方向(角度)を十分観察し、これに沿ってそれぞれの施設で使用している先端が鋭い通常の針をアクセス血管内に挿入して穿刺ルートをアクセス血管内に開通させる。
⑨透析終了後、最後の画鋲型スティック留置を行い、帰宅させる。
⑩次の透析は、⑧と同様に正円形のホールを慎重に観察し、固定ルートの方向に沿って、今度は「D-AVF」を用いて刺入する。
⑪以後は、透析毎に固定穿刺ルートの痂疲を剥がしたうえで、「D-AVF」を用いて角度に注意しながらボタンホール穿刺を行なう。
⑦の留置期間は、アクセス血管と皮膚の状態、穿刺スタッフの技量等により、それぞれの施設で判断しなければなりませんが、なれれば週末に画鋲型スティックを留置し、中2日後の週明けに上記⑥⑦⑧⑨を省略し⑩に進めたり、⑧の段階で「D-AVF」を用いることも可能です。
ボタンホール穿刺は、痛みも少なく、合併症も認められず、止血時間も短くて済むなどメリットがありますが、次の諸点に注意が必要です。
①ボタンホールの痂疲を確実に除去すること。感染リスクが高まる可能性もあるので、その前後に十分消毒を行なうこと。
②通常の穿刺時と同様に必ず流水で洗い、必要に応じ撥水テープを貼って保護すること。
③通常の穿刺に適さない部位は避けること。
④刺入の感触が通常と異なるので、穿刺者の慣れが必要であること。
⑤ボタンホールに何らかの異常が認められたときはボタンホール穿刺に固執しないこと。
尚、このボタンホール穿刺は、最近になって確立された技術ですので、長期に亘る実績がありません。従来の穿刺法では10年、20年のシャント開存例が報告されていますが、ボタンホール穿刺で10年、20年と同じシャントを使用できるのかというのはまだ分かりません。また、実際の穿刺にあたって、ボタンホール穿刺用の針を使わず、普通の翼状針、べニューラ針を使う場合があります。
透析患者によってはトンネルがかなり閉じており、針先でトンネルを切り裂いて開いていけるため、かえって痛みが少ないというメリットがあります。さらに、ボタンホール作成時にスティックを用いず、熟練した一人の穿刺者が同一部位を、同じ角度で、同じ方向に何度も穿刺することによってボタンホールを作製している透析施設もあります。

15】透析患者と動脈硬化について
 "動脈硬化"という言葉は、病気というよりも、血管の病的な状態(病態)を表しています。この動脈硬化は加齢とともに進行し、老化には避け得ない病態ですが、透析患者の場合はその進行が早いとも言われています。
2004年12月31日現在の「わが国の慢性透析療法の現況」によれば、2004年1年間の透析患者死亡原因の第1位は「心不全」で25.1%、第2位が「感染症」で18.8%、第3位が「脳血管障害」で10.6%となっており、続いて「悪性腫瘍」「心筋梗塞」という順になっています。この中で、第1位の「心不全」では溢水(水分・塩分が溜まること)が原因であるものが多いと考えられますが、この場合、心臓の機能に問題があり、その原因疾患として「心筋梗塞」や「虚血性心疾患」もかなりの程度含まれていると思われますので、実際は死因に動脈硬化が直接的・間接的にかかわっているものが相当あることが予想されます。また、動脈硬化そのものが慢性炎症であるという説もあります。
 そこで、「動脈硬化とはどういうものか」「動脈硬化はどうやって診断するか」「どうして動脈硬化が起こるのか」「透析患者の動脈硬化の特徴は何か」「動脈硬化のリスクファクター(危険因子)」「動脈硬化の予防と進展防止」及び「動脈硬化によって起こる疾患(病気)とその治療」について、次に言及しておきましょう。
(1)動脈硬化とはどういうものか
動脈硬化になると、血管の弾力性が失われ、ちょうど古いゴムホースのように硬くもろくなり、拡張したり、圧により破れたりします。また、血管の壁が肥厚し、内腔は狭くなり、詰まったり、血流が減ったり、石灰化して血管がガチガチに硬くなる変化が見られることもあります。このような動脈硬化の様々な病態が大きさの異なった動脈で同様に生じることもあれば、動脈の大きさにより少しずつ異なる場合等もあり、病像をより複雑にしています。さらに、この様々な病態により、身体のいろいろな器官や臓器に血管の破綻や出血、血栓や閉塞、狭窄や血流不全が起きます。
例えば、脳の血管が破綻し出血が起これば「脳出血」、血栓や閉塞が起これば「脳梗塞」、心臓の栄養血管である冠動脈に血栓や閉塞が起これば「心筋梗塞」、狭窄や血流不全が起これば「狭心症」となるわけです。
(2)動脈硬化はどうやって診断するか
 ①動脈硬化による個々の臓器の疾患
 ・臨床症状や検査所見によるそれぞれの診断法
 ②直接動脈そのものの狭窄や閉塞を見る手段
 ・造影剤を用いた血管造影やMRIアンギオ
 ・血管の石灰化に対しては通常のX線撮影
 ・EBCT(エレクトロンビームCT)という血管の石灰化を定量化できるCT装置
 ・動脈の状態を反映する眼底検査
 ・その他全身の動脈硬化の指標として、頚動脈の厚さや内径・石灰化を超音波(エコー)を用いて調べる方法、脳波速度を用いて動脈硬化の程度を判定する(動脈硬化が進むと速度は次第に大きくなっていく)方法
(3) どうして動脈硬化が起こるのか
 まず最初に血管の一番内側にある血管内皮が、酸化LDL(酸化され低比重リポたんぱく=悪玉コレステロール)、喫煙、高血圧、糖尿病等により障害され、マクロファージという細胞が血管内皮下に入り込みます。この細胞は血液中を流れてくる酸化LDLを食べて処理(泡沫細胞化)しようとしますが、食べ過ぎて死亡するマクロファージも出てきます。これらが血管内皮下に溜まり、リンパ球(T細胞)やサイトカイン(リンパ球より出る生理活性物質)の働きをうけて粥腫(アデローム)を形成し、内膜が肥厚し、血管の内腔は狭くなります。これらの変化は主として大血管に起こるもので、粥状動脈硬化といいますが、この他に中程度の大きさの動脈に起こる血管中膜の石灰化を特徴とするメンケベルグ型動脈硬化や細小動脈に生じる細小動脈硬化があります。
(4) 透析患者の動脈硬化の特徴は何か
①病因的には、「慢性的な体液過剰」「骨代謝の異常」「尿毒症の病態」「アシドーシス」「高脂血症(高トリグリセライド血症)」等に加えて透析治療そのものも動脈硬化の発症進展にかかわってきていると考えられています。このうちいくつかは、透析患者しか認められないものです。
②形態学的には、透析患者の動脈硬化の主体は中小動脈に起こるメンケベルグ型動脈硬化と言われています。実際透析患者の心臓の冠動脈は石灰化が強く、より広範囲であると指摘されています。
③臨床的には、動脈硬化による「虚血性心疾患」「心筋梗塞」「脳血管障害」による死亡率を一般人口と比較すると透析患者は10倍以上高いと言われています。
(5) 動脈硬化のリスクファクター(危険因子)
 リスクファクター(危険因子)とは、病気の発症・進展を促進する因子のことです。一般的に、「高血圧」「肥満」「高脂血症(高コレステロール血症)」「高脂血症(高コレステロール血症)「喫煙」「糖尿病」「ストレス」「加齢」等が挙げられます。
これらに加え、透析患者では、「体液過剰」「尿毒症の病態」「透析」「カルシウム・リン代謝異常」等が関与しています。さらに、低栄養(低アルブミン血症)やきれいでない透析液も動脈硬化を促進すると考えられています。
(6) 動脈硬化の予防と進展防止
 ①(5)の一般的なリスクファクターを減らす。 
 ②高血圧をコントロールする。
  =降圧剤だけでなく食事中の塩分制限重要=
 ③リン・カルシウムとリン×カルシウム積をコントロールする。
  =P×Caを「55以下」(理想値)=
 ④透析間の体重増加を適正に保つ。
  =3~5%=
 ⑤栄養を十分に摂る。
  =たんぱく質必要量摂取=
 ⑥透析液を清浄化する。
 ⑦その他
  =抗酸化作用のあるビタミンC・ビタミンE・食品の摂取等=
(7) 動脈硬化によって起こる疾患(病気)とその治療
 ここではよく見られる三つの疾患を取り上げてみます。
 ①脳血管障害
 脳血管障害は透析患者の死亡原因の第3位に挙げられている重要な疾患です。脳血管障害は「脳出血」と「脳梗塞」が主な疾患ですが、現在ではCT検査により両疾患の有無と鑑別は容易です。
 手足の麻痺や言葉がしゃべりにくいなどの症状があったら、すぐにスタッフに相談しましょう。早期診断、早期治療、早期リハビリが必要な疾患です。
 「脳出血」は原則的に保存的な治療ですが、時に手術の適応となるものもあります。
 「脳梗塞」は血液が固まりにくくするアスピリン等を用いて治療しますが、日常的には脱水に注意することです。
 ②虚血性心臓病
 主なものは、「狭心症」と「心筋梗塞」があります。
 「狭心症」は冠動脈の血流が極端に減少した状態、「心筋梗塞」は冠動脈が血栓等で完全に閉塞しその支配領域の心筋が壊死に陥った状態で、どちらも強い胸痛を伴います。
 確定診断は、どちらも冠動脈造影法(CAG)により行ないます。
 「狭心症」の場合はニトログリセリン等で冠動脈を拡張させて、胸痛を取り、心臓に対しては直接的な処置を加えないで治療することもありますが、基本的には両疾患とも冠動脈の動脈硬化による狭細化があるので、根本的治療として次の二つの方法があります。
・一つは、冠動脈にカテーテルを入れバルーン(風船)をふくらませて動脈を拡張する「PTCA」という方法です。手術をしない利点がありますが、再狭窄をきたすことがあり、再度治療を要する場合も少なくありません。
・もう一つは、透析患者の場合は、石灰化の程度が強かったり、その範囲が広いことも多いため、「PTCA」で拡張が無理な場合も多く、その場合は冠動脈バイパス術(CABG)という方法をとります。この手術は狭窄した冠動脈に代わって自家動脈や静脈を使い、バイパスを作るものです。
 ③閉塞性動脈硬化症(ASO)
 これは糖尿病の患者に多く見られますが、糖尿病以外にも見られます。病変は腹部の大動脈から下肢の中小動脈の粥状動脈病変で、血管の分岐部に多発します。この疾患は下肢に起こりますが、臨床症状として、
 ・Ⅰ度=しびれ感・冷感
 ・Ⅱ度=間欠性跛行
 ・Ⅲ度=安静時疼痛
 ・Ⅳ度=潰瘍・壊死 
 に分類されます。この中で「間欠性跛行」は特徴的で、長い間歩くと痛みのため足を引きずるようになってしまいます。
 治療としては、まず足より中枢側に狭窄があれば、「PTA」でその部分を拡張するか、人工血管や自家血管で置換するか、あるいは反対側の動脈からのバイパス術を行ないます。
 次にフットケアを行ないます。足指を常に観察し、清潔に保ち、爪をよく切り(深爪はせず)、傷を作らず、湯たんぽ等の低温やけどに注意し、足を締めつけないようなゆったりとした履物を用います。最近の治療として炭酸浴の有効性が報告されています。(この「その他インフォメーション」コーナー【18】参照)
尚、閉塞性動脈硬化症(ASO)には喫煙は禁忌です。閉塞性動脈硬化症(ASO)のことがよくわかるインターネットサイトを一つ次に紹介しておきましょう。
http://e-aso.info/general/sinsatsu/index.html

 以上の「動脈硬化」にも共通する快適で長生きできるキーワードは、「自己コントロール」ですので、私達透析患者はこのことを改めて肝に銘じましょう。


16】透析患者の骨密度について
二重エネルギーX線吸収法(DEXA法)による骨塩定量装置が普及し、透析患者においても日常的に骨密度(BMD)の測定が行なわれるようになってきましたが、透析患者におけるBMD測定の意義については必ずしも明確にされていないというのが現状です。
まず、BMD測定の目的ですが、その目的は「骨折しやすい患者を発見して早期の治療を行い、骨折を回避する」ことにあります。
その根拠となっているのは、
①骨強度の約80%は骨塩量に依存していること
②健常若年者の平均BMD値の70%未満では骨折頻度が高いという疫学的事実があること
 の二つです。しかし、この根拠は非腎不全・非透析患者についてのことであり、透析患者にも上記二つの前提があてはまるというエビデンスはこれまでのところ得られていません。即ち、透析患者における骨強度は、単に骨塩量減少のみならず、「カルシウムやリンの代謝異常」「活性型ビタミンDの欠乏」「副甲状腺ホルモン(PTH)の異常分泌」「代謝性アシドーシス(体液が過度に酸性化した状態)」等による“骨質の変化”が大きく骨強度に影響していると推測されています。以上のことから透析患者におけるBMD測定で“骨折の予測”をすることは極めて困難であると言えます。
 一般的なBMD測定は「腰椎」で測定しますが、透析患者における腰椎BMD値の有用性は低いと考えられている一方、「橈骨」で測定する橈骨BMD値は「副甲状腺機能亢進症における高回転骨(繊維性骨炎)の重症度を比較的良好に反映している」と考えられるため、透析患者BMD測定部位としては「腰椎」より「橈骨」での測定が望ましいと思われます。
 尚、2003年10月にアメリカの腎臓団体から、K/DOQIの一環として「慢性腎疾患における骨の代謝と疾患のための実施臨床ガイドライン」が発表され、東海大学総合医学研究所「斉藤明」教授が監訳された内容を要約したものを参考までに添付(クリック)いたします。この要約内容は、GFR(糸球体濾過量)に基く腎障害の程度をステージ5(透析)に絞ってまとめたもので、いわゆる一つの考え方・見方として紹介するものです。
 わが国では、未だ科学的な評価に耐えうる研究報告が十分とは言えませんので、アメリカと同様のガイドラインを作成するのは時期尚早と言えますが、目下日本の透析臨床医も本ガイドラインを十分学習し、検証していることは 間違いのないところです。


