Q51.透析中に食事をすると、どうして血圧が下がってしまうのですか。(特に持病に糖尿病がある場合、透析中には食事を摂らない方がいいですか。)

2004/09/29 (Wed)
A.透析中に食事をすると、内臓へ血液が集まるため、抹消の血管内の血液量が減少し、血圧が下がりやすくなります。特に糖尿病を持つ患者では、この現象が顕著に起こります。これは、糖尿病による神経障害と関係があります。この点について次に説明します。
 糖尿病による神経障害は、抹消神経障害の形をとることが一般的で、足のシビレや知覚がにぶくなるなどが知られていますが、神経障害は、消化管等内臓に分布する自律神経系に対しても生じます。例えば、胃や腸に分布している神経が障害されると、通常では食物摂取後に起こる食物の分解・移動・吸収・排泄という一連の作業が円滑に行われにくくなります。その結果、食物が胃内に長時間滞留することによる腹部膨満感や嘔気、嘔吐という形の臨床症状が出現しやすくなります。これを「糖尿病胃腸症」と呼びます。また、食物の胃内停滞による胃拡張状態は、内臓臓器に分布する血管系の拡張を招き、大量の血液が内臓領域にプールされることになります。
 透析治療では、ご承知の通り体内に貯留した水分を除去するために、除水という操作が行われています。それでなくとも除水による血圧低下が起こりやすくなっているうえに、透析中の食事摂取時間が透析後半にかかると、除水による血管内の血液量減少に加え、前記の消化管領域の血管拡張による血液の移動が重なり、血管内血液量が大幅に減少して、血圧低下が起こる可能性が高くなります。血圧低下だけでなく、食事後の体調変化につながる原因ともなります。また、透析中に食事を摂ると血圧が下がりやすくなるというのは、食物が胃に入るとことにより胃液が分泌されるのもその原因と言われています。このときの胃液は約700mlにも及び、この影響は約40分続きます。加えて、食事に併せて臥位から座位になると、間質からの水分の戻り(血漿再充填=いわゆるプラズマ・リフィリング)が悪くなるため、循環血液量が減って余計に血圧が下がりやすくなります。
 これらの他にも、食事を摂ると血糖値が高くなり、濃度勾配によって血液中のブドウ糖が透析液中に失われてしまう一方で、インシュリンは血液中に残るため、インシュリンが相対的過剰となり低血糖が起こりやすくなります。これも血圧低下や体調不良の一因です。
 以上の観点から、自律神経障害を合併している糖尿病患者は、透析中の食事は控えた方が無難と言えます。また、透析中の食事摂取とは関係なく、持病に糖尿病を持つ患者は、日頃から透析間の体重増加を少なくするように食事・水分管理を徹底することや透析中の血圧低下を予防するような様々な対策をスタッフにとってもらうことも大変大事なことです。
 因みに、持病に糖尿病を有する私の場合ですが、ちょうどお昼時期に透析半ばを迎えます。透析開始以来透析中に食事<間食も>をしたことはありませんでしたが、平成16年11月以降の「オフラインHDF」施行に伴う透析中の血圧の安定を受け、透析日の血糖コントロールの観点から、恐る恐るですが平成17年1月24日より、透析中のお昼12時前(概ね透析開始後2時間以内)に「透析食弁当(弁当業者のもの)」を食べています。


BACK




- Genesis -