Q66.「スギヒラタケ」の急性脳症問題はその後どうなりましたか。

2005/03/17 (Thu)
A.「スギヒラタケ」の急性脳症問題について、平成17年3月15日付毎日新聞朝刊から抜粋したものを参考までに次に載せておきます。この記事からしても、透析患者がこれを食するのは避けるべきでしょう。

◆食用キノコの「スギヒラタケ」を食べた(人工透析患者等)腎障害のある患者らに平成16年秋、急性脳症が多発した問題で、キノコに含まれるたんぱく質の一種が原因の可能性が高まった。
◆厚生労働省研究班の江口文陽・高崎健康福祉大学教授(栄養学)は、腎臓等の臓器に障害を起こすたんぱく質とみている。同教授は、「スギヒラタケ」の菌糸を培養するなどして、たんぱく質成分のみを抽出した。6匹づつのマウスの腹部に注射したところ、一定量ですべて死んだ。このためウイルスや細菌、農薬等外部環境から付着した物質ではなく、「スギヒラタケ」内部のたんぱく質の一種と推定した。投与されたマウスの体内では、血中の白血球や血小板等の成分が著しく増加していた。解剖したところ、腎臓の組織に炎症があったが、脳には異常がみられなかった。
◆一方、太田富久・金沢大教授(天然物化学)らは、「スギヒラタケ」に血液中の血球を破壊する作用のある有毒物質が含まれているとしている。太田教授らのグループは、水で「スギヒラタケ」を30分間煮出したエキスをマウスの腹腔内に投与した。90度の湯で抽出したエキスを投与したマウスは10匹中7匹が死んだが、100度で抽出したエキスでは1匹も死ななかった。死んだマウスは赤血球や白血球が壊れ、多臓器不全の状態だった。両方のエキスを詳しく分析したところ、90度で抽出したエキスにだけ含まれる分子量15万程度の高分子が見つかった。同教授は、毒性を持つ糖たんぱくの一種ではないかと推測している。

 その後平成17年8月27日に福岡市で開催された「日本法中毒学会」において、浜松医大法医学教室(鈴木修教授)や滋賀大などのグループが、「スギヒラタケ」から、「シアン化水素(青酸)」を検出したとする研究結果を発表いたしました。
 青酸をごく微量含むキノコとしてはエリンギやマイタケなどが知られています。実験グループの権守邦夫浜松医大助手は、「スギヒラタケ」から青酸が検出されたのは初めてだが、含有量や急性脳症との因果関係は、まだ分からないとしています。

 その後平成18年9月19日付毎日新聞朝刊によれば、「スギヒラタケ」に、筋肉の細胞を壊す毒性がある可能性を、高崎健康福祉大(群馬県)の「江口文陽教授(キノコ学)」が突き止めました。筋肉細胞の破壊は、腎不全や脳症につながることもあり得るため、江口教授は「毒性解明の可能性が出てきた」としています。このことは、平成18年9月20日に秋田市で開かれた「日本きのこ学会」で発表されました。
 江口教授は、正常なラットと人為的に腎不全にしたラットを、通常の餌を与える群と「スギヒラタケ」を与える群に分け、それぞれ血液を分析しました。 すると、「スギヒラタケ」を食べた群では正常ラット、腎不全ラットとも、脳症の発生を示す酵素や、筋肉細胞の破壊を示す酵素が、血液から検出されました。特に腎不全ラットでは、筋肉破壊を示す酵素が、正常ラットの5.7倍も多かったのです。骨格筋が融解・壊死(えし)する人間の病気としては、「横紋筋融解症」が知られています。重症になると多臓器不全で死亡する病気です。壊れた筋肉細胞から流れ出した成分が、腎臓に負担をかけるため、急性腎不全を併発することが多く、また一般に、腎不全が重くなると、脳症を起こすことがあります。
 仏とポーランドでは、「スギヒラタケ」と同じキシメジ科のキノコ「キシメジ」を食べた人が横紋筋融解症になって死亡したとの報告があるそうです。
 教授は別に、東北−九州の26都府県78地点で平成17年秋に採取した「スギヒラタケ」を、正常マウスに食べさせる実験もしました。47地点のキノコに毒性があり、食べたマウスは12〜48時間後に死にました。「スギヒラタケ」は栽培されておらず、杉などの切り株に自生し、夏から秋が採取の本格シーズンです。江口教授は「04、05年のスギヒラタケとも毒があった。今年も食べないでほしい」と一般の人にも呼びかけています。

 その後平成19年11月24日付サンケイ新聞朝刊によれば、平成19年10月中旬に新潟・魚沼地方の80代女性が2週間ほど前から「スギヒラタケ」をみそ汁に入れて食べたところ、発熱後に意識不明の重体となりました。女性は急性脳症の疑いが強いということです。女性は以前から腎障害がありました。「スギヒラタケ」が原因とみられる脳症は3年ぶりで、事態を重くみた厚労省は平成19年10月23日、「因果関係は不明」としつつも、摂取を控える呼びかけを周知するよう全国自治体に改めて通知を出しました。
 江口教授は、「腎性の高血圧や激しいスポーツで本人が気付かないうちに腎疾患になっている場合もあるので健常な人も摂食は控えるべき。少量でも、火に通しても危険」と話しています。
 皆さん、自分自身だけでなく、周りの透析患者や腎臓の悪い人に対しても、「スギヒラタケ」は絶対に食べないよう周知徹底いたしましょう。

 その後、厚生労働省通知や食品安全委員会報告、さまざまなインターネット情報、透析患者間の情報伝達などの波及により、「スギヒラタケ」摂取は自粛されるようになりました。非腎不全患者に発症した単発例の報告はありますが、集団発生の報告はなくなりました。しかしながら、原因物質は結局同定されていないまま、本件は終結した感があります。


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