17】透析中に起こりうる事故について
透析中の事故は、機械の故障と操作ミス等の人為的ミスが絡むことが多いですので、透析中に起こりうる事故については私達透析患者もよく認識しておく必要があります。透析中に起こりうる事故について列記してみますと次の通りです。
①透析液に関する事故
 ・原水処理の不適
 ・濃度の異常
 ・液温の異常
 ・汚染
②透析器(ダイアライザー)に関する事故
 ・血液漏出
 ・使用前洗浄の不適
③ブラッドアクセスに関する事故
 ・血流不良
 ・静脈圧上昇
 ・穿刺ミス
④空気の誤入(混入)
⑤血液回路内の血液凝固
⑥接続部の逸脱(出血・汚染)
⑦除水の過剰・不足
⑧誤穿刺
⑨アナフィラキーショック(急性のアレルギー反応)
⑩停電及び断水
⑪地震及び火災等
以上の透析中の事故の中で、生命の危険に直結する「空気の誤入」は、回路内のどこからでも発生する危険性があります。透析患者の体内に空気の誤入が起きたときの症状として、咳、胸部不快感、呼吸困難、チアノーゼ、血圧下降、意識障害等が出現し、極めて重大な状態に陥ることが予測されます。こうしたときの対応は、次の通りです。
①速やかに血液ポンプを止める。
②頭部を下げ、下肢を挙上し、左側臥位にする。
③気道確保
④酸素吸入

18】透析患者の末梢神経障害に対する人工炭酸泉浴の改善効果について
日本透析医学会の報告によれば、1998年以来変わらず年間の透析導入患者のうち糖尿病性腎症を原疾患とする透析患者が連続して第1位を占め、糖尿病性腎症の原疾患透析患者が年々増加しています。
また、糖尿病性腎不全に伴う下肢または上肢病変は多種多様に変化するため、臨床の現場ではその対策に苦慮しています。そこで、透析患者の「疼痛」「しびれ感」「冷感」」等の下肢または上肢病変即ち抹消循環
障害に対して、人工炭酸泉浴剤を使用(足浴等)することによる有用性が報告されていますので、次の2例を紹介します。
(1)下肢病変に対する人工炭酸泉浴剤の使用症例
症例は51歳、女性、1970年に糖尿病と診断され、1990年4月より糖尿病性腎症を原疾患として透析が導入された。
2001年4月より左下肢第1指の深爪と第5指の靴擦れの後、変色と潰瘍形成を認めた。閉塞性動脈硬化症(ASO)の診断のもと各種処置とともにプロスタグランジン製剤の投与を行うも完治しなかった。
そこで、人工炭酸泉浴剤を併用した。その結果、人工炭酸泉浴剤使用前後において、「疼痛」「冷感」「しびれ感」が改善し、2001年4月20日の左下肢のABI(抹消神経障害の指標)は測定不能であったものが、同年11月7日には0.41と改善した。
(2)上肢病変に対する人工炭酸泉浴剤の使用症例
症例は55歳、女性、1982年に慢性糸球体腎炎を原疾患とする慢性腎不全と診断され透析導入となった。2001年11月頃より強度の左肩痛が出現し、臨床症状は"透析中、穿刺針の入っている間だけ痛く、透析終了とともに軽快する"というものであった。各種治療を試みるも改善せず、2002年7月8日より左上肢の血管痛に対して人工炭酸泉浴を15分間施行した。具体的には、水温37℃の水1.25Lに人工炭酸泉浴剤9.37g溶解して使用した。その後これを約2ヶ月間継続治療した。その結果、「冷感」「しびれ感」に対しては変化が認められなかったものの、「疼痛」に対しては改善が認められた。
以上の人工炭酸泉は、水温34℃以上(35~37℃が適温)で高濃度即ち700~800ppm以上の炭酸ガス濃度を有するものでなければ効果が得られにくいと言われています。その効果としては次のようなことが挙げられます。
①炭酸泉に浸すと、炭酸ガスが体内に吸収され、血管が拡張し血液の流れが円滑になる。
②炭酸泉には温水と血液間の熱交換率が向上し、皮膚・軟部皮下組織の血流改善効果がある。
③炭酸泉は人体のpHに近い弱酸性なので、肌に優しく、アストリンゼン効果により肌をすべすべにする効果がある。
④炭酸泉は筋肉に蓄積した疲労物質を排出したり、血行促進により皮膚創傷を改善する効果がある。
人工炭酸泉浴剤使用による効果は、現時点統計学的には有意差は認められていませんが、疼痛(特に血管痛)等の自覚症状が明らかに改善したことは注目すべき効果と思われます。また、いわゆる人工炭酸泉浴療法は、潰瘍や壊疽等の足病変に対しても改善効果が得られるとの報告もあります。今後、人工炭酸泉浴時の水温は何℃が最適か、さらに足浴時間等についても、症例数を増やして詳細な検討が必要です。
 尚、家庭でできる具体的な人工炭酸泉足浴の方法をあるドクターに教えてもらいましたので、その方法について紹介しておきます。
 透析医療施設では、人工炭酸泉を作る装置を購入して、それで炭酸泉浴を行っているのですが、この機械は比較的高価ですから、もちろん家庭で買うわけにはいきません。
 そこで人工炭酸泉浴剤使用ということになるのですが、最も簡単に手に入る花王の入浴剤「バブ」でいいんだそうです。
 これは、普通1錠をお風呂に入れるのですが、それでは炭酸の濃度が十分に大きくなりません。両足が入るくらいの底の面積が大きめのバケツに、足が浸るくらいの水量(約10L)で、「バブ」を1錠から2錠入れれば、十分な炭酸の濃度になります。
 注意が必要なのは、お風呂のような温度では高すぎるということです。お風呂はぬるめでも40度くらいになっていますが、この温度では炭酸がガスになってしまって、抜けてしまうので、できれば温度計を使って、水温を測って37度くらいの方が良く、適温だそうです。足を入れるとずいぶん冷たく感じるかも知れませんが、炭酸の濃度が十分に大きくなっていれば、5~10分間も足をつけておくと、真っ赤になるくらい血行がよくなっていることが実感できるはずです。(とにかく、あたたかなお湯は使用しないのがポイントです。)
 私も、毎日朝晩2回、1回につき20分間、湯量10L、湯温37℃、「バブ」1錠使用(溶かしきってから)を基本に実行していましたが、さらにの効果を上げるため、平成20年2月8日より、毎晩(基本的に夕食中)1回ですが下記に紹介する抗菌炭酸足温剤「ASケア」を使用しています。「バブ」使用時と同様あるいはそれ以上の効果を認めております、即ち、糖尿病の持病を持つ私にとって、「フットケア」は毎日欠かせないわけですが、これらの足温剤を使った足浴(20分間)の効果は、糖尿病独特の足の「疼痛」「しびれ感」「冷感」等が毎日続けているとあきらかに軽減されてくることです。糖尿病透析患者には是非お薦めしたい「フットケア」の一方法です。
 ただ、この人工炭酸泉足浴を実行するにあたっては、特に糖尿病の場合の低温やけどや足に傷や潰瘍がある場合などの問題もありますので、実行する前に必ず主治医の先生に相談・確認・許可を受けて下さい。
 (それから、「バブ」の製品注意書きもよく読んでおきましょう。)
 尚、「バブ」ではなく、正式に抗菌炭酸足温剤として発売されている「ASケア」も紹介しておきま
 しょう。「ASケア」は速溶性の白色細粒剤で、水に溶けながら適度な溶存炭酸ガスを生成するとと
 もに、次亜塩素酸(HOCl)を生成することにより血流の促進、皮膚血行の改善、脱臭・不快臭の防止な
 どに役立つことを特長としています。使用法は水温35℃程度の足浴槽水に下肢部を入れ、水量10
 リットル当たり本剤1袋(75g)を投入し、10~20分程度足浴を行います。
 血流の促進、皮膚血行の改善などの対象者は全国に約50万人いるとされますが、すでに多くの「A
 Sケア」使用事例があり、平成13年6月の日本透析医学会でもその効果が報告されました。(「A
 Sケア」の製造元は「四国化成工業<株>、販売元は「旭化成メディカル<株>透析事業部」=各地
 に販売代理店あり<因みに東京地区は「<株>アグリス、TEL03-3233-2077、75g
 入り1袋185円と35g入り1袋140円の2種類・いずれも30袋単位注文・代引きのみ」>=)
 尚、「ASケア」の添付文書は、ココ(PDFファイル)をクリックして下さい。
それから、透析関連有名サイト(透析百科)の「人工炭酸泉浴療法」のページアドレスを次に載せておきます。
 ・http://202.216.128.227/%E9%80%8F%E6%9E%90%E7%99%BE%E7%A7%91/22.17.htm


19】活性型ビタミンD製剤について
「活性型ビタミンD製剤」については、どの薬剤もそうですが、一般名と商品名がごちゃごちゃになっており種類も多く、またアナログ(類似薬)という概念もあって、極めて解りにくくなっていますので、このアナログを含めここで「活性型ビタミンD製剤」について、解りやすく解説しておきたいと思います。
 まず、「ビタミンD」は腎臓で作られると一般的には理解されていますが、実際は腎臓は「普通のビタミンD」を「活性型ビタミンD(実際の働きをするビタミンD)」に変える作用を持つというのが正しい表現です。 
 即ち、「活性型ビタミンD」は、腸からカルシウムを吸収し血液中のカルシウムを上昇させる・骨を作るなど多くの働きをしますが、腎臓で活性化される前の「ビタミンD」にはこうした働きはありません。
 従って、私達透析患者では、腎不全の状態ですから「活性型ビタミンD」が足りないため腸からカルシウムが吸収されずに血液中のカルシウムが減少し、その結果、この血液中のカルシウムの減少を治す目的で副甲状腺からPTHが分泌されます。PTHは、骨を削ってカルシウムを上昇させ、血液中のカルシウムが正常な値となるよう作用します。
一方において、「活性型ビタミンD」は、副甲状腺でPTHが作られるのを抑える働きとさらにその副甲状腺が大きくなる(腫大する)のを妨げる働きも持ちます。
ですから、腎不全で「活性型ビタミンD」が足りないと、それだけで副甲状腺でPTHがたくさん作られ、副甲状腺が大きくなるといういわゆる「2次性副甲状腺機能亢進症」の病状を呈することになり、透析患者をはじめ腎不全患者では基本的に「活性型ビタミンD製剤」が処方されるということになります。足りない「活性型ビタミンD」を補えば、「2次性副甲状腺機能亢進症」の予防や治療が可能となるわけです。
 この目的と期待を担って、1980年代初頭に「活性型ビタミンD」の飲み薬(経口薬)が発売されました。
 以下に静注薬も含め、一般名と商品名や経口薬と静注薬をきちんと分けて治療に使われる主な「活性型ビタミンD製剤」の種類を整理しておきます。

         
★治療に使われる主な「活性型ビタミンD製剤」

【1】マキサカルシトール(一般名)
 ◆オキサロール注(商品名)=「アナログ(後記<注>①参照)」
  <静注薬>
   ・単位:2.5μg、5μg、10μg/ml/A
   ・用法用量:透析終了直前に1回2.5~10μgを週3回、透析回路静脈側に注入する。
    血清PTHの改善効果が認められない場合には、高カルシウム血症の発現等に注意
    しながら、1回20μgを上限に慎重に投与する。目安として、i―PTH300pg/ml
    以上500pg/ml未満は1回5μgを週3回透析後に投与、i―PTHが500pg/ml以上は
    1回10μgを週3回透析後に投与する。
    但し、血清Caが11mg/dl以上(補正Ca使用)になれば減量し、11.5mg/dl
    以上になれば投与中止、i―PTHが150pg/ml以下になっても投与を中止する。
    オキサロールは、「2次性副甲状腺機能亢進症」のパルス療法に用いられる代表的な
    静注用薬剤です。
   ・主な副作用:「高カルシウム血症」「掻痒感」「CK(クレアチンキナーゼ)上昇」
    「イライラ感」


【2】ファレカルシトリオール(一般名)
 ◆フルスタン錠(商品名)=「アナログ(後記<注>①参照)」
  <経口薬>
   ・単位:0.15μg、0.3μg/錠
   ・用法用量:1日1回0.3~0.9μgを経口服用する。但し、年齢、症状、病型により
    適宜増減する。
   ・主な副作用:「高カルシウム血症」「腎結石」「尿管結石」「好酸球の増加」「掻
    痒感」「肝障害」「尿pH上昇」「尿沈渣異常」「眠気」「パーキンソニズム」
    「下痢」「下血」「消化器症状」「口渇感」「腹部違和感」「徐脈」「白血球数増
    多」「単球の増加」「棹状核球の増加」「好中球の減少」「リンパ球の減少」「高
    リン血症」「尿酸上昇」「総コレステロール上昇」「トリグリセライド上昇」「総
    タンパク低下」「アルブミン低下」「皮診」「BUN上昇」「尿タンパク異常」
    「関節周囲又は皮下の石灰化」「骨痛」「関節痛」「肩こり」「女性型乳房」「顔
    面紅潮」
 ◆ホーネル錠(商品名)=「アナログ(後記<注>①参照)」
  <経口薬>
   ・単位:0.15μg、0.3μg/錠
   ・用法用量:1日1回0.3~0.9μgを経口服用する。但し、年齢、症状、病型により
    適宜増減する。
   主な副作用:フルスタン錠と同じ。



【3】カルシトリオール(一般名)
 ◆ロカルトロールカプセル(商品名)
  <経口薬>
   ・単位:0.25μg、0.5μg/C
   ・用法用量:1日1回0.25~0.75μgを経口服用する。「2次性副甲状腺機能亢進症」
    には1日1回0.5~2.0μgを服用し、パルス療法では4~6μgを週2回服用する。
   ・主な副作用:「消化器症状」「イライラ」「不眠」「動悸」「肝機能低下」「腎機能低下」「皮膚掻痒」
      「結膜充血」「関節周囲の石灰化」「多尿(ビタミンD投与による高Ca血症のため)」
 ◆ロカルトロール注(商品名)
  <静注薬>
   ・単位:0.5μg、1μg/管
   ・用法用量:1回1μgを週2~3回、透析終了時にできるだけ緩徐に静脈内投与する。
    以後は、PTH及び血清Caの十分な管理下において、1回0.5~1.5μgの範囲内で
    適宜増減し、週1~3回、透析終了時にできるだけ緩徐に投与し、必ず食後に投与
    する。
   ・主な副作用:ロカルトロールカプセルと同じ。
 
【4】アルファカルシドール(一般名)
 ◆ ワンアルファ錠(商品名)
  <経口薬>
   ・単位:0.25μg、0.5μg、1.0μg/錠
   ・用法用量:1日1回0.5~1.0μgを経口服用する。但し、年齢、症状により適宜増減
    する。「2次性副甲状腺機能亢進症」には1日1回1.0~4.0μgを服用する。但し、
    年齢、症状、病型により適宜増減する。
   
