Q5.各検査データの中で、何を一番重要・重視しなければなりませんか。

2004/05/10 (Mon)
A.いろいろな見方や考え方があるかと思いますが、何と言ってもそれは「カリウム」ではないでしょうか。その理由は、「私の各種検査データ」の解説コーナーのところでも書きましたが、カリウムは、直接死につながる恐ろしい物質だからです。他の項目が異常値を示してそれが原因の合併症によって死に至るケースもありますが、カリウムは、これ自体で心臓を止めてしまう働きがあります。高カリウム血症/頓死(とんし)は、以前に比べだいぶ減ってきましたが、2014年1年間は、794名(日本のどこかで1日2.18人が死亡している勘定)の透析患者が高カリウム血症/頓死(とんし)で死亡しています。従って、高カリウム血症を決して侮るわけにはいきません。
 カリウムが上がる原因は次の三つが考えられます。
@ やはり食事によって上がります。カリウムの多い食品は、野菜・果物・イモ類・豆類です。ではカリウムはどのように摂取すればいいんでしょうか。カリウムは水に溶ける性質がありますので、水にさらしたり・ゆでこぼすことにより、調理前より数割減らすことができます。ただ、ゆでてもほとんどカリウムの減少しない食品(栗・枝豆・とうもろこし等)もあります。それから、ゆでこぼすことのできない果物等は缶詰を利用し、カリウムが溶け出しているシロップは捨てます。どうしても生の果物を食べたいときは、あまりお勧めできるというものではありませんが、「透析直前」か、あるいは多少の飲食が許可されている透析施設では「透析開始直後」に食べることです。これは、カリウムが非常に抜けやすい分子なので、「透析直前」か「透析開始直後」に食べても、透析終了の頃にはカリウムはほとんど抜けてしまうからです。(私の場合、自宅から透析施設へ出発する直前に例を挙げれば冬場だと「みかん」1〜2個、夏場だと「すもも」2個程度食べるときもあります。)
A 食事が摂れていないときやサウナで無理に汗をかいたときなどの場合にもカリウムは上昇します。食事が摂れていないときは、人間の身体は自らの体の細胞を壊してエネルギーを作ろうとします。細胞内にはカリウムがたくさん含まれているので、細胞がたくさん壊されると、カリウムも上昇してきます。従って、摂りすぎてもいけませんが、毎日の食事で十分なカロリーを摂取するようにしなければなりません。
サウナの場合も、無理して汗をかこうとするため、これもまた細胞が壊されてカリウムが上昇しますので要注意です。
B カリウムの上昇は、消化管出血のあるときや透析不足によっても起こります。消化管出血のあるときは、ヘマトが下がって貧血剤静注を増量したとか、便潜血検査が陽性とかがありますし、胃カメラを受けた方がより確実にわかります。消化管出血の場合は適切な治療、透析不足の場合は透析時間の延長、血液流量のアップ、高性能のダイアライザーに交換等が必要です。
尚、アシドーシス(体液が過度に酸性化した状態)やβ2遮断薬(降圧剤)投与の場合もカリウムは上昇します。それと、溶血(血管の中で赤血球が壊れてしまうこと)によって、赤血球の中にあったカリウムが血液の中に出てきてしまうために高カリウム血症となることもまれにあります。この場合、やはり貧血が進んだり、血液中のビリルビンという物質が上昇したりしますので、定期の血液検査の項目を確かめる必要があります。

