Q93.「透析条件」の一つである「血液流量」については、どのように考えればいいでしょうか。

2006/11/16 (Thu)
A.「血液流量」を上げられる人は、上げられるところまで、少しづつゆっくり上げてもらいましょうというのが私の考え方ですが、改めて透析条件の一つである「血液流量」について、基本的・初歩的なところから次に整理しておきたいと思います。
 「血液流量」とは、1分間に穿刺(センシ)された血管から血液を引き出す量のことで、「血流速度」とも言います。わが国の透析患者の現在の一般的・平均的な「血液流量」は『180〜200ml/分』です。私の属する腎クリニックの患者もその例外ではなく、大勢としてはおそらくこの範囲の中に入っているものと思われます。この範囲を超えているあるいはこれに満たない人はそんなに多くないです。因みに、わが腎クリニックの最高は、私の「300ml/分」です。
 この一般的・平均的な『180〜200ml/分』という「血液流量」は、簡単に言えば、血液ポンプで1分間に牛乳瓶1本分くらいの量のスピードで血液を体外に引き出して「ダイアライザー」に送り込んでいるということになります。(そして「ダイアライザー」を通過した血液は穿刺された血管に返されます。)従って、1回の透析時間が4時間の場合では、『180〜200ml×60分(1時間)×4時間=43.2〜48L』の血液が1回4時間の透析で「ダイアライザー」の中を繰り返し通過することになります。これを「総血液処理量(一番下の<注>参照)」と言います。この透析による「総血液処理量」が多ければ多いほど、それだけ透析の除去効率が上がり、「老廃物(尿毒症物質)」の除去量(透析量)が増えることは容易に理解していただけると思います。例えば、1回4時間透析の場合で「血液流量」を10ml/分アップさせたとすると、『10ml/分×60分(1時間)×4時間=2.4L』も「総血液処理量」が増えることになります。もちろん、1回あたりの「透析時間」を今より延ばすことと「血液流量」のアップも併せて行えば相乗的に効果が上がります。この透析量が上がってくることによるいろいろな短期的・長期的なメリット、即ち「体調改善」「食欲増進」「口渇抑制(よりのどが渇かなくなる=適正な塩分管理<1日塩分摂取量5〜7g>・糖尿病がある場合は適正な血糖管理前提=なぜ口渇抑制につながるのかの理由等については本「人工透析Q&A」コンテンツQ73のA参照)」も期待できますので、透析患者にとっては「自己管理」特に日頃の「飲水管理」がよりしやすくなります。
 そこで「血液流量」については、基本的に透析医療上のコストがかからないということもあり、それぞれ少しでももっと上げましょうという話になるわけです。(お金のかからない透析量アップ方法なのでもっと活用しましょうということです。)
 しかしながら、誰でも上げられるというものではありません。シャントの状態や穿刺血管の太さなどによって、上げられる人もいれば上げられない人もいます。また、長期透析患者、高齢者、糖尿病・心疾患合併症を有する場合等も無理はできないと思われます。では上げられる場合、どこまでなら大丈夫でしょうか。いろいろな考え方が透析医療界にはありますが、最近では、最低でも『「血液流量」は、ドライウエイト(適正体重)1kgあたり4ml/分』を維持透析患者の目安(1999年の「日本透析医学会」の統計調査がベース)にしようという考え方があります。例えば、ドライウエイト60kgの人であれば「240ml/分」、70kgであれば「280ml/分」という具合になります。 
 この最低目安の考え方・方程式が正しいかどうかはともかく、前記の通り「血液流量」を上げるメリットについては確かなものがありますので、最終的にはドクターの判断になりますが、自分は現在の「血液流量」を上げられるのか・上げられないのか、上げられるとすれば具体的にどこまで上げられるのか・どのような手順で上げるのかの見極めは個々に違いますので、皆さんも、それぞれの身体の状態やシャントの具合(狭窄がないなど)等個々の透析情報を一番把握している皆さんの周りの身近な透析スタッフに自分の現在の「血液流量」についてまずは一度確認・相談されてみてはいかがでしょうか。
 また「血液流量」を一気に急激に上げますと、不均衡症状(透析中や透析後の頭痛等)が一時的に強くなったり、透析後のカリウム数値が下がりすぎることなどがありますので、上げる場合は急がずゆっくり例えば2週単位、月単位等で10ml/分づつそれぞれの目標のところまで時間をかけて、透析後のカリウム数値等を含め様子を見ながら慎重に実行した方がよろしいようです。
 それから、それぞれの穿刺血管の状態にもよりますが、「血液流量」に見合ってさらに血流を採りやすくするために穿刺針(留置針)を今より1G(ゲージ)太いものに変えてもらうという選択肢もあります。穿刺針は、たぶん世間一般の透析施設と同様にわが腎クリニックでも16か17G(ゲージ<外径>)の太さのものが多く使われています。G(ゲージ)は穿刺針の太さの単位で数字が小さいほど太くなっていきます。いずれにしても、この辺のところも透析スタッフとよく相談されてみて下さい。実際に私が使っている穿刺針(留置針)の種類と太さとその詳細については、本HP「私の人工透析環境」の【4】の(4)に載せてありますので、その他の私の「透析条件」と併せ参考にされて下さい。
 最後に、「血液流量と血圧との関係」及び「血液流量と心機能との関係」について、若干言及しておきましょう。「血液流量を上げると血圧が下がる」あるいは「血液流量を上げると心臓に悪い」といったかつての「透析の常識」は、まるっきり「あてはまらない」とは言い切れませんが、その理由・根拠はここでは省略しますが、基本的にはいずれも直接的な関係は無く今や「迷信」と考えてよろしいかと思います。(この点は重要なことですので、皆さんのところの透析スタッフの意見もよく聴いて下さい。)
 <注>
上記文章中の「総血液処理量」については、本HP左コンテンツ「私の人工透析環境」の【5】血流速度の項も参照して下さい。
(「総血液処理量早見表」添付)


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