・主な副作用:「急性腎不全」「肝機能障害」「黄疸」「食欲不振」「悪心」「嘔吐」「めまい」「しびれ
      感」「眠気」「老人性難聴」「動悸」「軽度の血圧上昇」
 ◆アルファロールカプセル(商品名)
  <経口薬>
   ・単位: 0.25μg、0.5μg、1.0μg、4.0μg/C
   ・用法用量:1日1回0.5~1.0μgを経口服用する。但し、年齢、症状により適宜増減
    する。「2次性副甲状腺機能亢進症」には1日1回1.0~4.0μgを服用する。但し、
    年齢、症状、病型により適宜増減する。

   
・主な副作用:ワンアルファ錠と同じ。
 
 <注>①「アナログ」とは。
  カルシウムを比較的上げずにPTHを低下させようという治療に都合の良い活性型
 ビタミンD製剤を探す過程で、活性型ビタミンDとよく似た薬の中から、こうした期待
 に応えられる類縁の薬剤が作られました。上記では、本来の「活性型ビタミンD製剤」
 と同じように扱っていますが、これらは正確に言うと「活性型ビタミンD製剤」の類似
 薬で、「アナログ」と呼ばれています。
  (商品名:「オキサロール注」「フルスタン錠」「ホーネル錠」) 

 <注>②静注活性型ビタミンD製剤の長所
  PTHを十分に抑えられずにカルシウムを上げてしまうという経口活性型ビタミンD
 製剤の短所克服を目的に作られたのが血管内に注射する静注用活性型ビタミンD製剤で
 す。静注用活性型ビタミンD製剤は、血管内に注射することで血液中の活性型ビタミン
 Dの濃度を急速に高め、PTHの分泌や副甲状腺の腫大を防ぐことができます。
  同時に、経口薬に比べ、血液から早く取り除かれるので、カルシウムを上げる働きも
 やや軽度になります。

 <注>③活性型ビタミンD製剤の注意すべき特徴
  リンを下げる目的で炭酸カルシウム等のカルシウム剤を服用していると、それだけで
 血清カルシウムが増加して、活性型ビタミンD製剤を使用できなくなってしまいます。
 それではということで、リン吸着剤をカルシウム剤から塩酸セベラマー(「レナジェ
 ル」「フォスブロック」)に切り替えても、便秘等で十分な量を服用できないという
 ジレンマがあります。
 「2次性副甲状腺機能亢進症」には、経口薬より静注用活性型ビタミンD製剤の方が
 高い効果を示しますので、静注用活性型ビタミンD製剤を使いたいところですが、既に
 カルシウムが高い患者には使えませんし、例え最初は使用できても、途中でカルシウム
 が高くなってくれば、中止しなければなりません。また、活性型ビタミンD製剤を使用
 すると、経口薬・静注薬を問わず、同時にリンが高くなることも多く、リン吸着薬を増
 加させられなければ、そこで活性型ビタミンD製剤を減量、中止する必要があります。
 以上のように、一旦「2次性副甲状腺機能亢進症」になってしまうと、その治療はなか
 なか難しいようです。
 活性型ビタミンD製剤使用にあたっては、主治医の先生とよく相談して、関連検査デー
 タを見ながら、適宜適切にその種類と増減・中止を含めその使用量を決めてもらいまし
 ょう。

20】糖尿病透析患者の血糖管理について

まず認識しておく必要があるのは、これだけ「糖尿病性腎症」からの透析導入が年を逐って増加の一途を辿り、1998年以降は新規導入患者のうち導入原疾患の堂々たる第1位となっている状況の中で、「糖尿病透析患者における血糖管理の指標と目標及びその治療法に関するガイドライン」は、残念ながら未だ確立されていない現状にあるということです。このことを疫学的にみれば、糖尿病透析患者において、総死亡・心血管死あるいは心筋梗塞や脳血管障害の発症等、いわゆるエンドポイントをみた血糖管理目標に関する臨床的エビデンスがないのが現状です。これは、糖尿病透析患者にはインスリン強化療法により重症低血糖が起こりやすいこと、高血糖に特徴的な口渇・多飲・多尿といった症状も基本的にみられないことなどから、糖尿病透析患者の血糖管理は極めて困難であると考えられているからです。
 そうは言っても、私のような糖尿病透析患者の血糖管理指標・目標及び治療法について、その拠り所が欲しいところです。
 そこで、これらの点について、日本メディカルセンター発行の「臨床透析(2005・1、VOL.21NO.1)特大号〔特集〕糖尿病と透析療法」に記載されている考え方(オピニオン)と臨床データ報告について、大繰りで「血糖管理の指標と評価」と「薬物による血糖コントロール」に分けて、その中のポイントを拾ってアットランダムですが糖尿病透析患者のために参考までに整理・引用しておきたいと思います。いろいろな考え方(オピニオン)や臨床報告があります。
 尚、現在「日本糖尿病学会」「日本腎臓学会」にて構成されている糖尿病性腎症合同委員会に「日本透析医学会」が加わり、糖尿病透析患者における血糖コントロールの指標、特に「グリコアルブミン」の有用性に関する検討が行われており、当初2006年中には発表されるやに聞いておりましたが、諸般の事情により、2008年末になってもまだガイドライン的なものは発表されておりません。(発表されたら、ここでその概要をお知らせいたします。)

【1】糖尿病透析患者血糖管理の指標と評価
(ヘモグロビンA1c<HbA1c>・グリコアルブミン<GA>)
 (1)健賢糖尿病患者の血糖管理目標と同様とする考え方
           ★健賢糖尿病患者血糖コントロールの指標と評価
指  標 コントロールの評価とその範囲
不可
不十分 不良
HbA1c(%) 5.8未満 5.8~6.5
未満
6.5~7.0
未満
7.0~8.0
未満
8.0以上
6.5~8.0%未満
空腹時血糖値(mg/dl) 80~110未満 110~130未満 130~160未満 160以上
食後2時間血糖値
(mg/dl)
80~140未満 140~180未満 180~220未満 220以上

<注>①上記表内容は、「日本糖尿病学会編:科学的根拠に基く糖尿病診療ガイドライン.
    2004,P15,南江堂」より引用
   ②「HbA1c」が「6.5%未満」、食後2時間血糖値が「180mg/dl未満」で
    あれば最小血管合併症の出現する可能性が少ないとの報告から、上記「良」の上限が
    決められた。この数値が総合的・一般的な日本糖尿病学会のガイドラインとなってい
    る。尚、血糖コントロールが「可」とは、治療の徹底により「良」ないしそれ以上に
    向けての改善の努力を行うべき領域であり、「可」の中でも「7.0%未満」をより
    コントロールが良い「不十分」とし、他を「不良」としている。(この境界の血糖値
    は定めない)
   ③<注②>ガイドラインの目標値「HbA1c」の「6.5%」は、「グリコアルブミ
    ン(GA)」の「20%」に相当する。
    「HbA1c」が過去の1~2ヵ月の血糖調節状態を見るのに対し、「グリコアルブミ
    ン(GA)」は、過去3~4週のそれを反映する。(健常者基準値:11.8~16
    .3%)
    「グリコアルブミン(GA)」は、血糖がより変動するⅠ型糖尿病や治療法の変更で
    血糖の改善具合を早く知る必要のあるときに良い指標となる。
   ④糖尿病透析患者の場合は、「低血糖発作」に留意することも大切である。(特に高齢
    者・高度視力障害者・単身生活者等)
低血糖は、血糖値が50mg/dl以下になった場合
       を言い、「不安感」「空腹」「動悸」「顔面蒼白」「頻脈」「発汗」「振戦(手などのふるえ)」「頭痛」
      「視力障害」「複視」「異常行動」「けいれん」「昏睡(脳症状)」等がみられます。砂糖水(砂糖
      10~20g)やジュースを飲む、ブドウ糖の静注などで対応します。
   ⑤上記表中の「空腹時血糖値(FBS)」とは、最低8時間以上、水以外の飲食物を禁
    じて得られた血中グルコース(ブドウ糖)濃度です。

(2)透析患者のヘモグロビンA1c(HbA1c)は、実際の血糖調節状態より低くなるので、糖尿病透析患者の場合の血糖コントロールの指標と評価は、健賢糖尿病患者のそれより低く設定するという考え方(「グリコアルブミン<GA>」の方が良いという可能性も)
   ①透析患者では、エリスロポエチン製剤(「エポジン」「エスポー」)投与等により、
   「HbA1c」が低値となる傾向がある。
   <その理由>
   「HbA1c」は、ヘモグロビンという赤血球中の蛋白質に結合したグルコース(血糖
    )の量(%)である。透析患者は、原疾患が糖尿病でなくても、腎性貧血に加えて透
    析と検査による失血、潰瘍、手術、外傷等による出血、尿毒症による赤血球寿命の短
    縮等のため貧血が進行すると、赤血球産生を促進するため基本的に増血剤エリスロポ
    エチン製剤が投与される。そうすると、赤血球とともに糖化ヘモグロビン(ヘモグロ
    ビンとブドウ糖の非酵素結合)の回転がはやくなるので、血糖値が高めなのに「Hb
    A1c」は低めになってしまうことがある。「HbA1c」が良好でも、に糖尿病透
    析患者は血糖値そのものを見ることも大切である。
   ②従って、エリスロポエチン製剤使用者には、この投与による変動がない「グリコアル
    ブミン<GA>」を血糖管理の指標とするのが良い可能性がある。
   ③糖尿病透析患者の「ヘモグロビンA1c(HbA1c)」「グリコアルブミン(GA
    )」の提案ターゲット(提案目標値)
   (それぞれいくつにするのが良いかというコンセンサスは得られていないが・・・) 
   ・ヘモグロビンA1c(HbA1c)
   「6.0%(エリスロポエチン製剤非使用者)~5.0%
   (エリスロポエチン製剤使用者<~9,000単位/週>)」
   ・「グリコアルブミン(GA)」
   「20%」
(3) 糖尿病透析患者の心筋梗塞や心不全による死亡リスクは、「ヘモグロビンA1c(HbA1c)」値が5~6%である患者に対し、同値が8%あるいは9%以上の血糖管理の不良な糖尿病透析患者では著しく高い。(日本透析医学会調査報告) 

(4) 維持透析療法中の糖尿病透析患者において、「ヘモグロビンA1c(HbA1c)」値「8%以上」と血糖管理がなされていない群は、それ以下に管理された群と比べ、有意に生命予後が不良であった。(第48回日本透析医学会シンポジウム<2003>報告)従って、現状では糖尿病透析患者の血糖管理目標としては、「ヘモグロビンA1c(HbA1c)」は「8.0%未満」を目指すのが妥当である。

(5)『Up To Date(臨床情報資源)』では、空腹時血糖「140mg/dl」未満、「ヘモグロビンA1c(HbA1c)」値「6~8%」が、糖尿病透析患者の血糖管理目標として推奨されている。

【2】薬物による糖尿病透析患者の血糖コントロール
(血糖降下薬及びインスリンはどう使うのか)
糖尿病透析患者の血糖コントロールの基本・主体も、やはり「食事療法」や禁忌となる病態がなければ「運動療法」の非薬物療法にあることに変わりありませんが、それでも血糖コントロールが困難な場合、薬物を使用します。
(1) 糖尿病透析患者に対しては、「インスリン療法」を第一選択とすべきである。
   ①その理由(経口血糖降下療法とインスリン療法の違い)
    経口血糖降下療法は、インスリン分泌の促進と感受性を改善させ、インスリン療法は
    血糖調節ホルモンであるインスリンを外部から補充する。科学的根拠から得られた健
    賢糖尿病患者の場合の糖尿病診療ガイドラインでは、一般的にはⅠ型糖尿病ではイン
    スリン療法が適応になり、Ⅱ型糖尿病では経口血糖降下療法が第一選択となるが、そ
    れぞれの経口薬とインスリン製剤の特徴に基き、個々の患者の病態に応じて選択する。
    特に、経口血糖降下薬の代謝・排泄に腎が関わっていることから、糖尿病透析患者に
    対しては、「インスリン療法」を第一選択とすべきである。
   ②糖尿病透析患者インスリン療法のポイント
    基本的には作用時間の短い超速効型(あるいは速効型)インスリンの食前3回注射と
    就寝前の中間型インスリン注射の組みあわせにより血糖管理は容易になる。糖尿病透
    析療法時にはインスリン必要量は減少することが多い。個々の症例の血糖値に応じた
    インスリン投与量の減量や透析日のスライディングスケール(測定した血糖値により
    その時点で注射するインスリン量を変える前向き調節)作成とともに低血糖防止対策
    として栄養状態の評価を行う必要がある。
 <あくまでも一つの使用例(体重60kg)>
  1日40単位(皮下注射)
  ・超速効型(速効型)インスリンにて各食直前(各食前30分)にそれぞれ10単位×3
  ・中間型あるいは持効型インスリンにて就寝前に10単位×1
  ・その後、食前血糖値の目標値を140mg/dl未満として、それ以上であれば各食前の
   超速効型(速効型)インスリンを1~2単位増量する。
   尚、インスリンについて、詳しいインターネットページを次に紹介しておきますので、
   参考にされて下さい。
       ◆ インスリン調節法ABC◆
   ―製剤の種類と投与法・調節の仕方についてー
   (http://www.uemura-clinic.com/dmlecture/insulintx.htm

(2)実際の透析現場では糖尿病透析患者に対しても、経口血糖降下薬が使用されているのが実態である。
   ①「スルフォニル尿素系(SU)」「αグルコシターゼ阻害薬」等が使用されている例
    がある。
   ②「スルフォニル尿素系(SU)」の第二世代「グリベンブラミド」や「ビグアナイド
    系」は、腎排泄性薬剤であるため、遷延性低血糖のリスクが高く禁忌とされている。
   ③「スルフォニル尿素系(SU)」の第三世代「グリメピリド」、「インスリン分泌促
    進薬」の「ナテグリニド」「ミチグリニド」は、半減期が短く、約40%が胆汁に排
    泄される薬剤であることから、糖尿病透析患者に対しても安全に使用できる可能性が
    示唆されている。しかし、これらも基本的には、透析を必要とするような重篤な腎機
    能障害のある患者においては、低血糖を起こすおそれがあり基本的には禁忌となって
    いる。尚、「日本糖尿病学会編:糖尿病治療ガイド2004-2005の代表的な経
    口血糖降下薬の腎不全時における特徴」は次表の通り。

