Q68.透析中の血圧低下要因をわかりやすく整理してもらえませんか。それと、透析患者によく使われる昇圧剤を教えて下さい。

2005/05/12 (Thu)
A.透析患者、とりわけ私のような糖尿病透析患者にとって、日常的に透析中の血圧低下は程度の差こそあれ経験することが多いと思います。透析患者の低血圧は、透析中に生じる「透析低血圧」と、非透析日においても低血圧が持続する「持続性低血圧」に大別されます。「透析低血圧」とその対策については、皆さん既に日常経験・対応されており、本HP「私の透析日の一日」コンテンツの該当箇所にも載せてありますので、ここではご要望の通り、「透析中の血圧低下要因」ということで、「患者側の要因」と「医療側の要因」に分けて整理しておきますので、日常の自己管理や透析スタッフとのコミュニケーションにお役立て下さい。
   【患者側の要因】          【医療側の要因】
 ・心疾患合併症患者         ・限外濾過過剰
 ・高齢者              ・ドライウエイト設定の誤り
 ・糖尿病患者            ・降圧薬が不適切
 ・長期透析患者           ・高い透析液温度
 ・無腎患者             ・低ナトリウム透析液
 ・貧血亢進の患者          ・体重測定ミス
 ・プラズマリフイリングの低下    ・除水コントローラー故障
 ・体重増加             ・血圧低下防止対策指示、実行忘れ
 ・高血糖あるいは低血糖       ・針、回路の離脱等の出血事故
 ・高リン血症
 ・低蛋白、低アルブミン血症
 ・血圧測定間違い
 ・降圧薬の服用間違い
 ・かぜや睡眠不足など体調不良
 ・ひどい便秘、下痢
 ・透析中の食事摂取や熟睡、起き上が
  るなどの行動
「透析低血圧」について、アカデミックに勉強する必要もあると思いますので、透析関連の超有名インターネットサイト「透析百科」のURLと該当コンテンツを次に紹介しておきましょう。
http://touseki.loglog.jp/
このサイトの左コンテンツ(目次)中の「9.透析低血圧」のページを一通りお読みになることをお薦めいたします。そんなに難しい内容ではありませんので、透析患者でも充分読みこなすことができると思います。
 尚、透析医療現場ではナースをはじめ透析スタッフは、次のような透析中の血圧低下のサインをいつも注意して見てくれていますので、私達透析患者も早期発見・早期対応のポイントとして知っておきましょう。
 @患者の訴え:「熱い」「眠い」「ムカムカする」「トイレに行きたい(血
  圧が低下すると便意を催す患者さんもいます。)」
 A客観的情報:「あくび」「発汗」「顔面蒼白」「除水量」
 Bバイタルの変化:「頻脈」「血圧低下のスピード」
 尚、透析中の血圧低下を考える上でのポイントは次の通りですの  で、改めて認識しておきましょう。
 @透析患者の血圧を決める最も大きな要素は「体液量」
 A血圧低下時に絡む3大要素は「循環血液量」「抹消血管抵抗」「心拍出
  量」
 B血圧低下の適切な処置は「上記3大要素」が絡んでいるので、原因の見極
  めが重要

