Q49.亜鉛(Zn)と味覚障害・腎性貧血等との関連について教えて下さい。

2004/09/16 (Thu)
A.透析患者の味覚障害は、血漿亜鉛(Zn)濃度と関連があり、亜鉛を投与することによって味覚が回復します。亜鉛は、必須微量元素の中では最も臨床的に欠乏が観察されることが多い元素です。
 透析患者にとっておいしく食べることはQOLを高める上で重要であり、味覚を正常に保つことは適切な食事療法を長時間持続させ、安定した治療を継続するために必要ですが、血液透析の合併症の一つに味覚障害があります。
 透析患者の味覚障害の原因としては、「降圧剤等の薬剤」「性別」「喫煙習慣」「唾液分泌の低下」による味覚受容機能低下に加え、血漿亜鉛との密接な関与が報告されています。即ち、透析患者は、
 @味覚障害を生じやすい。
 A血漿亜鉛濃度は低下しやすい。(基準値以下)
  <基準値:65〜110μg/dl>
 B味覚障害患者に亜鉛を投与すると味覚感受能は良くなる。
 C透析前より後の方が味覚感受能は良い。
などの事実を踏まえると、透析患者の味覚障害の発現に亜鉛欠乏が関与していることは明らかです。
 亜鉛欠乏等の要因により、味覚障害が生ずれば食物をおいしく味わうことができず、透析患者のQOLは低下し、継続した食事療法が困難となります。従って、透析患者の主観的情報(訴え)と客観的情報(血液検査値や味覚検査)に基づいて、管理栄養士の食事指導や必要あらば亜鉛の薬剤投与が行われます。
 尚、亜鉛欠乏の臨床所見として、味覚障害以外に、近年亜鉛欠乏性貧血の存在が注目されています。特に透析患者は、亜鉛の摂取不足もさることながら、吸収障害も認められるので、透析患者の1日の亜鉛必要量は正常人より多い15mg/day以上の摂取を必要としています。亜鉛欠乏の透析患者に亜鉛を補充することにより、腎性貧血が改善し、結果としてエリスロポエチン投与量を優位に減らすことができます。このことにより、亜鉛欠乏はエリスロポエチン抵抗性腎性貧血の一因であると考えられています。
 さらに、亜鉛には骨形成促進や骨吸収抑制作用がありますが、腎性骨異栄養症(「ROD」)の進展と食餌性亜鉛摂取量との間にも明らかな相関が見られます。即ち、亜鉛の摂取は骨異栄養症の悪化に対し防御的に働き、また亜鉛の投与には血清PTHを低下させる作用があります。
 それから、透析患者の中には、味覚障害に加え、舌の違和感や味の変化や口の中がまずい感じなど、口の中や舌に関する症状を訴える人が少なくありません。原因がよくわからないこともあるのですが、このような症状の原因が、上記の亜鉛の欠乏やビタミンB群の欠乏であることが時々あります。亜鉛欠乏、ビタミンB群欠乏の診断は容易ではありません。血液中の亜鉛やビタミンB群の測定は可能です。(保険も適用されます)しかしながら、たとえ血液中の亜鉛が正常範囲にあっても、身体全体では亜鉛が欠乏していることがあり得るのです。これは、ビタミンB群についても同様で、血液の検査を見ると、「正常範囲だから」ということで、これらの栄養素の欠乏が見落とされてしまうことがあり得るのです。
 そこで、「診断的治療」と呼んでいますが、治療をして、即ち、亜鉛やビタミンB群の補給を行って、効果があれば「欠乏症」であったと後から診断をつける方法がとられます。幸いなことに、亜鉛もビタミンB群も比較的安全に摂ることができますの、この方法はお勧めです。
 因みに、亜鉛は卵・肉類・魚介類に多く含まれており、リンの制限からこれらの食品を制限されている透析患者様では、亜鉛が欠乏しやすいのです。
 <亜鉛処方例>
 硫酸亜鉛 50〜100mg×2回/day
 以上のことから、維持透析患者を長期的に管理する上で、薬剤の投与を含め亜鉛の適切な摂取については留意すべきです。
 「プロマックD錠75・プロマック顆粒15%(一般名:ポラプレジンク)」という胃潰瘍治療薬は、亜鉛不足による味覚障害や臭覚障害に応用されることがあります。この薬に含まれる亜鉛分の補給が目的です。  


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