Q97.「CKD−MBD(慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常)」とはどういう病態ですか。

2009/08/29 (Sat)
A.まずご承知のことと思いますが、「慢性腎臓病」のことを「CKD」と言います。「CKD」は、「chronic kidney disease」の略語です。「慢性腎臓病(CKD)」患者においては、適切な予防や治療がなされなければ、「ミネラル代謝異常」は必発です。この「ミネラル代謝異常」は、今から50年以上前に、特殊な骨の病気として認識され、 「慢性骨異栄養症(ROD:renal osteodystrophy)」と呼ばれてきました。そしてその管理の進歩には、「活性型ビタミンD製剤」のように、病態の解明とそれに基いた治療法の開発が繰り返し必要でありました。
 さて、「慢性腎臓病(CKD)」で生ずる代表的な「ミネラル代謝異常」と言えば、「低カルシウム(Ca)血症」「高リン(P)血症」と「PTH(副甲状腺ホルモン)過分泌」がまず頭に浮かびます。実際の臨床においても「PTH(副甲状腺ホルモン)」の数値を指標にして、骨回転の状態を推定し、それを是正できる方向にコントロールするという方法が取られてきました。即ち、相変わらず骨の病気としてとらえられていたのです。但し、一口に骨の病気と言っても、「高回転病変」から「無形成骨」まで、その内容は様々です。これらほとんどの場合、骨生検の情報があるわけではないので、「PTH(副甲状腺ホルモン)」の数値から骨の状態を推定することは、様々な骨代謝マーカーを併用したとしてもあまり正確にはできないというのが実態です。これに加えて、治療や長期に透析治療を受けることによる修飾が加わると、さらに分かりにくくなります。
 一方、「活性型ビタミンD製剤」による治療やCa含有P吸着剤の使用が一般的になると、典型的な低Ca血症はほとんどみられなくなり、むしろCaの負荷が問題となってきました。この結果が、血管を中心とする軟部組織の石灰化であり、心血管イベントの大きな原因として認識されるようになってきました。
 以上のような背景から、「慢性腎臓病(CKD)」に伴う異常を、骨の病気ではなく、全身の病気としてとらえようとするパラダイムシフト(発想の転換)が起き、この考え方の変化を示すために、全身疾患としての「CKD−MBD(chronic kidney disease-mineral and bone disorder)」という新しい病態用語が提唱されました。(これに伴い従来の「慢性骨異栄養症<renal osteodystrophy:ROD>」という病態用語は骨病変そのものに限定して使われることになりました。)
 「CKD−MBD」は、@Ca・P・PTH等の検査値異常A骨の異常B血管石灰化の3種類の異常の組み合わせによって構成され、それぞれの異常を有効に予防・治療する努力をすることは従来と同じですが、その結果として、心血管イベントの低下、骨折率の低下、そして生存率の改善を最終的な目標としているところがその趣旨です。
 このような生命予後の重視は、その後発表された「日本透析医学会」による「透析患者における二次性副甲状腺機能亢進症治療ガイドライン」等の臨床ガイドラインにも既に反映し始めていることはご承知の通りです。
 尚、「日本透析医学会」による「透析患者における二次性副甲状腺機能亢進症治療ガイドライン」については、次の「日本透析医学会」のHPの該当ページのURL(クリック)を紹介しておきましょう。(下から3番目)
http://www.jsdt.or.jp/dialysis/2094.html
加えて、平成24年に「慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドライン」が、日本透析医学会から発表され、こちらの方が「CKD−MBD」をベースにしたものですので、こちらも紹介しておきましょう。上記のURLをクリックしてください。上の方に載っています。このガイドラインでは、これまで「インタクトPTH」の管理目標値を「60pg/ml〜180pg/ml」としていましたが、日本透析医学会調査委員会データの再解析により、「60pg/ml〜240pg/ml」と、上限値が引き上げられておりますので、お知らせしておきます。


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