 以上がカリウムの上がる原因ですが、カリウムはかなり個人差がありますので、上がりやすい人は特に注意が必要です。
 いずれにしても、検査結果のカリウム数値を見ながら、自分はどの程度まで食べることができるのかを把握しておくことが大事です。
 では、カリウムが上昇してくるとどのような症状が出てくるのでしょうか。この点、整理すると次の通りです。
 @手足や口唇がしびれる。
 A手足の力が抜けた感じがする。
 B身体がだるくなる。
 C無意識に舌や口の中を噛む。
 D口がこわばり、ものが言いにくくなる。
 E下痢になる。
 F冷や汗が出る。
 G胸が苦しくなる。 
 Hひどいときには心臓が止まってしまう。
 ここで、カリウムと心臓との関係について、言及しておきましょう。心臓には、「刺激伝導系」というシステムが張り巡らされ、これを伝わる電気刺激によって、心臓は整然と拍動しています。血清カリウム値が異常に上昇すると、「刺激伝導系」のはたらきが低下して指令の伝達が抑制され、心筋が勝手気ままに動くため、心臓から血液を拍出できなくなり、最終的には心臓の動きが停止します。

 従って、以上の@〜Gのような症状が出たときには、まずカリウムを疑い、急いで病院に連絡して、すぐ透析を受けた方がよいです。カリウム自体は透析で極めて抜けが良いので、透析をすれば30分から1時間程度で症状は治まってしまいます。
 また一方で、カリウムは身体にとって必要不可欠なものなので、ある程度摂取しなければ、今度は逆に低カリウム血症(筋力低下、けいれん、麻痺、不整脈等)をを起こしてしまうから要注意です。
 カリウムを下げる薬剤は、カリウムを吸着してくれる働きのあるイオン交換樹脂(カリメート、アーガメイトゼリー、ケイキサレート等)の内服が効果的です。私は今のところこの薬は服用していませんが、便秘の副作用がありますので、できればこのまま服用せずにいきたいものです。(ただ、恒常的ではありませんが、私の場合、果物等カリウムの高い食品をたくさん食べたときには臨時<特に中2日の土日>に「アーガメイトゼリー」を1個<25g>を食中に服用することがあります。<いつも手元に置いてあります。>)
 次に、カリウム値が高い(6.0〜 6.5mEq/l)ときの7つのチェックポイントを紹介しておきましょう。
1.野菜、フルーツの食べる量は多くないか。
2.肉や魚、牛乳等の副食を摂取しすぎていないか。
3.豆類(大豆・納豆・煮豆・ピーナッツ等)の食べる量は多くないか。
4.いも類は食べすぎていないか。
5.海草類(ワカメ・コブ等)等を摂取しすぎていないか。
6.100%果汁のトマトジュース・野菜ジュース等は飲んでいないか。
7.食事の全体量、食事のバランスに問題はないか。
<参考>
高カリウム血症の治療(イオン交換樹脂や透析療法以外)
1.心筋の保護治療
 8.5%グルコン酸Ca(5分以内に効果発現)
 10〜30mlを2ml/分かけてゆっくり静注
2.体内k分布を変える治療
 @7%NaHCO3(10分以内に効果発現)
  50mlを5分以上かけて静注または点滴
 Aグルコース・インスリン(Gl)療法(1時間以内に効果発現)
  即効型インスリン1単位に、グルコース5gの割合でゆっくり静注または
  点滴

 血清カリウム値の参考評価を次に載せておきます。
 《血清カリウム値の参考評価》
 @6.5mEq/l以上・・・・・・危険
 A6.4〜6.0mEq/l・・・・要注意
 B5.9〜5.5mEq/l・・・・やや注意
 C3.6〜5.4mEq/l・・・・安全
 D3.5mEq/l以下・・・・・・低K血症要注意
  <8mEq/l以上になると心停止の危険性が高まります。>
 《低カリウム血症の症状》
・軽症であれば脱力感や筋力低下など骨格筋の症状、悪心、嘔吐、便秘等消化管の症状
・重症の場合は四肢麻痺、呼吸筋麻痺、不整脈、腸閉塞等に至ります。

 尚、炭酸飲料や缶コーヒー等の清涼飲料水の「カリウム」「リン」含有量も公開されている飲料メーカーのHPアドレスを次に載せておきます。他のメーカーの製品も似たり寄ったりだと思いますので、参考になります。
 ★アサヒ飲料(株)の該当ページ(アレルギー・原料・栄養成分一覧)
http://www.asahiinryo.co.jp/products/materials.psp.html


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