Q96.「スイカは腎臓にいい」というのは本当でしょうか。=嘘ではないことと真実の違い=

2008/07/10 (Thu)
A.皆さん、「スイカは腎臓にいい」って聞いたことはありませんか。ほとんどの方が、両親とか周りの人達から聞いたことがことがあると思います。このことは、正しい・正しくないはともかく、極めて認知度が高いように思います。
 そこで、この問題について、〔月刊誌「臨床透析」2008 7 VOL.24NO.8(特大号)〕の巻頭に、自治医科大学附属さいたま医療センター腎臓科の「田部井 薫」先生が大変示唆に富んだ話を書かれていますので、そのまま引用させて頂いて紹介しておきましょう。(以下【 】内原文のまま引用)

【腎臓病の日常臨床をしていて頻繁に遭遇する悩みは、「スイカは腎臓にいい」という虚言です。
 2001年7月20日に昼の某バラエテイー番組で、スイカの効能が紹介されました。紹介された効能は、「腎臓にいい」「シミ・シワ・ソバカスを予防」「老化・ガンを防く」「心臓病・高血圧も予防」などでした。私の外来に通っている患者の隣人がこの放送を見て、患者さんに「スイカ」を食べさせました。患者さんは血清クレアチエンが3.0mg/dlで血清カリウムは常に4.5〜5.O mEq/l前後でしたので、当然カリウム制限の指導を受けており、スイカの危険性は承知していました。そこで、「医者からスイカは良くないといわれているから」と断りましたが、隣人は「かかりつけの先生なんかの言うことよリテレビに出ているえらい先生の言っていることのほうが正しいに決まつているから食べなさい。私の親切心がわからないの」と強く言われ、仕方なく言われるままにスイカを食べました。その2時間後に、意識不明となり救急車で当院に搬送され、血清カリウム値7.5 mEq/lの高カリウム血症で心停止となり、蘇生はしましたが、意識は戻らず、その後他界しました。
 上記の会話はスイカを食べて自宅に帰つてから患者本人が家族に話した内容です。家族は、テレビ局に抗議をしましたが、当然問題にもされませんでした。
 隣人はテレビを信じただけですから殺人罪になることはないでしょうが、テレビの放送はどうでしょうか。本来、殺人罪に相当する行為とみなされてしかるべきものと思いませんか。
 さて、ではなぜ「スイカは腎臓にいい」という虚言がまことしやかに伝えられているのでしょうか。仮説として、昔は「むくんでいるのは腎臓が悪いから」と考えていました。利尿薬がない時代には、「スイカを食べると尿量が増える」ことは皆が感じていることで、「スイカを食べたら尿が出てむくみが減った」。だから、「スイカは腎臓にいい」となったものと想像されます。まだ、腎不全による高カリウム血症が問題になる以前の話と考えます。もちろん、「カリウム摂取量が多いと高血圧が改善し、脳梗塞の頻度が少なくなる」という事実はあります。ですから、「スイカを食べると血圧が下がる」のは嘘ではないのです。しかし、腎不全患者に当てはまるような真実ではないのです。
 外来では、毎日このような「虚言」と戦いながら診療を行っています。日本人は教養があるのですから、もっと物事を科学的に評価していただきたいと考えています。とくに、報道関係者の真の科学的分析を期待します。「嘘ではないこと」と「真実」とを間違えて報道していることがあまりにも多すぎることに日々憤りを感じています。
 せめて透析従事者だけは虚言に惑わされることなく、真実を追究する科学的考え方をもっていただきたいと願っています。】=以上引用終わり=

 以上のことのほか、食品やサプリメント等の中には、健常者にとっては常識的に健康食品や健康補助食品であっても、私達のような腎不全の透析患者にとっては非常識なものも多くありますので、疑わしきはこれまでの・今までの常識にとらわれず、ドクターや栄養士さんや薬剤師さんなどとよく相談されてご確認・ご利用・ご使用頂きたいと思います。
 尚、「高カリウム血症」など「カリウム」に関しては、この「人工透析Q&A」コンテンツのQ5のAを参照して下さい。


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