                 ★代表的な経口血糖降下薬の特徴
一 般 名
(商品名)
代謝・排泄  代謝物の
血糖降下作用 
半減期(時間) 腎障害時の投与量 
正常 腎不全
スルフォニル尿素系
・第一世代
トルプタミド
(ジアベン)
(ヘキストラスチノン)
アセトヘキサミド
(ジメリン)
・第二世代
グリベンクラミド
(オイグルコン)
(ダオニール)
グリクラジド
(グリミクロン)
(グリミクロンHA)
・第三世代
グリメピリド
(アマリール)


肝代謝・腎排泄


肝代謝・腎排泄


肝代謝・腎排泄


肝代謝・腎排泄



肝代謝、胆汁・腎排泄 


弱い


強い


弱い


なし



著しく弱い 


46


1.0~1.3


2~5


8~11



1~2 


変化なし


延長


データなし


データなし



2~5   


100%


使用を避ける

使用を避ける

GFR50未満では使用を避ける
使用を避ける     
ビグアナイド系 
メトホルミン 
(メルビン)
(グリコラン)
 

腎排泄(代謝せず)  
 

  ―  
 

1~5  
 

延長  
 GFR>50→50%50>GFR>10→25%GFR<10→禁忌
αグルコシダーゼ阻害薬
アカルボース
(グルコバイ)







ボグリボーズ
(ベイスン)
(ベイスンOD)


ミグリトール
(セイブル)


ほとんど吸収されない  







ほとんど吸収されない




吸収される


  ―







  ―


  ― 







  ―


  ― 







  ―


データなし
(Ccr25未満で血中活性物質約4~5倍に上昇)
データなし
インスリン抵抗性改善薬 ピオグリタゾン
(アクトス)

肝・腎代謝、胆汁・腎排泄

弱い

約5

データなし

使用を避ける
インスリン分泌促進薬
ナテグリニド
(ファスティック)
(スターシス)
ミチグリニド
(グルファスト)

肝・腎代謝、
胆汁・腎排泄

肝・腎代謝、
胆汁・腎排泄

弱い


弱い

約1


約1.5

データなし


Ccr31~50半減期3.22HCcr30以下半減期11.7H

使用を避ける

慎重投与
<注>①GFR=糸球体濾過率(実際は「Ccr」を「GFR」として扱う)
    ②Ccr=クレアチニンクリアランス<糸球体濾過能力>
            (基準値:70~130ml/分)
 以上「糖尿病透析患者における血糖管理の指標と目標及びその治療法」についていろいろ記述してきましたが、本内容とわが腎クリニックの属するグループ内の糖尿病専門医かつ透析専門医や他の施設のドクターの意見等も含め、総合的に判断すれば、あくまで私のイメージではありますが、糖尿病透析患者の血糖管理指標は通常月1回の「HbA1c」で行い、その目標値(許容値)は「7%未満、なるべく6%に近づけ、最悪でも間違っても8%以上にはしない」といったところでしょうか。治療法については、食事療法・運動療法で改善されない場合、インスリン療法を基本とすべきだと思いますが、既述の通り実際の透析現場では私のような経口薬剤療法とが併存しており、いずれにしても糖尿病に詳しい透析専門医の指導・指示に従って適宜・適切に血糖コントロールをすべきでしょう。一言付け加えますと、どうも透析導入後の糖尿病の薬物治療は、腎障害に伴う耐糖能の悪化よりも腎障害に伴うインスリン分解及びインスリンクリアランスの低下の影響の方が強いため、導入後の血糖管理が一般的に楽になることもあって、Ⅰ型にせよⅡ型にせよ、導入前の薬物治療をそのまま引き継いでいる傾向にあるように思います。そして、透析日の透析中は透析によって透析液や補充液のグルコース濃度との関連から、血糖値は下がる傾向(私のようなHDFはなおさら)にあり、透析日の薬物はいずれも適宜減量という糖尿病透析患者さんも見受けられます。
 因みに、一時(平成16年12月)「HbA1c」が「8%」、「グルコース」朝食後2時間後値が「260mg/dl」あった私の場合の例ですが、その後平成17年1月に入ってから、2週間のデイリーの食前食後血糖値推移(日を逐うごとに低下傾向)と過去1年間の「HbA1c」値推移(直近平成17年1月3日検査数値7.4%)も付して、わが腎クリニックの属するグループ内の数少ない「糖尿病専門医かつ透析専門医」に相談した結果、そのドクターの指示内容(回答)は次の通りでした。(参考まで)
 ①インスリン療法へ切り替える必要はなく、経口血糖降下剤「ファスティック(一般名:「ナテ
  グリニド」)」から、(より速効性・効力が強い)「グルファスト(一般名:「ミチグリニド
  」)」毎食5分前(1-1-1)1日3錠(30mg)に変更する。(平成17年1月17日
  より変更済)
  これで、2~3ヵ月後改善しなければ、「アマリール1mg〔一般名:スルフォニル尿素系
  SU)の第三世代「グリメピリド」〕」を食前(非透析日1-1-1、透析日0-1-1)
  服用等を考慮する。
   尚、「グルコバイ(一般名:αグルコシダーゼ阻害薬の「アカルボース」)」や「ベイスン
  (一般名:αグルコシダーゼ阻害薬の「ボグリボーズ」)」は、胃腸障害を考えて、糖尿病
  透析患者にはあまりおすすめしない。
 ②食後1時間してから、上半身のみでもよいので、5~10~15分(慣れるに従い時間を増
  やす)体操をしましょう。(筋肉を動かすことが重要です。)
ということで、現在はデイリーの食前食後血糖値と「HbA1c」値を糖尿病透析患者なりに適正に保つべく、常にインスリン療法への切り替えということも視野に入れながら、私の場合は今のところ食事療法を基本に経口薬剤療法を継続しているところです。
平成18年7月現在の私の糖尿病経口薬剤の種類(商品名・一般名)と服用時期・服用量は次の通りです。
 ①商品名:「アクトス30mg」(一般名:「ピオグリタゾン<インスリン抵抗性改善薬>」)
  毎朝食直前1錠(非透析日・透析日に拘わらず)、1日1錠30mg
 ②商品名:「アマリール1mg」(一般名:「グリメピリド<スルフォニル尿素系・第三世代>」)
  毎朝食直前1錠・毎昼夕食直前2錠(非透析日・透析日に拘わらず)、1日5錠5mg  
 尚、上記にありました糖尿病の病態による分類を次に掲げておきます。
 ◆Ⅰ型(インスリン依存性糖尿病<「IDDM」>)
     自己免疫性等によるすい臓のβ細胞の破壊に伴い、絶対的なインスリン欠乏に至る。若年層
     に多く、インスリン療法が適応となる。
 ◆Ⅱ型(インスリン非依存性糖尿病<「NIDM」>)
     インスリン分泌低下やインスリン抵抗性によるインスリンの相対的不足。まず食事療法や運
     動療法をした上で、経口薬またはインスリン療法を行う。
 尚、2009年12月に新発売された新経口2型糖尿病薬を次に紹介しておきましょう。
①一般名:「シタグリプチンリン酸塩水和物」
②商品名:「ジャヌビア」「グラクティブ」(それぞれ25mg・50mg・100mg)
③特 徴:日本で初めての選択的DPP-4(ジペプチジルペプチダーゼ-4)阻害薬で、国内では10年ぶりの新しい作用機序を持つ経口2型糖尿病治療薬です。(1日1回服用でいつでも服用可)
(本薬剤の詳細は、このページ(クリック)を参照して下さい。)

21】血液浄化療法の新しい治療法・治療モードついて

「血液浄化療法の新しい治療法・治療モード」について、研究レベルから臨床応用されているものまで含めて12アイテムを簡単な解説を付して載せておきます。私も、これらの「血液浄化療法の新しい治療法・治療モード」については、現状では腎移植がままならない状況の中で、一層のQOLの維持・向上と長期生命維持に向け、今後実際の臨床の場でさらに進展することを透析患者の一人として大きく期待をしているところです。

1.長時間透析
 わが国では、1回4時間透析が定着してきている観があるが、これより長い長時間透析(6時間とか8時間とか)による透析量(Kt/V)の増大が死亡率の低下につながることは既に報告されており、これは栄養状態が良好に保たれていることが前提(「V」が大きくなった状態)に考えれば、「Kt/V」の「V」よりも「Kt」、「Kt」の中でも「K(クリアランス)」には限界があるので、「t」即ち透析時間の延長が必要になると考えられる。
 こうした長時間透析により、中分子量物質の除去アップ、適切なドライウエイト(基礎体重)の設定による心機能の改善と良好な血圧コントロール、栄養状態の改善による健常者と同等の体格とQOLの向上、心・脳血管系合併症等による死亡率の低下等が報告されている。ただ、長時間透析に対しては診療報酬のみで言えば医療側のメリットはなく、患者サイドにしても、長時間透析(これに限らないが)に対するコンプライアンス(受容)が得られるだろうかという理屈抜きの問題もあり、その普及には今後の透析患者一人一人の意識の向上も必要である。

2.連日血液透析
 連日透析は、週5~7日血液透析を実施する透析治療(「DHD」)と定義され、この「DHD」は、
①週6日間・短時間(1回1.5~2時間)施行する「連日短時間透析(SDHD)」と、
②自宅において夜間(睡眠中)に週5~7日間・1回8~10時間施行する「夜間連日家庭透析(DNHD)」に大別される。連日血液透析の効果と問題点は次の通りと臨床報告されている。
<効果>
①高血圧の改善(降圧薬の減量・中止)
②左室肥大の退縮
③貧血の是正(EPO製剤の減少・中止)
④栄養状態の回復(DWの増加)
⑤QOLの向上
⑥不均衡症候群の減少
⑦高リン血症の改善
⑧睡眠障害の改善
⑨生命予後の向上
⑩性機能の向上
<問題点>
①ブラッドアクセス関連
②医療廃棄物の増加
③医療費の増加
④患者の通院負担(「SDHD」の場合)の増大
⑤保険制度の未整備

3.在宅血液透析
 在宅血液透析(「HHD」)については、本コンテンツ(【3】家庭透析について)でもその内容を紹介しているが、わが国では1998年4月に公的医療保険が認められたものの、未だに透析患者に占める割合が0%と極端に低く患者数は100名を超えた程度であり、その普及が遅々としている。その理由としては、①介助者の必要、②自己管理能力、③緊急時の対応及び管理体制、④導入教育、⑤保険上の問題(保険点数の低さ・包括化されすぎ・訪問看護料設定なしなど)、⑥社会的認識の低さ等、「HHD」特有の問題点が挙げられる。
 しかしながら、「HHD」でできる夜間・長時間透析・短時間頻回透析は、前記のように1日4時間・週3回の標準的な透析に比べ一言で言えばかなり生命予後が良好で、その有用性が報告されており、「HHD」は十分な導入教育と日常の管理体制の下で安全性は確立されるので、今後の一つの選択肢である。

4.内部濾過促進型血液透析
 内部濾過促進型ダイアライザーについては、本コンテンツ(【6】内部濾過促進型ダイアライザーについて)でもその内容を紹介しているように、要するに「内部濾過促進型血液透析」とは、ダイアライザー内部で生じるいわゆる「正濾過」と「逆濾過」即ち「内部濾過」を意図的に促進し、より効率の高い溶質除去を目指す血液浄化法の新しい治療法・治療モードではあるが、現在までに「内部濾過促進型血液透析」の明確な定義は存在しない。換言すれば、どの程度の内部濾過が生じていれば、これを「内部濾過促進型ダイアライザー」と呼ぶかに関する基準はない。この「内部濾過」は原理的には、ダイアライザーの中空糸の形状(中空糸の内径を小さくする・有効長を長くする)や中空糸充填率の増加等により、比較的に容易に促進されうるが、臨床的安全性を確保しつつ、実際的効果を十分に発揮させるには、設計変更の程度等に関してさらに検討が必要である。
しかしながら、通常の血液透析とほぼ同等の環境下即ち1本のダイアライザー内で簡便に後希釈の血液透析濾過(HDF)に匹敵する溶質除去の改善をもたらしうる「内部濾過促進型血液透析」は、血液浄化法の基盤技術として、今後注目に値するものである。また、併せてこの方法を施行する際には、大量の透析液が体内に流入するため、その清浄化により一層の配慮が必要である。
尚、既に中空糸が長尺化されたもので、ある程度の内部濾過促進が確認されているダイアライザーが市販されているが、今後「内部濾過促進型ダイアライザー」の明確な分類とそれに応じた保険診療上の報酬が得られれば、この種の治療法に対する関心は一層高まるであろう。

5.逆濾過透析液を利用した血液透析濾過
「逆濾過透析液」とは、膜を介して逆濾過された透析液の総称である。「オンラインHDF」における置換液も基本的には 「逆濾過透析液」と解釈されており、2本のフィルタ(ダイアライザーとエンドトキシン除去フィルタ:「ETCF」)を使用することにより、ダイアライザーで濾過を、「ETCF」で逆濾過を行う。
 従って、「逆濾過透析液」を利用する血液浄化法即ち血液透析濾過は、①「オンラインHDF」②「プッシュ&プルHDF(P/PHDF)」③「内部濾過促進型血液透析(IFEHD)」に大別される。(①②の具体的内容は本コンテンツ<【9】「オンラインHDF」と「プッシュ&プルHDF」について>参照)いずれも、膜を介して濾過された透析液が置換液として血液中に流入するため、逆濾過透析液の作成と水質維持には厳重な管理(ET濃度のみならず細菌数含め)が必要である。
 この3つの治療法のうち、「オンラインHDF」と「プッシュ&プルHDF」は、大量濾過によりアルブミン近傍に至る大分子量物質の高率な除去が可能なことが特徴であり、臨床的にみてもEPO抵抗性貧血、透析アミロイドーシスに起因する関節痛、掻痒症・イライラ感・不眠等の不定愁訴、抹消神経障害等、ハイパフォーマンス(HPM)膜を用いた血液透析(HPM-HD)では改善困難な透析関連合併症に対し有効であり、長期的には動脈硬化の抑制、低栄養状態の改善等透析患者の生命予後を含めた臨床効果が期待されている。
 一方、「内部濾過促進型血液透析」では、濾過量が測定できないことが問題となるが、通常の「HD」と同様の手法で「HDF」が施行できると言われている。

