Q73.体重増加と透析効率(透析量)の関係について教えて下さい。

2005/09/11 (Sun)
A.無尿の透析患者の場合、不感蒸泄・発汗・便として、食事中の水分・代謝水はほぼ相殺されますので、次の透析までの体重増加は、基本的には透析間の飲水をはじめとする水分貯留によるものです。“この体重増加を少なくするためには”≒“飲水を少なくするためには”、「口渇」を抑えればいいわけです。(飲水をただ我慢すればということより、まずは物理的・化学的に喉が渇かないようにすればいいということです。)
 水を飲みたくなるのは、血漿浸透圧(このページ一番下の<注1>参照)が上昇して、脳の延髄の視床下部にある「口渇中枢」が刺激されるというメカニズムが働くからです。そして、飲水により血液は希釈されて血漿浸透圧が低下するということになります。
 従って、飲水以外に「口渇」を抑えるには、この血漿浸透圧を上昇させる物質をできうる限り抑制すればいいことになります。具体的には、血中のNa濃度(塩分)やグルコース(血糖値)が上がれば、血漿浸透圧が上昇しますので、言うまでもなく、まずは日常の塩分管理(食塩相当量の1日の理想摂取量は5g以下)や原疾患が糖尿病である場合には適正な血糖管理が重要・基本です。(私の経験上も、塩分摂取過多や高血糖<透析導入前の純糖尿病の頃の空腹時血糖200以上>のときの「口渇感」は正に地獄の苦しみで、つい飲水行動に走らざるを得なくなります。)
 加えて、透析不足による透析間の尿素窒素(「BUN」)等の尿毒症物質の蓄積(種々の尿毒素が単体で或いは複合的・総加的に渇きをもたらす)も血漿浸透圧の上昇につながりますので、これら尿毒症物質をできる限り除去する十分な透析即ち透析効率を上げて、透析量を増やすことも必要・重要です。透析方法や透析条件を見直して透析効率(透析量)を上げることは、この血漿浸透圧低下効果だけではなく、一時的な「不均衡症候群(このページ一番下の<注2>参照)」の出現はあるにせよ、将来の二次性副甲状腺機能亢進症や透析アミロイドーシス等の合併症の予防と遅延のみならず、このことなどによる生活の質(「QOL」)の向上と長期生命維持を可能とするためにも絶対に必要なことです。(こちらの方がむしろ重要です。)さらに付け加えれば、十分な透析をしてもらうことで、その結果、食欲が増してよりたくさんのいろいろな食物が食べれる(食べられる)ようになります。そして、また透析効率(透析量)を上げる、基本的にはこの繰り返しで良いと思います。
 尚、その他「口渇」の原因としては、薬の副作用があります。例えば、ある種の降圧薬(「クロ二ジン」等)や胃腸関係の鎮痛薬(「ブスコパン」「ストロカイン」等)やある種の風邪薬(「ダンリッチ」等)を服用している場合です。この場合は主治医の先生と確認・調整する必要があります。
 私がこのHPで透析方法(「HD」⇒「HDF」)や透析条件を変えて「喉が渇かなくなりました」としているのは、透析量を増やすこともその必要因子の一つだからです。(適正な塩分管理・血糖管理が前提で、これらが無茶苦茶でもいいということではありません。)
 以上のこと、透析患者の皆さんも主治医の先生や看護師さんにも確認をされ、この際ご自分の透析方法や透析条件を改めて見直されてはいかがでしょうか。
 尚、上記内容のいくつかのキーワードについて参考として頂きたい本HPの具体的コンテンツを改めて次に紹介しておきます。
(関連情報・近隣情報含め)
@水分(塩分)管理について
・本HP左コンテンツ  「人工透析と食事」
・     〃     「人工透析Q&A」のQ19.A、Q40.A、
             Q45.A、Q57.A、Q60.A
A糖尿病透析患者の血糖管理について
・本HP左コンテンツ  「その他インフォメーション【20】」
B尿毒症物質について
・本HP左コンテンツ   「人工透析Q&A」のQ62.A
C二次性副甲状腺機能亢進症や透析アミロイドーシス等の合併症について
・本HP左コンテンツ  「人工透析の合併症」
D長期生命維持の透析条件について
・本HP左コンテンツ  「その他インフォメーション【8】【21】」
E「HDF」について
・本HP左コンテンツ  「その他インフォメーション【9】」
・     〃     「人工透析Q&A」のQ56.A
F私の透析方法・透析条件について(ご参考)
・本HP左コンテンツ  「私の人工透析環境」

<注1>「血漿浸透圧」と「膠質浸透圧」
「浸透圧」とは、「半透膜(細胞膜)で隔てられた濃度の異なる2液間で、水分が濃度の低い方から高い方へ移動する力」と定義されます。
 血液の浸透圧は、「血漿浸透圧」と「膠質浸透圧」の和によって表され、「血漿浸透圧」は電解質、「膠質浸透圧」はアルブミンによって維持されています。
<注2>「不均衡症候群」とは?
透析導入直後に起こることが多い症状です。維持透析期でも透析方法や透析条件を変更した際にも、一時的に一定期間出現することがあります。透析により細胞外液、特に血液中の尿毒素が急速に取り除かれますが、細胞内液、特に脳組織では血液脳脊髄液関門というバリアーがあるため、すぐにはきれいになりません。そのために細胞内外で尿毒素の濃度差が生じます。この濃度差を解消しようと脳内に水を引き込み、悩浮腫・悩圧亢進を起こし様々な症状が出てきます。症状は透析後半から出現し、数時間以内には消失することが多いです。「不均衡症候群」の症状は次の通りです。
・脱力感、全身のだるさ、吐き気、嘔吐、頭痛、血圧上昇もしくは低下(酷いときには痙攣、意識がなくなったりするが最近はあまりみられない)


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