 最後に、透析患者によく使われる昇圧薬とその特徴、用法、副作用等を次に載せておきます。
@メチル硫酸アメジニウム(一般名)=商品名「リズミック錠10mg」=
・腎不全患者での減量の必要性:あり
・透析性:透析クリアランスは大きいものの分布容積が大きいため除去されない。
・作用機序と特徴:交感神経を亢進させる「ノルアドレナリン」という体内物質を増やし、交換神経が高まると血管が収縮し、また心臓の拍動が高まって血圧が上昇する。収縮期血圧だけでなく、拡張期血圧も上昇させる。即ち、血管α受容体及び心臓β受容体を刺激する。尚、透析中の血圧低下は抑制するものの透析後の起立性低血圧には効果が期待できないとの報告もある。
・用法:透析開始時に1回10mg、症例によっては増量が必要な場合あり。
・副作用:発疹、動悸、めまい、白血球減少、顔面のこわばり、悪心等
・追記:私も平成15年8月頃まで、この薬を常用していましたが、何故か「蕁麻疹」が出現しましたので中止、次記の「メトリジン」に変更したという経過があります。どうも副作用の一つとして「蕁麻疹」もあるようです。
A塩酸ミドドリン(一般名)=商品名「メトリジン錠2mg」=
(水なしで服用できる「メトリジンD錠2mg」もあります。)
・腎不全患者での減量の必要性:あり
・透析性:透析で除去されやすい。
・作用機序と特徴:吸収後、加水分解を受け活性本体に変化するプロドラッグ。心臓及び脳血管系に作用せず、抹消血管α1受容体を選択的に刺激し血行動態を正常化する。血管組織内でも活性体に変換されるため作用発現は緩徐で作用時間が長い。起立性低血圧(立ちくらみ)の治療にも使われます。
・用法:透析前に1回2mgから投与開始し、漸増して8mgまで投与量を上げてもよい。
・副作用:心室性不整脈、眠気、頭痛、発汗亢進等
・追記:私の現在の常用薬です。(透析日のみ<1〜2錠>)
Bドロキシドパ(一般名)=商品名「ドプスカプセル100・200」「ドプス細粒20」=
・腎不全患者での減量の必要性:なし
・透析性:蛋白結合率が高いため、透析性は低い。
・作用機序と特徴:ノルエピネフリン(神経伝達物質)の前駆物質で体内でノルエピネフリンに変換され、昇圧作用を示す。吸収が遅く、長時間作用する。そのため、起立性低血圧が有意に抑制され、立ちくらみ、めまい、ふらつき・起立障害等の症状が軽減されます。
・用法:透析開始30分から1時間前に1回200〜400mgを経口服用する。
・副作用:頭痛、動悸、吐き気等
C塩酸エチレフリン(一般名)=商品名「エホチール錠5mg」「エホチール注射液10mg/管(1管1mL)」=
・腎不全患者での減量の必要性:なし
・透析性:分布容積が大きいため、透析性は低い。
・作用機序と特徴:α受容体興奮剤。心拍出量増加、抹消血管抵抗の減少(少量では低下)、循環血液量の増加作用を示し、血圧を上昇させる。血圧は心拍出量増加の因子がより強く作用し、昇圧する。
・用法:内服は1日15〜30mg3回、注射は1回2〜10mg
・副作用:動悸、頭痛、口渇、吐き気等
Dカフェイン(一般名)=商品名「カフェイン」=
・腎不全患者での減量の必要性:なし
・透析性:透析で除去されやすい。
・作用機序と特徴:交感神経刺激作用とレニンアンジオテンシン系活性化作用がある。アデノシンの血管拡張を抑制するため、下肢の血行不全のある糖尿病患者や冠状動脈不全の患者には用いない。
・用法:透析開始後2時間目に100〜300mg投与する。
・副作用:不眠、めまい等
・追記:私もたまに300mgを透析後半(終了2時間前)に服用することがあります。(私の場合、「カフェイン」は適宜300mgを10包処方してもらい、透析中常時携帯しています。)
 <参考>
透析終了後に高度の起立性低血圧を生じる患者には、透析が終了してもなおしばらく臥位を保たせる。また、透析終了操作時に100〜200mgの上記カフェインを経口投与すると、しばしば透析終了後における起立性低血圧を軽減させることができる。但し、カフェインは腎排泄性なので、透析終了後では長く体内に貯留する。従って、下肢の血行が極めて不良な糖尿病患者にはカフェインの投与を控えるのが安全である。また、虚血性心疾患や不整脈に対してカフェインはこれを増悪させることがあるので、このような合併症を有する患者ではカフェインの投与は慎重でなければならない。


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