6.連日頻回血液濾過
 様々な形態の連日血液透析が模索されているが、いずれも血液透析には水処理システム・水質管理が不可欠であり、これが在宅・連日透析の大きな足かせになっている中で、「血液濾過(HF)」は補充液さえあれば水処理装置そのものが不要であり、この利点を生かしたものが「連日血液濾過(dailyHF)」である。「連日血液濾過」装置は、血液流量・補充液流量・濾液量ポンプの3つがあればよく、補充液はバッグで供給することが可能である。「連日血液濾過」は1回に使用する補充液は少なくてよく、十分宅配できる量であり、既存のCAPD療法のシステムを模倣すれば容易に「連日血液濾過」が可能となる。
 このような考え方により、アメリカではNxStage社がこのシステムの確立を始めており、1回1.5~2時間・週6回・1回15Lのバッグ式補充液使用といった「血液濾過(HF)」を行い、さらにその液を用いて回路の洗浄充填並びに回収をも自動的に行うものである。また、透析回路はダイアライザーと血液回路が一体となったカセット式であり、患者はそれを装置にはめ込むのみで、開始・終了が可能となる。
 以上のように、「血液濾過(HF)」は、CAPDで確立されたシステムからの転用可能という意味でも、在宅透析の標準となる可能性を秘めている。バッグ式置換液の配送システムが確立されているCAPDメーカーの役割を期待したいところである。

7.濾過再生型血液濾過(人工尿細管型)
 現行の透析(濾過)治療は、糸球体機能を不完全に代行するにすぎず、尿細管の代謝・内分泌機能はほとんど働いていない。従って、次世代の腎臓代行治療として提示されるべきは、①間欠治療を持続治療(濾過)に換え、②尿細管機能を添加された治療法である。そこで、考えられているのが、濾過再生型人工腎臓として、持続血液濾過とバイオ人工尿細管を結合させたバイオ人工腎臓である。
 このメカニズムは、バイオ人工腎臓の第一ステップとして1日10Lの持続濾過を行うには、患者血液から持続血液濾過器(胸のポケットに収容可能)により7ml/分の濾過液を得て、バイオ人工尿細管デバイスにより4ml/分を再生して血液に戻し、飲食により補うことから3ml/分を廃棄するシステムである。7ml/分の濾過を得るには膜面積0.2~0.3㎡の持続血液濾過器を用い、血流量、濾過液量の制御は2連のヘッドポンプを使用する。この人工糸球体としての1本の持続血液濾過器が1週間機能するためには、人工膜表面への抗血栓性物質による修飾が必要であり、また人工尿細管デバイスにはポリスルホンあるいはポリイミド膜(膜面積0.8~1.0㎡)の中空糸内面にヒト近位尿細管上皮細胞をコンフルエントな単層を形成させたものを用い、この人工尿細管デバイスが1ヶ月機能するには、遺伝子導入による細胞の不死化・安定化が必要である。

8.膜蒸留技術による液再生型血液浄化への期待
 慢性腎不全治療として最も実績のある血液透析療法は、「拡散」及び「限外濾過」を原理とした膜分離技術が利用され、様々な改良が重ねられてきたが、現在、技術的に円熟期を迎えていると思われ、今後技術的なブレークスルーなしには患者の病態を大幅に改善させることは不可能と思われる。そこで、「拡散」や「限外濾過」以外の分離技術を主体とした新しい治療法、特に膜蒸留技術を利用した血液浄化療法が研究されている。膜蒸留とは、疎水性多孔質膜間に温度差等に基く蒸気圧差を加え、水蒸気を膜透過させる技術であり、既存の中空糸型ポリプロピレン膜を用いた試作モジュールを用い、中空糸内外に温度差を与えながらそれぞれ再循環させる実験を施行したところ、温度差や流量を増大させると一定レベルまでは水の移動量に増加がみられた。今後、操作条件やモジュール設計等の適正化に検討を要する。
 
9.持続的血液浄化法
 近年、血液浄化法は重症患者管理において必須の治療手段となっており、なかでも「持続的血液浄化法(「CBP」)」は、多くの有効性があり、重症患者に対して簡単かつ安全に施行可能なことから重症患者における第一選択の血液浄化法となりつつある。特にポリメチルメタクリレート(PMMA)ヘモフィルターを用いた「持続的血液透析濾過(「PMMA―CHDF」)」は人工腎補助療法としてだけではなく、サイトカイン除去に対しても施行される。慢性維持透析の分野では積極的に施行されていないのが現状であるが、ここでは適応する慢性腎不全症例に絞って列挙すれば次の通り。
 ①極端な心機能低下をきたしている症例
 ②重篤な不整脈が存在する症例
 ③意識障害があり脳圧の亢進が疑われる症例
 ④高尿素窒素血症や高血糖のために高浸透圧血症が疑われる症例
以上の慢性腎不全症例においても、「持続的血液浄化法(「CBP」)」は積極的に施行すべき考えられる。(躊躇なくICUの備わった高次機関に委ねる。)

10.高能率型腹膜透析
 慢性腎不全対策の血液浄化療法として大部分は血液透析が行われているが、血中濃度が安定しやすく、かつ日常生活を送る上での自由度が高い「腹膜透析(PD)」もそんなに多くはないが継続されている。「腹膜透析(PD)」の最大の問題点は長期における合併症であるが、腹膜透析と血液透析等が簡単に行える在宅型の装置があれば、患者の自由度をある程度確保し、腹膜機能を維持しながら長期にわたる治療が可能となるという観点から、新しい高能率型腹膜・血液透析装置が開発されている。
 「腹膜透析(PD)」では、溶質除去率が腹膜機能一定であれば透析液量と交換頻度によって決まるため、十分な量の透析液を使用して頻繁に交換した方が溶質除去率はよいが、バッグ式の透析液のみが使用されている現状の腹膜透析方式ではストックやセッティング操作等に問題があり、血液透析の個人用コンソールのように濃縮液やパウダー透析を用いて大量の透析液を使用することはできない。但し、注排液に時間がかかるため、夜間等の限られた時間内での治療ではおのずと使用量には限界がある。
それでも、十分量の透析液を簡便に使用し、かつ保存スペースも極力少なくするためには、パウダー型の透析原末もしくは濃縮された透析原液を用いる方法以外にはない。即ち、在宅で「高能率腹膜透析療法」を行うためには、オンラインHDF用個人用透析装置を改良して腹膜透析も可能なようにする。但し、腹膜透析用の濃縮透析液もしくはパウダー透析液が存在しないため、新たに作成する必要がある。回路も、現状のオートサイクラーではかなり複雑で準備に手間取るため、ワンタッチのカセット型(A4版程度)にする必要があり、さらに無菌が確保できる方法で、かつコンピューターによろ全自動化が不可欠である。具体的には、カセット型回路を装置本体に置くだけでカセットを自動固定、種類の判定、プライミング等の準備を行い、患者がカセットから出ているチューブをカテーテルとつなげると、チューブ先端の圧力・温度センサーによって自動的に廃液が開始され、廃液終了後は注液に移行する。カテーテル圧を落差注排液と同様の圧力パターンとすることによって注排液の違和感を抑えることができる。カセットの種類を変更すればオンラインHDFも可能である。

11.透析液再生型腹膜透析
 「CAPD(連続的腹膜透析)」における小分子溶質の除去能改善を目的として、「CRPD(連続的再循環腹膜透析)」と「BPD(断続的流出入型腹膜透析)」の2種類の「透析液再生型腹膜透析」が考案されている。
 「CAPD(連続的腹膜透析)」は、①ブラッドアクセスが不要、②不均衡症候群はほとんどない、③抗凝固薬が不要、④循環動態への影響が極めて軽徴、⑤患者の社会復帰が容易等、「血液透析(HD)」にない様々な特長をもつにも拘らず、今ひとつ普及しない理由の一つに小分子溶質の除去不足が挙げられる。「CAPD」の溶質除去能を増大させるためには、透析液を増やすか、使用した透析液を再生・再利用するしかない。このうち、後者を実現するのが「透析液再生型腹膜透析」である。具体的には、「CRPD」では新開発のダブルルーメンカテーテルを用いて連続的に対外循環させ、「BPD」ではリバーシブルポンプを用いて体外に流出入させ、それぞれ外部ダイアライザーによって連続浄化する腹膜透析であり、いずれも「CAPD」に比べ、システムが複雑で除水コントロールが若干難しいものの、高い尿素・クレアチニン除去能が確認され、さらに「透析液再生型腹膜透析」は高能率のみならず、重炭酸透析液の使用やアルブミン漏出防止効果があり、今後汎用化が期待される治療法である。

12.血液透析、腹膜透析併用療法
 腹膜透析(PD)患者に血液透析(HD)を併用する治療法(併用療法)は、元来「PD」の透析不足を「HD」で補うために生まれたが、この併用療法は異なる治療法を混用するため、治療スケジュールの設定と透析量の評価には理論的な取り扱いが必要である。
 「PD」は「HD」に比べて残腎機能の保持にすぐれているが、そのため「PD」での透析量は残腎機能によるところが大きく、ひとたび残腎機能が消失すると体液過剰や溶質除去不足が問題となるので、残腎機能が低下した場合の対応の選択肢の一つとして併用療法が考えられたわけである。
この「PD」に「HD」を併用する方法は、適正な体液管理や至適透析量を確保することができる治療法であり、また「HD」を併用することにより腹膜休息を行うことができ、腹膜機能の維持にも有用と考えられる。以上の点を含め整理すると次の通り。
①「PD」+「HD」併用療法には、定期的な「HD」併用(週に1回、2週に1回など)、不定期な「HD」併用(腹膜炎や一時的な除水不良時、「PD」導入期の除水不良時など)等様々なモードがあり、
②併用療法の目的は、適正な体液管理、透析量の確保、腹膜機能の維持(高濃度のブドウ糖液の使用頻度を減らすなどにより)である。
③除水量不足や溶質除去不足で「HD」併用を開始することが多い。
④1回の「HD」にて、「PD」の約3日分に相当する溶質を除去できる。
⑤体液管理(水分・塩分除去)については、2週に1回程度の「HD」併用でも可能である。
 尚、併用療法に関し、(「PD」+「HD」併用療法研究会指針)を次に紹介しておきましょう。
(1)適応
 ・残腎機能が低下し、溶質クリアランスが不十分な時
 ・残腎機能が低下し、限外濾過が不十分な時
(2)総溶質クリアランスとしての開始時期の基準
 ・週当りのCcr50l/week/1.73㎡(体表面積)未満
 ・ 週当りのKt/V2.0未満
(3)治療モード
 ・週に5~6日の「PD」と週1回の「HD」または「HDF」
 ・1回当りの透析時間は4~5時間
 ・ダイアライザーはハイフラックス(ハイパフォーマンス)膜使用
(4)併用療法の中止及び禁忌
 ・腹膜の障害があり、被嚢性腹膜硬化症(EPS)へ進展するような症例
 ・週に2回以上の「HD」を必要とする症例
 ・腹膜平衡試験(PET)で常に「high trnsport」を呈する症例

【22】知っていて損はしない透析関連のお話しについて
<ここまで進歩した異種の動物からの腎移植>
=「ヒト」と異なる抗原(「GAL抗原」)を除去した「ブタ(「GAL抗原ノックアウトブタ」)」の作製成功の意味するもの=
進化の過程で四つ足の哺乳類と「サル」より上の霊長類で決定的に異なることを示すものは、実は体を構成するタンパク質に付いているマークであったのです。即ち、四つ足哺乳類(「ブタ」)では「GAL抗原」と呼ばれるマークが臓器(腎臓)を作っているタンパク質に付いていて、『この腎臓は「ブタ」の腎臓で、「ヒヒ」や「ヒト」の腎臓ではないぞ』と語るわけです。
このように、「ヒヒ」や「ヒト」等の霊長類は生まれながらにして、もし自分の体内にこの「GAL抗原」というマークの付いたタンパク質(臓器、腎臓)が入ってきたときには異物として排除するように「GAL抗体(GALの付いたタンパク質を溶かしてしまう毒)」を作る機能を持った「B細胞」と呼ばれる白血球を持っているわけです。
 もし、生まれながらにして、この「GAL抗原」と呼ばれるマークだけが欠如した「ブタ(「GAL抗原ノックアウトブタ」)」を作ることができれば、「ブタ」の腎臓を「ヒト」や「ヒヒ」に移植した場合、「B細胞」は「ブタ」の腎臓を攻撃することはないので、「B細胞」による拒絶反応は起こらないはずです。この「ブタ」が2002年に作られました。
 しかし、「ヒト」の体の中に異種の動物のタンパク質が入ってきた場合のこのタンパク質を異物として溶かしてしまう機構には「B細胞」の他に「T細胞」と言って直接異種のタンパクを攻撃しにいく白血球が存在します。例えて言うなら、「B細胞」がB26戦闘爆撃機なら、「T細胞」は敵と白兵戦を繰り広げる歩兵のようなものです。この歩兵即ち「T細胞」に指令を与える司令室が体の中では「胸腺」と呼ばれる組織です。もし、この「胸腺」を「ブタ」の腎臓にくっつけて「ブタ胸腺付腎臓」を「ヒト」に移植できれば「ヒト」の体内でこの「ブタ胸腺」が「ブタ腎臓」を攻撃してはいけないという指令を出すため、「ヒト」の「T細胞」は、移植した腎臓を攻撃しないという状態が作り出され拒絶反応は起こらなくなるというわけです。
 以上の仕事は、「マサチューセッツ総合病院」の「D.H.Sachs」と「山田和彦先生」らのグループにより、2003年から2004年にかけて既に「ヒヒ」の実験で成功しました。
「ヒヒ」も「ヒト」も遺伝子レベルではほとんど一緒なので、次は「ヒト」での臨床応用の段階です。最後にクリアーしなければならないハードルは「ブタ」の遺伝子の中に紛れ込んでいる「レトロウイルス」の問題で、この「レトロウイルス」が「ヒト」に無害であることが証明されるかもしくはこれを駆除する方法が確立されれば、すべての臓器(心臓、肝臓、すい臓、肺、小腸、角膜、骨等)が「GAL抗原ノックアウトブタ」から提供されることになり、詰まるところ透析患者はこの異種移植により透析から解放され、世の透析施設は必要なくなるということになります。
「ヒト」への臨床応用は、2004年4月11日に開催された「日本泌尿器科学会」のシンポジウムにおいて、「山田先生」は5年後を目指すと申されたそうです。

