Q72.「しゃっくり」がしばらく止まらないことがある透析患者です。原因と対策を教えて下さい。

2005/07/12 (Tue)
A.「しゃっくり」は、透析患者に限らず一般には実害の少ない症状と思われ、簡単に治ってしまうものが多いですが、長期間にわたって続くものやなかなか有効な治療が見出せないものもあります。そのため、本人にとっては不愉快なものであり、時には「息が止まるのではないか」と思わせることもあります。吸筋の痙攣により咽頭が一時的に閉じてしまうのが「しゃっくり」の病態です。特に大きな吸筋である横隔膜の痙攣が原因になります。多くの場合は、急に大量の飲食をしたときに胃が急速に膨張することが引き金になって起きます。胃に炎症等がある場合にも起きやすいと考えられます。また、冷たいものの飲食、アルコール、タバコや興奮等も原因になります。さらに、炎症、腫瘤、血管、脳幹等の局所的な原因のほかに全身の感染や代謝障害等による神経・筋への刺激も「しゃっくり」を起こす要因になりえます。 
 以上の原因を解明した上で治療に当たるのが本来のやり方ですが、早く止めて欲しいと願う立場からは、簡便な方法のものから始めるのが当然のあり方です。それでも止まらない「しゃっくり」に対しては原因追及を深めるべきでしょう。
 以下にその対策について四つに分けて整理して記載しておきましょう。
【1】刺激と反射の利用
(1)簡便な方法
@水を一気に飲むことで、食道・胃への刺激と吸気を止めることで、横隔膜の弛緩を助ける。透析患者の場合は無用な水分摂取をしてしまうので、他の方法を試みる。
Aスプーン1杯のグラニュー糖を水分を使わずに飲み込んでしまうことで、ものを飲み込む嚥下反射を起こさせる。(砂糖の利用には、舌に乗せたままにすることで吸気ができない状態を作る方法もあり)
B咽頭絞扼反射の利用、即ち舌圧子で咽頭に触れることで、一瞬息が止まり横隔膜の弛緩を助ける。(同様に自らがスプーンを使って反射を起こさせることもあるいは自分の指をノドの奥まで入れて止めることも可能)
(2)それでも止まらないときに
上記簡便な方法で止まらない場合は、胃の中が食塊や水分あるいは空気で満たされている場合があるので、このようなときには胃の中の減圧が必要になり、経鼻で胃管を挿入し、胃の内容物を取り除くことを試みる。これは減圧と同時に反射もより強く効果が期待できる。
【2】薬物療法
@クロルプロマジン
抗精神病薬である「クロルプロマジン」が最も使われ、攣縮状態にある横隔膜を弛緩させることを目的としている。この薬10〜20mgを4〜6時間おきに内服する。「クロルプロマジン」は、肝臓から排泄されるので、透析患者にも通常量をそのまま使えるが、身体的依存性あるいは副作用の問題を考慮すると、抗精神病薬を使い慣れた精神科の医師への相談も必要である。
Aキニジン
抗不整脈薬である「キニジン」も使われる。この薬を投与することにより、横隔膜での興奮・収縮を抑えることで「しゃっくり」を止める・あるいは起きにくくさせることを狙ったものであるが、消化管に多い副作用のみならず不整脈の出現等も考慮すると観察が十分になされる必要があり、安易に使うのは避けるべきである。
【3】原因の除去
炎症、腫瘤、感染、代謝障害の存在があれば、可能なものは解決させるのは当然である。また、呼吸中枢である脳幹に作用するバルビツール系全身麻酔薬の副作用としての「しゃっくり」は比較的有名であるが、他の薬剤でも「しゃっくり」の原因になっている可能性があるので、処方されている薬剤を検討することも重要である。
【4】意外な治療法
「しゃっくり」のひどい透析患者が有効だと話すのは、意外なことに十分な睡眠である。もちろん「しゃっくり」で眼が覚めてしまうこともあるそうだが、十分に眠れたときには長く続いた「しゃっくり」も止まっているとのことである。睡眠薬を上手に使うことも「しゃっくり」を止めうるということである。
 尚、長時間止まらない「しゃっくり」の場合、縦郭で、縦郭胸膜と心膜の間を通過して横隔膜に横隔神経が達する間に腫瘤等がないかを確認する必要があり、まれな例では脳幹の異常で「呼吸筋型ミオクローヌス」と「しゃっくり」が間違われる場合があるので鑑別が必要になります。
 最後に予防ですが、「しゃっくり」が起きないようにするためには、急いで飲食しないことが大事です。これは、消化に良いばかりではなく過食や大量の水分摂取を避けるためにも透析患者にとっては重要なことです。また、通常から十分な睡眠をとり安定した精神状態を保つことで緊張を避け、呼吸が乱れることなども防止できます。


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