Q45.何も飲んでいないのに体重が増えてしまった透析患者です。どうしてでしょうか。

2004/06/10 (Thu)
A.飲み物だけではなく、食べ物の中にも水分を多く含んでいるものがあります。このような水分を多く含んだものや水分は少なくても塩分を多く含んだものを食べ過ぎた可能性があります。塩分は必ず体内に水分を引き込みます。また、同じ食材を使っていても調理法によってかなり水分量が違っています。果物やデザート、煮物、鍋物等が多すぎないかチェックしましょう。
「お茶、コーヒー、水等は飲んでいないのにどうしてこんなに体重が増えたのだろう?」というような患者同志の会話をよく耳にします。このような場合、案外飲んだことを忘れていた水分があったりするものですが、詳しくチェックしても計算が合わず、悩むことが特に透析を導入した初期の患者に多いようです。
 透析患者の1日の理想的な水分出納は、おおよそ次の通りです。
 <無尿の場合>
      (摂取量<ml>)
    固形食物中の水分  1,000
    飲料水         400
    代謝          200
          合計  1,600
      (排泄量<ml>)
     尿             0
     呼吸・汗        800
     便           100
          合計    900
  =この場合は900と1,600の差700mlが体重増加=
 <注>呼吸・汗で失われる水分を「不感蒸泄」と言います。

 上記の水分出納の中で、飲水としての水分量は計算しやすいのですが、食事中の水分計算はなかなか面倒です。食品中の水分の割合は大きく異なるため注意が必要です。野菜や果物は80〜90%が水分です。のど越しのよいヨーグルト、ゼリー、ソフトクリーム等も60〜90%が水分です。このため食欲のないときに、これらのデザートばかり食べていると、予想以上に体重が増えることがあります。よく食べられる食品の水分量を次に掲げておきましょう。
      ★水分量に気をつけたい食品
  (食品)     (重量)(水分量)(水分割合)
 <目安量>     <g> <ml>  <%>
きゅうり<小1本>   60   58    97   
白菜<中1枚>     90   86    96
トマト<大1個>   200  191   96 
大根<中3cm大>  100   93   93
いちご<5粒>    100   90   90
もも<中1個>    200  178   89
豆腐<1/4丁>   100   88   88
ヨーグルト       90 79.2   88
みかん<中1個>   150  131   87
こんにゃく<1/2丁>100   87   87
りんご<1個>    200  172   86
全粥<軽く2杯>   300  250   83
じゃが芋<中1個>  100   80   80
卵<Sサイズ2個>  100   75   75
うどん<1玉>    250  180   72
プリン<1個>    100   71   71
魚<切身1切れ>    80   55   69
ご飯<軽く2杯>   220  140   64
ソフトクリーム<1個>180  113   63
もち<小2個>     70   30   43
すいか<小1切れ>  200  180   90 

 また、同じ食材であっても、調理方法によって水分量は変化します。一般に炒め物や揚げ物(水分1/3になります)にすると水分は蒸発します。煮物・鍋物等水を使った調理法では多くなります。
 お米でも白飯と粥は同じ重量であっても、かなり水分量が異なります。「食欲がなくて粥しか食べていなかったのに体重が増えてしまった」というのは、粥の水分かその原因です。
 そば・うどん・ラーメン等、スープが入った麺類、カレーやシチューも水分が多くなります。麺類を食すときは必ず汁は残しましょう。焼きそばや冷やし中華等に料理法を変える工夫もしましょう。 水・お茶・ジュース等の飲料水としての水分を減らすとどうしてものどが渇きますので、氷を摂取したり、うがいをたびたび行っている透析患者も多くいると思います。しかし、氷1個で15〜20mlの水分がありますし、うがいであっても口中に入った水分の1/3は飲んでしまっていると言われており、1回のうがいで6〜10mlの水分摂取になります。頻回のうがいは体重増加につながりますので、注意しましょう。
 口渇感は、血中のNa濃度や血糖値等の上昇により、浸透圧が高くなることで強くなります。摂取した塩分は必ず体内に水分を引き込みますので、「塩分=水分」という認識を持ちましょう。
 この「塩分=水分」という認識について、もう少し詳しく言及しておきましょう。
 体重1kgは食塩摂取相当量8gに相当するということは、透析の教科書には書いてありますが、ただ単に「水分管理はどうなっているの?」とか「何食べたの?何飲んだの?」と相変わらずのフレーズが日本中で繰り返されています。食塩制限については一言も触れずに、とにかく水分を我慢するようにと乱暴に指導されることがままあります。塩分管理をせずに水分を制限することは拷問を受けるに等しいと言わざるを得ません。水を飲んではいけないと言われるのは生命維持の根源に関わる恐怖を喚起するのではないかと思います。喉が渇いて水を飲めないのがどんなに苦しかったか、風呂上りのビールはどうしてあんなにうまいのか思い出してみればすぐわかることです。「水を飲んではいけない」と言われるより、「食塩の摂りすぎには充分注意が必要ですが、水は適当に飲んでもいいですよ」とでは雲泥の差があり、後者の方が透析患者の受容を得やすいことは言うまでもありません。
 ただ注意しておかなければならないことは、確かに塩分の過剰摂取により引き起こされた水分の過剰摂取が体重増加の原因の大半ですが、生活習慣的・心理的要因からついついだらだらとお茶等水分を飲み続けると、血漿Na濃度を下げすぎて、逆に塩気が欲しくなってしまい、塩分を補給してしまうこともあります。だらだらと水分を摂り過ぎないことも塩分摂取を少なくします。そして、このことがまた口渇感を強くしないことにつながります。
 これらを整理しておきますと、体重増加には次の3つのパターンがあります。
 @塩分摂取先行型:透析前Na濃度140mEq/Lぐらい
 A混  合  型:透析前Na濃度135mEq/Lぐらい
 B水分摂取先行型:透析前Na濃度125mEq/Lぐらい
(「ニワトリが先か?卵か先か?」=「塩分が先か?水が先か?」)
その人の「透析前Na濃度」と「週初めの透析間の体重増加量」の二つの情報があれば、その人の塩分摂取量も推定できますし、上記の3つのパターンのどれにあたるか、ある程度はわかってしまうことになります。次に1日あたりの推定塩分摂取量の算出式を載せておきます。
・1日あたりの推定塩分摂取量=透析前Na濃度(mEq/L)×58.5(NaClの分子量)×週初めの体重増加量(Kg)÷1,000÷日数
              


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