【23】透析と運動について
 透析をはじめる前の保存期のときは「運動禁止・できるだけ安静に」と言われた透析患者も、透析を始めたことでその後は確実に楽に身体を動かすことができるようになってきたと思います。これからも透析に加え「食事・薬剤・運動・休養」が欠かすことのできない大切なものになっているわけですが、このうち運動は薬と比べ忘れられ後回しにされがちです。体調を整え、長期透析の合併症を予防していく上で、運動は重要な役割を果たします。「運動するとか」「体を動かすとか」と言うと、「筋力がつく」「持久力がつく」といったことを連想しがちですが、それだけでなく運動することで透析患者の全身には様々な効果があります。主なものを挙げますと次の通りです。
 ①血圧の低下・安定
 ②抹消循環の改善
 ③貧血の改善
 ④糖代謝の改善
 ⑤脂質代謝の改善
 ⑥筋力増強
 ⑦持久力増強
 ⑧柔軟性・敏捷性の向上
 ⑨骨密度の増加
 ⑩肺活量の増加
 ⑪食欲増進
 ⑫便通の改善
 ⑬シャント肢の血流改善
 ⑭ストレス解消
 ⑮抑うつ感・拘束感の解消
透析患者の場合、持久力を中心として全身の身体機能の改善をはかることのできる有酸素運動と関節を中心とした運動の2つが重要になりますので以下に記述します。

【1】有酸素運動
運動には有酸素運動と無酸素運動の2種類があります。有酸素運動とは十分呼吸をして行う運動を指し、身体に酸素を取り込むことで糖や脂質を効率よくエネルギーに変えていきます。そのため代謝効率がよく、疲労物質の蓄積を避けることができます。さらに全身を十分に使った動きのある運動が多く、安全に長時間続けることができます。これに対し、無酸素運動は酸素が十分取り込まれないため、疲労物質が蓄積しやすく身体への負担が大きいため避けましょう。
 次に有酸素運動の「強さ」「時間・頻度」「時間帯」「運動の流れ」及び「生活の中の運動」について列記します。
 (1)運動の強さ
 一般的に運動の強さの設定には最大酸素摂取量が使用されます。
 強さとしては最大酸素摂取量の50~70%が最も適しています。透析患者は透析導入後は著しく体力が低下している状態なので、40%程度の運動から始め、徐々に強くしていくことが必要です。しかし、正確に個人個人の最大酸素摂取量を測定するには様々な設備を必要とし、またいつでも測定するというわけにはいきません。そこで、次のような方法が代用されています。
 ①脈拍を目安にする。
  ・運動中の脈拍を測定し、強さの目安にします。
  ・脈拍は最大酸素摂取量とよく相関します。
    <運動強度別予測7心拍数>

運動強度の割合

(%VO2max)
20歳台 30歳台 40歳台 50歳台 60歳台 70歳台
20 88 86 84 82 80 78
30 102 99 96 93 90 87
40 116 112 108 104 100 96
50 130 125 120 115 110 105
60 144 138 132 126 120 114
70 158 151 144 137 130 123
80 172 164 156 148 140 132
90 186 177 168 159 150 141
100 200 190 180 170 160 150
(池上晴夫:運動生理学,134P,1995,朝倉書店より一部改変)
 <注>VO2max=最大酸素摂取量
 ②主観的運動強度
  主観的運動強度は、運動の強さを自覚症状により主観的に判断するものです。最も簡単で
  手軽に行え、最大酸素摂取量や脈拍ともよく相関します。
 <主観的運動強度>
  主観的運動強度 強度
6    
7 very,very light(非常に楽)=ここからスタート= 40%
8    
9 very light(かなり楽)  
10    
11 fairy light(楽) 60%
12    
13 somewhat hard(ややつらい)  
14    
15 hard(つらい) 80%
16    
17 very hard (かなりつらい)  
18    
19 very,very hard(非常につらい) 100%
20    
(平沢由平:透析患者の運動療法<日本メディカルセンター>より引用)
 <注>7~13が透析患者に適合(段階を踏む)

 (2)時間・頻度
  最初は1日に10~20分位から始めて、慣れてきたら徐々に増やしていき、30~40分位の
  運動を行いましょう。頻度は、透析日以外を中心に週3~4回行いましょう。
 (3)時間帯
  暑すぎたり寒すぎたりする時間帯を避け、快適な気温の時間に運動しましょう。空腹時や食事の
  直後や透析直後は避けましょう。
 (4)運動の流れ
  運動するときには、けがの防止や疲れが残るのを避けるため、準備運動・整理運動を行い
  ましょう。特に透析患者の場合は筋肉・腱や骨が弱くなっており、けがをしやすいため、
  準備運動はしっかり念入りに行いましょう。
 (5)運動の種類(お奨め)
  ①ウォーキング
   ・最も手軽にいつでも、どこでも楽しめて運動量も身体の状態に合わせて加減しやすい。
   ・少し速足で姿勢よく歩こう。
   ・万歩計を利用するのもよい。
  ②ジョキング
   ・靴はクッションのよい、自分に適したものを選ぶ。
   ・関節に痛みのある人は避ける
  ③水泳
   ・歩いたり、泳いだりと多彩に楽しめる。
   ・関節に痛みのある人には、体重がかからず適している。
  ④軽スポーツ
   ・ゲートボール、ゴルフ、テニス等多くの人と交流ができ楽しめる。
  ⑤NHKラジオ体操・テレビ体操
   ・第1、第2は体力のある活動的な人向き
   ・第3「みんなの体操」は体力が低下している人向きの全身運動
 (6)生活の中の運動
   ①家事の励行(掃除、洗濯、買い物等)
   ②乗り物を控える
   ③シャント肢の運動
   ・ハンドグリップやゴムボールを利用して握力をつける運動をしましょう。シャント肢の
   血管が発達し、血流改善に有効です。1回に20~30回位できるものを選びましょう。
  (ハンドグリップ)
  この「ハンドグリップ」のインターネット販売サイトを次に紹介しておきましょう。
    http://www.kenko.com/product/seibun/sei_721035.html

【2】関節を中心とした運動
 ここでは身体部位別の運動で、障害の出やすい関節を中心に紹介します。これらの運動はどこでも
 手軽にできるものばかりで、筋力や柔軟性を養うのに効果的です。透析が長期にわたると関節の
 動きが悪くなったり、痛みが出たりという合併症がありますが、それらを予防するだけでなく、
 症状を和らげることにも役立ちます。「運動のポイント」「肩の運動」「手指の運動」「胴体の
 運動」及び「足の運動」について列記します。
 ①運動のポイント
  ・すべての運動は安定性のある椅子に座って行う。
  ・背筋を伸ばして、足は肩幅に開いた姿勢で行う。
  ・できるだけ大きく反動をつけないでゆっくりと行う。
  ・動きに合わせてゆっくりと呼吸する。(息を止めない。)
  ・痛みのあるときは、少し痛いなと思う程度まで動かして止める。
  ・まずは10回位から始めて徐々に増やしていく。
 ②肩の運動
  タオルや棒等を持って行いましょう。
  ・バンザイをする。
  ・肘を伸ばしたまま手を後ろに回し上に上げる。
 ③手指の運動
  ・手を握ったり広げたりする。
 ④胴体の運動
  ・手を膝の上に置いてゆっくり身体を前に倒す。
  ・バンザイをして身体を左右に倒す。(転倒に注意)
  ・両手を前に出し身体を左右にひねる。
  ・両手を上に上げ深呼吸しながら胸を広げる。
 ⑤足の運動
  転倒しないように椅子の端を持って行いましょう。片足づつ行いましょう。
   ・足踏みするようにももを上げる。(膝は高く上げる。)
   ・膝をまっすぐに伸ばす。
   ・踵(かかと)をつけたままつま先を上げる。
  次に「運動の禁忌と中止基準」「運動時の注意点」等について言及しておきましょう。
【1】 運動の禁忌と中止基準
   運動はまず医師と相談し、許可を得てから始めましょう。但し、以下の病気のある場合は
   運動を行うことができません。
    <禁忌となる主な病気>
     ・心疾患(心不全、透析心、急性心筋梗塞、不整脈等)
     ・感染症(肺炎、シャント感染、尿路感染、肝炎、敗血症等)
     ・消化管出血
     ・眼底出血
     ・重度の骨・関節障害
   また、以下のような運動の中止基準にあてはまる場合は運動を中止しましょう。
    <運動の中止基準>
     ・透析不足で尿毒症状態
     ・最高血圧が180mmHg 以上、または最低血圧が100mmHg以上
     ・いつもより血圧が高すぎるか、低すぎる。
     ・安静時脈拍数が120拍/分以上
     ・いつもより脈拍数が多すぎるか、少なすぎる。
     ・運動前に動悸、息切れがある。
     ・発熱している。
     ・体調が悪い。
     ・手術後(医師の許可が出るまで)
     ・以上の他、医師に運動を行わないように言われた人
【2】運動時の注意点
   ①医師に相談し慎重に始める。
   ②体調の悪い時、食事が食べられない時は行わず、運動の途中で調子
    が悪くなったら無理をしないで中止する。              
   ③空腹時や食事の直後、透析直後の運動は避ける。
   ④一度に強い運動を行うより、弱い運動を数回に分けて行う。
   (持久力をつけるのに効果的。また関節の痛みがある場合はこの方法で行う。)
   ⑤運動前後に必ず準備運動、整理運動を行う。
   ⑥軽度の運動から徐々に始める。
   ⑦動きやすい服装で行う。
   ⑧運動は自分のペースで行う。
   ⑨シャントは閉塞の恐れがあるため、圧迫したり打ったりしないよう充分注意する。
   ⑩水分管理の悪い人は運動を控える。(体重増加が著しいと、強度の運動負荷により
    心不全を引き起こすことがある。)
   ⑪関節の痛みがある場合は、痛みが出ない範囲で行う。(痛みを我慢し無理をすると、
    関節に痛みが増悪することがある。)
 尚、糖尿病透析患者の場合、腎不全と糖尿病との両面から管理が必要ですが、運動を行うことで、インスリン感受性が改善され、血糖コントロールが良好に保たれます。
 また併せて、体脂肪を中心とした減量や脂質代謝・高血圧の改善、ストレス解消、骨量減少の予防、心肺機能の改善、筋力増強等身体に様々な効果をもたらします。但し重度の糖尿病性網膜症、足壊疽を起こしている場合は運動禁忌ですし、血糖コントロール不良や重度な神経障害のある場合は、医師と相談する必要があります。そして、糖尿病透析患者の運動時の注意点は既述の一般的注意項目に加え、以下のことに注意が必要です
  (1)運動と足の手入れ
    運動前には足の傷の有無・爪や皮膚の色を確認しましょう。運動するときは靴下を履き、
    圧迫しない靴を選んで行いましょう。運動後、足を清潔に保つことも忘れずに行いましょう。
  (2)激しい運動は避ける
    運動が強すぎると、低血糖発作や眼底出血の恐れがあります。また、足への負担が大きく
    なり、末期神経障害を進行させる危険があります。
  (3)血圧の変動に注意する
    運動前後に血圧測定を行い、起立性低血圧の予防をしましょう。
最後に、透析患者が透析中にベッド上で行える簡単な体操いわゆる「透析体操」を紹介しておきましょう。透析中の運動も十分に効果があり、透析患者の「ADL(日常動作)」の改善につながる可能性があると言えます。(体調の悪いときはしない。)
(1)上肢の体操
 ・手首の運動
  非シャント肢の手首を曲げたり伸ばしたりする。そのまま、3~5秒間保持する。
 ・掌握運動
  グー、パーを繰り返す。
 ・腕を上げる運動
  非シャント肢を垂直になるように上げる。そのまま、3~5秒間保持する。
  (疼痛時にはしない。)
(2)下肢の体操
 ・足首の運動
  足首を左右の足を同時に起こしたり、伸ばしたりする。それぞれ、3~5秒間保持する。
 ・足を上げる運動
  片足を膝(ひざ)を伸ばした状態で左右交互に上げる。それぞれ、3~5秒間保持する。
 ・腰上げ
  膝(ひざ)を曲げて腰を上げた状態で3~5秒間保持する。


【24】透析と不整脈について

透析患者では、虚血性心疾患や高血圧性心臓病、弁石灰化に伴う弁膜症等の器質的心疾患の合併が多く、これらが不整脈の大きな誘因になります。また、体液貯留、貧血、動静脈シャント、高血圧の存在は心負荷を増大させ、不整脈を誘発します。透析によりこれらの心負荷が大きく変化、加えて電解質バランスも急激に変動するため、特に透析後半になると不整脈が出現しやすくなります。さらに、透析前にみられる「高カリウム血症」では、突然死に関連する「心室頻拍」や「心室細動」「高度徐脈」を生じる危険性があります。
 不整脈は一般に心拍数が100/min以上になる「頻脈性」と50/min以下になる「徐脈性」に分けられ、さらに伝導障害の発生場所により「上室性」と「心室性」に分けられます。(因みに、人間の心臓は一生のうちに約24億回も拍動を続けます。)
 透析患者では、「上室性(心房性・房室接合部性)期外収縮」「心室性期外収縮」「心房細動」「心房粗動」や「発作性上室性頻拍」等の「頻脈性不整脈」や「洞不全症候群」「房室ブロック」等の「徐脈性不整脈」を多く認めます。すべての不整脈に電気的除細動等の緊急の措置が必要なわけではなく、経過観察をしながら、透析時間を含んだホルダー心電図や心臓超音波検査で検索することもあります。また、必要であれば循環器専門医と相談の上、狭心症や心筋梗塞等の虚血性心疾患に伴う不整脈が疑われる場合は、運動負荷・薬剤負荷心電図検査や心臓カテーテル検査を行います。そして、最終的な診断結果として電気生理検査を行い、「頻脈性不整脈」であればカテーテル焼灼術(心臓カテーテル・アブレーション)や植え込み型除細動器(ICD)の適応を、「徐脈性不正脈」であればペースメーカーの植え込みを検討することになります。
 透析患者の場合、ホルダー心電図を用いた検討では、「上室性(心房性・房室接合部性)期外収縮」の頻度は、各報告の頻度を見ると、「68~94%」と一番高いですが、血行動態に影響を与える「発作性上室性頻拍」や「心房細動「心房粗動」は「1.9~2.8%」と低いです。「心室性期外収縮」を認める頻度も「46~86%」と高く、「洞不全症候群」「房室ブロック」等の「徐脈性不整脈」は、透析患者の「約10%」で認められます。
 不整脈の治療ですが、その目的は、突然死の予防と自覚症状の改善です。一般的治療として、過労・睡眠不足・精神的ストレス・過度の喫煙と飲食等により期外収縮が起こりやすくなる要因を避けたり、基礎疾患や透析治療の適切さなど不整脈を誘発する原因、誘因を確認することも必要です。薬物治療にあたっては、薬効とともに薬剤の排泄経路や腎不全症例での代謝、透析性を知って適切な投与量、投与方法を決定します。(具体的な「抗不整脈薬」は一番下の表参照)
 ここで、一般に頻出する不整脈について、「危険な不整脈」と「治療が必要な不整脈」と言われるものを区別して次に一覧表に整理しておきます。
頻脈性不整脈 徐脈性不正脈
  洞性頻拍(ST)
◎上室性頻拍(PSVT)
★心室頻拍(VT)
  心房性期外収縮(PAC)
◎心室性期外収縮(PVC)
◎心房細動(Af)・心房粗動(AF)
★心室細動(Vf)・心室粗動(VF)
★洞不全症候群(SSS)
★房室(AV)ブロック  
                 <注>①★印は「危険な不整脈」
                      ②◎印は「治療が必要な不整脈」
                      ③( )内は専門家が使う専門用語
以上の表の中で、「危険な不整脈」と言われるものの説明を加えておきましょう。

