Q65.「イーカム(ECUM)」って何ですか。

2005/02/03 (Thu)
A.「イーカム(ECUM<extracorporeal ultrafiltration methodの略>)」とは、ダイアライザーに透析液を流さず、また補充液(置換液)の投与も行わず、限外濾過の原理を応用して血液から除水のみを行う方法です。「イーカム(ECUM)」では透析液が流れていませんので拡散は働きません。ですので、限外濾過のみが働いて除水が行われるのですが、このときに分子量の小さな物質はダイアライザーの膜を通過して、水分と一緒に出てきます。ナトリウムやカリウムはイオンであり、十分に小さいですから、「イーカム(ECUM)」の除水で、水と一緒に出てくるのです。水分と一緒に出てくる分子量の小さな物質は、血液の濃度と変わりはありません。
 血液透析中に除水を行うのに比べ、尿素やクレアチニン等の除去(拡散によって)に伴う血漿浸透圧の低下がないため、比較的大量の除水を行っても、血圧低下や下肢の筋肉痙攣等の不均衡症候群の出現することが少ない方法です。血圧が下がりにくいのは、「イーカム(ECUM)」自体の効果というより、透析液が流れていない分、血液が冷やされる効果(低温透析と同じ)であるとも考えられます。
 従って、「イーカム(ECUM)」は、体重増加の多い透析患者に対し、通常の透析で除去し切れなかった水分を除去するために血液透析に引き続いて行うことが多いです。この居残り除水時間を、透析現場では「残業」とか「お残り」と呼び、「イーカム(ECUM)」中は、コンソールのパイロットランプが青になります。
 また、溢水による急性肺水腫や1週間を通じドライウェイト(適正体重)まで水分を除去しきれないなどの場合は、本来の透析日以外の非透析日に単独で「イーカム(ECUM)」を行う場合もあり、わが腎クリニックでもたまにそういう透析患者さんも見かけます。私の場合は、幸いにもまだ過去に1回しか「イーカム(ECUM)」の経験はありません。(30分残業1回のみ)
 尚、体重増加が著しい場合は、血液透析に先立って「イーカム(ECUM)」である程度の除水をしてから、通常の透析に移行するやり方もありますが、この方法は実際の透析現場ではあまり採られていないようです。皆さんの施設では、どのようなやり方で「イーカム(ECUM)」を行っていますでしょうか?それとも、全くやっておりませんか? 最近では、「イーカム(ECUM)」を行う透析施設は、ほとんどなくなりました。
 いずれにしても、私達透析患者は、日頃の水分管理をしっかり行ない、自分の時間あたり設定除水量の限度を把握し、「イーカム(ECUM)」をしなくても、少なくとも週3回の透析でドライウェイトまで除水できるようにしたいものです。(基本は毎回ドライウェイトまで除水、ドライウェイトが不適正な場合はすぐ調整してもらいましょう。)
 尚、統計的には時間あたり除水量は、ドライウェイト(適正体重)の「1〜1.2%」のグループにおいて長期生命維持の確立が一番高いという結果が出ています。(無尿の患者を想定、透析中の飲食の分は含まれない)
 <参考>
通常の透析に引き続いてイーカム(ECUM)を行う場合には、イーカム を単独で行う場合ほどには循環動態の安定は期待できないが、血液透析中にすべての除水を行う場合よりは循環動態は安定する。また、血液透析に先立ってイーカムである程度の除水を行う場合には、イーカムに引き続いて行われる血液透析中に循環動態が不安定となる。しかしこの場合でも、血液透析中にすべての除水を行う場合よりは循環動態は安定する。また、不整脈のある心不全患者などで、電解質変化を避けながら除水する場合もありますので、そういう場合はイーカム(ECUM)は必須な治療だと言えます。


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