Q94. 「二つの不(負)」って何ですか。(「三つ目の不」あり)

2007/02/17 (Sat)
A.透析患者に日常起こり得る諸症状や合併症に伴う諸症状(もちろん合併症そのものも)を具体的にいちいち挙げるとキリがありませんので、ここではエイやっとひっくくって大ぐくりして「不定愁訴」と「不具合」の二つに括ります。それで透析患者の場合、この二つの原因を考えるとき、もちろん反論・異論等もあろうかと思いますが、私は、これまでの透析の経験と知識から、まず疑ってかかるべきは、「二つの不」であると考えております。即ち、「二つの不」とは、
 〔『ドライウェイト(基礎体重)の「不」適正』⇔『透析「不」足』〕
の二つです。これらは、基本的にどちらか一方を修正するともう片方も修正せざるを得ないという関係にあるのではないかと考えています。何のことだか、何を言ってるんだか、ちんぷんかんぷんという透析患者さんも多いと思います。この辺のところは、透析の経験と知識を積んでいけば、おのずとおぼろげながらもだんだんどういうことか理解が深まってくると思います。従いまして、ここで「二つの不」について詳しく説明するつもりはありませんが、この「二つの不」を常に念頭に置いて、平成15年5月にこのHPを立ち上げ、そして基本的に毎月1回更新していると言っても過言ではありません。みなさん方も、「二つの不」を常に念頭に置かれ、毎回の透析に臨んで頂ければと思います。また、この「二つの不」は「二つの負」でもあります。即ち、この「二つの不」を、透析患者サイドから修正・変更(特に前向きにプラス方向に)しようとすると、結構透析医療者の抵抗が大きく、おいそれとはいかない場合が多いですので、私達透析患者も透析を「おまかせ医療」にするのではなく、必要最低限の透析の知識・理論を身につけて、こうした透析医療者の対応に「負」けないようにしようということで、「二つの負」でもあるとも思うわけです。尚、「二つの不」のうち「透析不足」について、同じ意味ですが、『透析不足は諸悪の根源である』と言い切る著名な臨床透析医もおられます。全く同感の至りです。
 「二つの不(負)」という言葉・文言が、透析医療界や患者会や患者仲間で流行するといいんですけれど、いろんな意味でそうはいかないかな。気が付いてみると、冒頭の「不定愁訴」と「不具合」も「二つの不」ですね。
 以上の「二つの不」のほか、つらつら考えてみると、もう一つ「不」がありましたね。「三つ目の不」です。それは、透析液の『「不」浄』です。
 透析液が血液中に直接入る「オンラインHDF」に限らず、普通の「HD」や「HDF」でも、「ハイパフォーマンスダイアライザー(ハイフラックスダイアライザー)」全盛時代を迎え、「逆濾過」や「逆拡散」によって、ダイアライザー内において透析液側から血液側への「パイロジェン(細菌<特にグラム陰性菌>の菌体成分の一部)」等の移行が懸念されるようになってきました。通常の透析医療現場では、「パイロジェン」として、透析液の「エンドトキシン(ET)」が測定されています。
 透析液の『「不」浄』の問題を「三つ目の不」として取り上げたのは、透析液を徹底的にきれい、即ち「エンドトキシン(ET)」濃度を検出感度以下(エンドトキシンフリー)にすると、こうした透析液浄化の臨床効果として、@手根管症候群の発生頻度の減少Aβ2ーMG値の低下BCRP値の低下Cアルブミン値の上昇D貧血の改善E高血圧の改善F透析中の低血圧発作の改善(透析中の血圧安定)G体重<DW>の増加Hシャントトラブルの減少I動脈硬化の進展抑制等が報告されていることによっても裏付けられるからです。
 全国の透析施設の臨床工学技士さん(もちろん透析施設の長たる責任者・ドクターも)に対しては、いわば人工透析の質に大きく関わっている極めて重要な問題である透析液の清浄化について、透析方法に関係なく透析液は徹底的にクリーン(限りなくET濃度「0」)にすべく、是非「どこまでやるの」ではなく「どこまででもやる」という強い信念と哲学をもって常に臨んで頂きたいといつも願っております。
 尚、透析液の清浄化問題については、本HP左メニュー「その他インフォメーション」の「【25】透析液清浄化ガイドラインについて」もご覧下さい。

 <注>「エンドトキシン(ET)」の追加説明
「エンドトキシン(ET)」とは、グラム陰性菌の細胞壁外膜(もっとも外側の部分)を構成している成分の一つで、菌が死んでバラバラになるときに出てきます。グラム陰性菌は、全く栄養分のない蒸留水の中でもりっぱに繁殖できます。即ち、「水のあるところにグラム陰性菌あり」ですので、水のあるところには必ず「エンドトキシン(ET)」が存在していることになります。透析液の原水でもある水道水には、殺菌目的に塩素が加えられているため、グラム陰性菌は死滅しているかもしれませんが、「エンドトキシン(ET)」は高濃度に残存しています。それをいかにして「エンドトキシン(ET)」といういわば「毒」を含まない透析液にしていくかが、まさに透析室の裏方の主役「臨床工学技士」の腕の見せどころです。 


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