【1】心室頻拍
 P波の先行のない幅広いQRS波が心臓周期より早期に出現する心室性期外収縮が3連発以上続くものです。持続時間が30秒未満の非持続性心室頻拍と30秒以上の持続性心室頻拍に分けられます。
【2】心室細動
 振幅の異なる不規則な波形を認め、有効な心室拍動を得られない状態です。振幅の大きさにより、心室細動と心室粗動に分けられます。この心室細動は、透析患者における突然死の原因の約80%を超えるとも言われる「危険な不整脈」です。透析中のこの種の「危険な不整脈」はドクター一人で治療できるものではありません。スタッフとの連携が必要不可欠になってきます。実際の場面では、もちろん、心肺停止状態であれば蘇生を開始します。透析の返血を開始し、呼吸状態に応じて気管内挿管等を行います。抹消ルートを確保し、まず、「エピネフリン(気管支拡張薬)」1mgの静注を行います。除細動器が到着次第、電気的除細動を行います。必要に応じて、抗不整脈薬(「リドカイン」「硫酸マグネシウム」「塩酸プロカインアミド」等)を使用します。心電図モニターを見ながら、除細動を確認するまで、電気的除細動と抗不整脈薬の静注を繰り返します。除細動後も再発に注意しながら、原因検索を行います。虚血性心疾患等の原因疾患を固定できれば、その治療を開始することになります。
【3】洞不全症候群
 洞結節の刺激生成異常や心房の伝導障害により徐脈を来した状態で、脳虚血や心不全等が慢性に出現する病態を言います。大きく3群に分類されます。
   ・Ⅰ群:特に原因のない洞性徐脈が持続する状態
   ・Ⅱ群:洞停止または洞房ブロックが存在する状態
   ・Ⅲ群:徐脈頻拍症候群
【4】房室ブロック
 心房と心室間の伝導における興奮伝導異常を来した状態で、程度により、1~3度に分類されます。(2度以上が危険な不整脈)
   ・1度:0.2秒以上のPR延長のみでQRS波の脱落のないもの
   ・2度:ウエンケバッハ型(PR間隔が次第に延長してQRS波の脱落を繰り返すもの)、モー
    ビッツⅡ型(PR間隔の延長なしにQRS波が脱落するもの)
   ・3度(完全房室ブロック):PP間隔及びRR間隔は等しいすが、PR間隔が不規則なもの
 また、上記表中の「治療が必要な不整脈」のうち、「心房細動」ですが、「心房細動」とは、心房が無秩序に興奮する状態で、心電図上f波と呼ばれる細かい波とRR間の不規則なQRS波を特徴とする比較的よくみる不整脈です。初期であれば除細動を行いますが、慢性化した「心房細動」の場合は「ジギタリス製剤」やⅣ群不整脈治療薬(「塩酸ベラパミル」等)による心拍数のコントロールと抗凝固療法等の塞栓症予防が治療方針の基本となります。症状に乏しい慢性心房細動等は服薬コンプライアンスが悪いことも多くあります。透析と同じように今後つき合っていかなければならない病気であり、脳梗塞等の予防のために必要な薬はきちんと飲まなくてはなりません。
 尚、素人でも心電図の読み方の基本が理解できるインターネットサイトを次に紹介しておます。
 ①サイト名:「心電図は恐くない!..かも?」
 ②URL:http://okayama.cool.ne.jp/a_kaopi/
<注・参考>「心拍数」と「脈拍数」は同じか?
「心拍数」は心臓の1分間の拍動回数です。一方、「脈拍数」は手首や首で動脈に触れたものを数えたもので、通常は「心拍数」と「脈拍数」は同じですが、不整脈があるときなどは両者が一致しないことがあります。即ち、不整脈が起きると血圧が低い脈が出現することがあり、これは触知しにくく触れない脈があると、「脈拍数」が「心拍数」より少なくなります。このようなことがあるため、「心拍数」を正確に測定するには心電図記録が不可欠です。

★抗不整脈薬の代謝経路と透析性
(Vaughan William分類)




薬品名 主要
排泄路
半減期(hr) 透析患者
常用量
(mg)
透析患者
投与間隔
(hr)


特徴・副作用
健常者   透析患者

a
硫酸キニジン 6 4~14 100~200 4~16 不整脈・血圧
低下消化器
症状
塩酸プロカイン
アミド
肝・腎 2.5~4.9 5.3~5.9 800~
2,000
8~12 不整脈・消化
器症状・SL
E様症状
ジソピラミド 5~8 10~18 100~200 12から36 不整脈・低血
糖・排尿障
害・心機能障
コハク酸シベン
ゾリン(基本的に
は透析患者禁忌)
5~7 22 50~100 10~24 心機能障害
・低血糖・排
尿障害
塩酸プロパフェノン 2~4 やや延長 300~450 6~8 消化器症状
・肝障害
塩酸ピルメノール 7~11 11~17 50~100 12~24 消化器症状
・肝障害

b
塩酸リドカイン 2~2.2 1.3~3.0 2~3mg
分静脈内
  意識障害・呼
吸抑制・痙攣
塩酸メキシレチン 肝・腎 8~13 16 200~300 8~12 消化器症状
・血圧低下
塩酸アプリンジン 肝・腎 50 50 40~60 8~12 肝障害

c
酢酸プレカイニド 12~19.5 19~25 50~100 12 徐脈・血圧低
酢酸ピルジカイニド 4~5 23.7 25 24~48 不整脈・消化
器症状
塩酸プロプラノ
ロール
2.5~4.5 3 30~120 8~12 徐脈・気管支
喘息
酒石酸メトプロ
ロール
3 3 60~240 8~12 徐脈・気管支
喘息
アテノロール 肝・腎 3~6 3~5 12.5~25 24 徐脈・気管支
喘息
塩酸アミオダロン 19~53
(日)
30.9日 100~200 12~24 肝障害・甲状
腺障害・肺繊
維症
塩酸ジルチアゼム 7.3 4.7 40~240 8 心収縮力抑
制・血圧低下
塩酸ベラパミル 3.5 3.8 120~240 8 洞結節抑制
・房室伝道
抑制


ジゴキシン 肝・腎 32~48 80~120 0.0625~
0.125
48~60 食思不振・悪
心・嘔吐・不
整脈
ジキドキシン 140~
200
210 ~0.05 48~60 食思不振・悪
心・嘔吐・不
整脈
ATP   数分 数分 10~20
mg急速
静注
    徐脈・吐気・
血圧低下
<注>①Ⅰ群:ナトリウムチャネルを抑える薬 Ⅱ群:心臓の働きを活発にするカテコールアミンというホルモンが心臓の特定部位に結びつくのを遮断して、脈の乱れを整える薬 Ⅲ群:カリウムチャネルを抑える薬 Ⅳ群:カルシウムチャネルを抑える薬(注射薬のみ)
②SLE:全身性エリテマトーデス(DNA-抗DNA抗体などの免疫複合体の組織沈着により起こる全身性炎症性病変を特徴とする自己免疫疾患)
<参考>
「上室性不整脈」には、上表の分類Ⅰa群、Ⅳ群から開始し、Ⅰc群の投与も考慮され、「心室性不整脈」にはⅠb群から開始し、Ⅰa群、Ⅰc群さらにⅢ群の投与が検討されるのが一般的です。抗不整脈薬をどのように選択するかというのは難しい問題ですが、心不全を合併しているか否かによって使用される薬剤の選択肢が異なります。心不全がない場合にはたいていの薬物は適用することができますが、心不全があると、比較的心抑制作用の強いⅣ群の塩酸ジルチアゼム・塩酸ベラパミルの使用(あるいは抗不整脈薬そのもの)に注意が必要となります。主治医の先生や循環器の先生に適宜・適切に処方してもらうことが肝心です。
 尚、抗不整脈薬はそのほとんどが治療域が狭いため「TDM(治療薬物モニタリング=同一用量を投与しても人によって効果の出方が異なる=)」の対象となっていますが、血中濃度を治療域に保つことよりも不整脈のコントロール状況を把握することが重要です。

25】透析液清浄化ガイドラインについて
血液透析では1回の治療に大量の透析液を使用するため、透析液は通常減菌されていません。水処理した希釈水と透析液原液(原薬)とを混合して透析液を作製しています。原水から末端の透析液までの距離は長く、また種々の行程を経るため、細菌感染されやすい環境と言えます。一方、ダイアライザーの性能は年を追うごとに向上しており、「逆拡散現象」、内部濾過に伴う「逆濾過現象」によってエンドトキシン(ET)のサブクラス侵入のリスクも高まっており、厳格な透析液浄化が強く望まれています。こうした中で、「ISO(国際標準化機構)」より透析液浄化に関する国際基準案が懸案されています。
そこで、ここでは「臨床透析2007 VOL.23 NO.5」より抜粋させて頂き、「日本臨床工学技士会透析液清浄化ガイドライン」「ISO(国際標準化機構)」及び「日本透析医学会(JSDT)」で提示されているそれぞれの「管理基準」の比較を行っておきます。

★管理基準の比較

 

日臨工ガイドライン

Ver1.05(2006年)

ISO/CD23500

(2006年)

JSDT

(2005年)

ET活性値

生菌数

ET活性値

生菌数

ET活性値

生菌数

透析用水

50EU/l

未満

目標値

1EU/l

未満

100CFU/ml

未満

目標値

10CFU/ml

未満

250EU/l

以下

アクショ

ンレベル

100CFU/ml

以下

目標値

50CFU/ml

未満

50EU/l

未満

なし

透析液

 

 

 

 

 

 

通常

透析液

1EU/l

未満

(※)

1CFU/ml

以下

(※)

500EU/l

以下

100CFU/ml

以下

50EU/l

未満

100CFU/ml

以下

(1995年)

 

超純粋

透析液

 

同 上

(※)

30EU/l以下(30EU/lは欧州の測定感度)

0.1CFU/ml

以下

10EU/l

未満

目標値(測定感度1EU/l未満)

 

 

注入用

透析液

日本薬局方の無菌試験に準ずることが望ましい。治療を行う各施設で、全責任をもち臨床運用する。

30EU/l

以下

SAL10のマイナス6乗

以下

1EU/l

未満(測定感度未満)

 

 

測定頻

月1回以上、1年で全台

月1回以上、1年で全台

透析用水、生菌数は規定なし

ET活性値(月1回以上)

通常透析液(2週に1回以上)

内部濾過促進型(2週に1回以上)大量液置換型(2週に1回以上)

(※):ダイアライザーの機能で分けない


<注>
①清浄化の定義:清浄とは、透析療法に用いる透析用水・透析液に関し、化学物質の汚染、生物学的汚染がなく、安全に治療を行うことのできるものとし、それらを作り出す装置の設計、管理方法を含め清浄化と定義する。
②透析用水に用いる原水は、水道水、地下水等の如何を問わず水道法(昭和32年法律第177号)による水質基準(厚生労働省第101号、平成16年4月1日施行)を満たすこととする。
③透析用水は、粉末透析液の溶解や透析液原液の希釈及び配管、装置の洗浄消毒に使用するものとし、原水を濾過・イオン交換・吸着・逆浸透等の方法を用いて処理した後に基準値未満に管理する。管理基準値は、ISO 13959とISO/DIS 23500 に準ずる。

★透析用水管理基準値(23項目)

混入物質

最大濃度(mg/l)

混入物質

最大濃度(mg/l)

1.カルシウム

2(0.1mEq/l)

13.セレン

0.09

2.マグネシウム

4(0.3mEq/l)

14.銀

0.005

3.カリウム

8(0.2mEq/l)

15.アルミニウム

0.01

4.ナトリウム

70(3.0mEq/l)

16.クロラミン

0.10

5.アンチモン

0.006

17.遊離塩素

0.50

6.ヒ素

0.005

18.胴

0.10

7.バリウム

0.10

19.フッ化物

0.20

8.ベリリウム

0.0004

20.硝酸塩

(窒素として)

2.0

9.カドミウム

0.001

10.クロム

0.014

21.硫酸塩

100

11.鉛

0.005

22.タリウム

0.002

12.水銀

0.0002

23.亜鉛

0.10


③注入用透析液とは、大量液置換型血液透析濾過(「on-line HDF」「push & pull HDF」)用補充液を指す。
④透析液に関しては、透析関連有名インターネットサイト(「透析百科」の該当ページ28.1透析液)も参照されて下さい。(各URLをクリック)
・28.1透析液清浄化の方法(1)
 http://202.216.128.227/透析百科/28.01.htm
・28.2透析液清浄化の方法(2)
 http://202.216.128.227/透析百科/28.02.htm
・28.3透析液作製フローラインの保守・管理
 http://202.216.128.227/透析百科/28.03.htm
・28.4透析液の水質基準
 http://202.216.128.227/透析百科/28.04.htm
・28.5透析液清浄化の臨床効果
 http://202.216.128.227/透析百科/28.05.htm

尚、未だ細菌数を含めた透析液水質基準の国際基準は検討段階ではありますが、その後2008年に「日本透析医学会(JSDT)」から、細菌数を含めた「透析液水質基準2008」が提言されていますので、その概要を次に紹介しておきましょう。 
◆透析液水質基準
①透析用水

・細菌数 100CFU/mL未満
・ET  0.050EU/mL未満
②標準透析液
・細菌数 100CFU/mL未満
・ET  0.050EU/mL未満
③超純粋透析液
・細菌数 0.1CFU/mL未満
・ET  0.001EU/mL未満(測定感度未満)
<注>
上記基準のアクションレベル(汚染が基準値より高度になる傾向を防ぐために、措置を講じる必要がある汚染度)は施設の汚染状況に合わせて設定されるが、本提言では上限値の50%と定める。
④オンライン補充液 
・細菌数 10のマイナス6乗CFU/mL未満
・ET  0.001EU/mL未満(測定感度未満)
<注>
本基準でのET単位は最近の国際基準との一致を図るため「EU/mL」で表現することとする。
◆採取部位
①透析用水

逆浸透(RO)装置後
②透析液
透析器(ダイアライザ―)入口
<注>
プッシュ&プル透析装置を用いる場合には透析器出口
③オンライン補充液
補充液抽出部位
◆採取日
最大間隔透析開始前(通常は月曜日)
◆測定頻度(ET、細菌)
①透析用水
3カ月ごと(基準値を遵守している場合)、基準値を満たしていない場合は1カ月ごと。
②標準透析液
毎月、少なくとも末端透析装置2基が試験され各装置が少なくとも年1回試験されるように装置を順番に測定する。
③超純粋透析液
・通常の透析に用いる場合(内部濾過促進型透析も含む):標準透析液と同じ
・オンライン補充液を作製する透析液、逆濾過透析液を積極的に用いる透析装置:システムが安定するまでは2週間ごと、透析液製造者によってバリデートされたと判断された後は、毎月少なくとも末端透析装置2基が試験され各装置が少なくとも年1回試験されるように装置を順番に測定する。
④オンライン補充液
・ET:システムが安定するまでは2週間ごと、透析液製造者によってバリデートされたと判断された後は毎月、すべての末端透析装置及び補充液を測定する。
・細菌:10のマイナス6乗CFU/mL測定は不可能であり、透析液は超純粋透析液を担保する。
透析装置末端透析液及びオンライン補充液はシステムが安定するまでは2週間ごと、透析液製造者によってバリデートされたと判断された後は毎月、少なくとも末端透析装置2基が試験され各装置が少なくとも年1回試験されるように装置を順番に測定する。
◆各透析液基準の適応される透析条件
①標準透析液
血液透析を行う場合の最低限の水質である。
②超純粋透析液
オンライン補充液を作製する透析液
逆濾過透析液を積極的に用いる透析装置(全自動透析装置等)
プッシュ&プルHDF透析装置
内部濾過促進型透析
(超純粋透析液は、基本的にすべての血液透析療法に推奨される。)
<注>
内部濾過促進型透析器の基準=推定内部濾過量≧35ml/min
③オンライン透析液
オンラインHDF/HF
◆エンドトキシン捕捉フィルター(ETRF)管理基準
・「ETRF」は、「日本医療器材工業会」の性能評価基準(案)に合致したものを用いる。
・使用法は、各「ETRF」フィルター製造業者の定めた使用方法に従う。
・交換時期は、各「ETRF」フィルター製造業者の定めた交換時期に従う。それがない場合には各施設で性能や耐久性についてバリデーションを行う。その際には必ず記録を残し、医療機器安全管理者責任者へ定期的な報告を行う。
<注>
これまでは「エンドトキシンカットフィルター」と便宜上称されてきたが、本基準では「ISO基準」との一致を図るため「エンドトキシン捕捉フィルター(ETRF)」と称する。
【追記】
①上記文中の「オンラインHDFやプッシュ&プルHDF」の詳細は、ここの「その他インフォメーション【9】」を参照して下さい。
②「透析液水質基準2008」の詳細については「日本透析医学会」による「透析液水質基準と血液浄化器性能評価基準2008(クリック)」を参照して下さい。(上から2番目)

【26】本態性(一次性)低血圧について
透析中あるいは透析後に血圧が下がるいわゆる「透析低血圧」については、私達透析患者ではよく経験することですが、そうではなく、特別な原因疾患を伴わずに血圧が慢性的に低い(一般に収縮期が100㎜Hg以下、拡張期が60㎜Hg以下)状態を「本態性(一次性)低血圧」と言い、「低血圧症」の約9割を占めます。透析患者でも、もちろんこういう状態の人がいても不思議ではありませんし、常時「低血圧」に悩まされている透析患者も存在します。そこで、参考までに「低血圧とむきあう」と題した読売新聞の連載記事(H20・7・2~7・5までの4回)を(PDFファイル・クリック)を紹介しておきましょう。但し、その対策として「塩分や水分を十分にとる」「チェダーチーズを食べる」など、透析患者にとってはあまり参考にしてはいけないこともありますので、常時「低血圧」に悩まされている透析患者さんや家族の方は、この辺も注意しながら是非一度お読みになってみて下さい。

【27】透析患者の不眠について
透析患者では、「うつ病」や「レストレスレッグ症候群(RLS)」も不眠を誘発しますが、これら以外でも、透析患者の多くは不眠をよく訴えます。その原因としては、
①不安や緊張による不眠
②不安抑うつによる不眠
③イライラ感、皮膚掻痒感、痛み等による不眠
④尿毒症物質の蓄積による不眠
などがあります。
その対策としては、「しっかり(たくさん)透析をする」即ち充分な透析量を確保(できるだけ透析時間を長く・血液流量を上げられるところまで上げるなどして)することが基本であることはもちろんですが、一方において実際には、睡眠薬を用いらざるを得ない場合があります。そこで、透析患者によく用いられる睡眠薬を紹介しておきましょう。多くは、「ベンゾジアゼピン系睡眠薬」を用いますが、持続時間によって次の四つに分類されます。

          ★持続時間による「ベンゾジアゼピン系睡眠薬」の分類
分 類 商品名 一般名
超短時間型 ハルシオン トリアゾラム
アモバン ゾピクロン
短時間型 レンドルミン ブロチゾラム
リスミー リルマザホン塩酸塩水和物
エバミール ロルメタゼパム
ロラメット ロルメタゼパム
マイスリー ゾルピデム酒石酸塩
ロヒプノール フルニトラゼパム
中間型 サイレース フルニトラゼパム
ユーロジン エスタゾラム
ベンザリン ニトラゼパム
長時間型 ドラール クアゼパム
ソメリン ハロキサゾラム
ダルメート フルラゼパム塩酸塩
インスミン フルラゼパム
上表の各一般名をクリックすると、「おくすり110番」の具体的詳細インターネットページにジャンプします。
<上表睡眠薬の基本的な使い方>
①寝つきの悪いときや一時的な不眠には超短時間型や短時間型を使用します。
②夜間に何度も目が覚めたり、朝早く目が覚めてしまう場合には中間型や長時間型が使用されます。
③高齢者には副作用の出にくい「リスミー」や「ロラメット」が使用されます。
④筋弛緩作用を有しているものは早朝の転倒などに注意が必要です。
 以上透析患者によく用いられる睡眠薬を紹介しましたが、とかく日本人は睡眠薬というと、昔から抵抗感があるように思いますが、悶々と不眠に悩まず、迷わずにドクターとよく相談して、適宜・適切・適量に自分に合う睡眠薬を処方してもらいましょう。因みに私の場合も、毎晩就寝前に「ハルシオン0.25mg」と「アモバン7.5mg」をそれぞれ1錠服用しています。
 尚、本項目の冒頭でも若干触れましたが、「HDF」などの高効率の透析の不眠に対する効果が報告されていますが、その理由はまだよく解っていません。さらに高効率な連日夜間睡眠中透析(8時間、週6日)では、睡眠時無呼吸の改善が認められたと報告されています。


【28】慢性腎臓病に対する食事療法基準2007年版(「CKDステージ5D」について
 1997年(平成9年)2月の「日本腎臓学会誌第39巻第1号」に『腎臓病患者の生活指導・食事指導に関するガイドライン』が発表され、その後10年以上が経過した2007年末に日本腎臓学会より、「日本腎臓学会誌(第49巻第8号)」上に『慢性腎臓病(CKD)に対する食事療法基準2007年版』が報告されましたので、この中から私達維持血液透析患者(週3回)に該当する「ステージ(病期)5D(Dialysis)=血液透析療法中=」の食事療法基準を限定抜粋して次の通り紹介しておきましょう。(「1997年版食事療法ガイドライン」との比較含め)

               ★ 慢性腎臓病(CKD)ステージ5D(維持血液透析患者・週3回)
栄養項目 2007年版
(1日あたり)
1997年版
(1日あたり)
エネルギー
(kcal/kg/day)
27~39 (注3) 30~35
たんぱく質
(g/kg/day)
1.0~1.2 1.0~1.2
食塩
(g/day)
6未満 (注1) 0.15(g/kgDW/day)
+残腎尿量100ml
につき0.5g/day可
水分
(ml/day)
できるだけ少なく
(15ml/kgDW/day以下)
15
(ml/kgDW/day)
カリウム
(mg/day)
2,000以下 1,500
リン
(mg/day)
たんぱく質 (g)
×15以下
700
カルシウム
(mg/day)
非提示 (注2) 600
kg:「身長(m)×身長(m)×22」として算出した「標準体重」
kgDW:「ドライウェイト(透析時基礎体重)」
(注1)食塩摂取量6g/day未満は、日本高血圧学会による「高血圧治療ガイドライン2004」に準拠。
(注2)カルシウム摂取量は、カルシウム含有薬物の内服が処方される機会が多く、その場合には食事での摂取量を規定しても無意味となるため2007年版には提示されていない。
(注3) 厚生労働省策定の「日本人の食事摂取基準(2010年版)」と同一とする。性別・年齢・身体活動レベルにより推定エネルギー必要量は異なる。次表に示す通り。
         ★年齢・性別・生活強度別にみた推定エネルギー必要量(標準体重1kgあたり)
年 齢 男 性 女 性
身体活動レベル 身体活動レベル
Ⅰ (低い) Ⅱ (普通) Ⅰ (低い) Ⅱ (普通)
70以上 (歳) 33 38 32 37
50~69 (歳) 35 40 32 38
30~49 (歳) 36 42 31 37
18~29 (歳) 35 41 33 38
<注>
①上表の「身体活動レベル」のⅠとⅡとは次の通り。
Ⅰ(低い)=生活の大部分が座位で、静的な活動が中心の場合(立位・歩行2時間、軽運動1時間)
      基礎代謝量×1.5、70歳以上では×1.45
Ⅱ(普通)=座位中心の仕事だが、職場内での移動や立位での作業・接客など、あるいは通勤・買物・家事・軽いスポーツ等のいずれかを含む場合(立位・歩行3時間、軽運動2時間)
      基礎代謝量×1.75、70歳以上では×1.70
②肥満解消をめざす場合にはこれより少なく、るい痩・低栄養の改善をめざす場合にはこれより多くする必要がある。摂取エネルギーの処方にあたっては、患者の体重変化を観察しながら適正量となっているか経時的に評価しつつ調整を加える。
③大部分の慢性腎臓病(CKD)患者や高齢者での身体活動レベルは「Ⅰ(基礎代謝量×1.5)」と考えてよい。
④脂質摂取のエネルギー比率は「20~25%」とする。
⑤糖尿病性腎症(含透析患者)に関しては別途検討中。
◆今回の見直しは、「1997年版食事療法ガイドライン」では管理栄養士からの献立作成上での一部矛盾点の指摘や慢性腎臓病(CKD)のステージ(病期)分類が新しく発表されたことに伴い食事療法においてもこれと整合性をとる必要性も生じてきたことなどにより行われたものですが、前提としての透析条件が週3回しかなくその他の透析時間や血流量等が全く付記されていないこと、変更された栄養項目別内容の変更の背景・理由が今一不明・不透明であること、糖尿病透析患者の場合の栄養項目別内容がまだ明確になっていないことなどの不明点・疑問点がありますので、これらの点が明らかになり次第このページにて順次追記していきます。


29】新「高リン血症治療剤(炭酸ランタン<ホスレノール>)」について
平成15年6月26日に発売された「塩酸セベラマー(商品名:レナジェル錠250mgとフォスブロック錠250mg)」は、「夢のリン吸着剤」として、当時大変期待をされて登場しましたが、皆さんも多分ご認識の通り、腹部膨満・便秘等の消化器系の副作用の問題、最多1日36錠という服用コンプライアンスの問題等から、やや期待はずれの感がありますが、今度こそ「夢のリン吸着剤」として期待される新「高リン血症治療剤(非Al非Ca含有P吸着剤)」即ち一般名「炭酸ランタン」を次に紹介しておきましょう。
①正式一般名
「炭酸ランタン水和物」
②正式商品名(健康保険適用対象薬剤)
「ホスレノールチュアブル錠250mg」
「ホスレノールチュアブル錠500mg」
(上記いずれも「バイエル薬品<株>」製造・販売)
③効能・効果
透析中の慢性腎不全患者における高リン血症の改善と予防
④用法・用量
・通常、成人には「ランタン」として1日750mgを開始用量とし、1日3回に分割して食直後に経口投与する。以後、症状、血清リン濃度の程度により適宜増減するが、最高用量は1日2,250mgとする。
・本剤は噛み砕かずに服用すると溶けにくいので、口中で十分噛み砕いた後、唾液または少量の水で飲み込むこと。
⑤主な副作用
悪心・嘔吐・胃不快感・便秘
⑥全国発売日
平成21年3月11日(水)
⑦本剤(非Al非Ca含有P吸着剤)の追加説明
「ランタン」は、希土類元素で食物中のP(リン)と不溶性複合体を形成することによって腸管でのP吸収を抑制する。炭酸Ca製剤を対照とした多施設RCT(無作為割付比較試験)において、「炭酸ランタン」は、炭酸Ca製剤と同等の血清P値低下効果を認めたが(P吸着能は炭酸Ca製剤や塩酸セベラマーより上、「アルミゲル」に匹敵するとの報告も)、高Ca血症の発現率は有意に低値で、安全性と忍容性も問題がなく、また1年間の「炭酸ランタン」投与前後の骨組織学的検討で、炭酸Ca製剤に比較して低回転骨の改善に優れた効果を示したとのことである。心配な点は副作用であるが、「ランタン」は金属元素でわずかに腸管吸収を受けることから、Al(アルミニウム)と同様、骨に蓄積による副作用の懸念があり(ランタンの主要排泄経路は胆汁とされており、Alと異なり腎不全患者には有利)、ラットを用いた検討では肺、肝、腎への蓄積が観察されてはいるものの、少なくとも3年間の炭酸ランタン長期投与研究では、悪心(おしん)など軽度の消化器症状を認める以外重篤な副作用は報告されていない。
⑧本剤の詳細な「効果・効能」「用法・用量」「用法・用量に関連する使用上の注意」「使用上の注意」及び「副作用」等については、ここをクリック(PDFファイル)
◆この「炭酸ランタン」は、今後懸念される副作用の問題のみならず、「非Ca含有P吸着剤」ですので、「二次性副甲状腺機能亢進症」や「活性型ビタミンD製剤」や「透析液のカルシウム濃度」や「カルシウム系リン吸着剤との併用」等の関連や問題も出てくると思われますので、これらの点も慎重に注視しながら自らも処方してもらい試行錯誤服用します。