Q42.原疾患が糖尿病の透析患者の場合、血糖値とヘモグロビンA1cのどちらが大事ですか。それから,グリコアルブミン(GA)検査についても教えて下さい。

2004/06/05 (Sat)
A.「食事療法」「運動療法」「薬物療法」をきちんと守った上で、動脈硬化による合併症の発現等を防止するために、随時血糖値よりも、あくまで参考値ですが、ヘモグロビン(Hb)A1cの方が大事ではないでしょうか。このことを前提に、血糖コントロール状態の指標と評価を次に掲げておきましょう。(透析患者の場合「ヘモグロビンA1c」は、貧血と造血剤の影響を受け、実際より低目に出てしまうので、下記数値より厳しく考えた方が良いです。以下数値は、日本糖尿病学会値<JDS値>です。現在は、国際基準値<NGSP値>が使用されており、JDS値+0.4がNGSP値となります。)
         (優)       (良)   (可)   (不可)
 HbA1c(%) 5.8未満    5.8〜6.5未満 6.5〜8.0未満 8.0以上
 空腹時血糖   80〜110未満 100〜130未満 130〜160未満  160以上
 (mg/dl)
 食後2時間血糖 80〜140未満 140〜180未満 180〜220未満  220以上
  (mg/dl)

血糖値は、原疾患が糖尿病であるならなおさらのこと、透析患者では実施されている食事療法や薬物療法(透析患者はインスリン療法が原則)が適当であるかどうかを判断するために定期的に測られていると思います。これに対しHbA1cは糖尿病の長期の血糖コントロールの指標として用いられるものです。これは、HbA1cが毎日の血糖値のいわば平均値だからです。
この血糖値とHbA1cの違いを少し詳しく説明しておきましょう。
 空腹時血糖は、主としてインスリンが肝臓でのブドウ糖の産生量をどの位抑制しているかにより変化し、食後血糖は、主としてどの程度のエネルギーを摂取したかやインスリンにより筋肉等全身の末梢神経内にどの位ブドウ糖が取り込まれたかにより変化します。従って、空腹時血糖値や食後血糖値は、採血時に限定された血糖のコントロール状態だけを反映するものであり、過去数日間の食事摂取量・運動量を調整することにより、血糖値を基準値にすることもできます。
 これに対してHbA1cは、ブドウ糖が赤血球中のヘモグロビンと非酵素的に結合してできたグリコヘモグロビンの割合を測定しているのです。即ち、どの位の量のブドウ糖が存在したかによって(つまり血糖値がどの位であったかにより)、ブドウ糖と結合したヘモグロビンの量が変化し、さらに赤血球の寿命がくるまで血中に残っているので、過去1〜2ヶ月間の血糖の平均値を知ることができるわけです。従って、長期の血糖コントロールの指標として重要で、慢性的な高血糖をとらえる上で妥当な検査なのです。
 しかし、忘れてならないことは、毎日の血糖値の日内変動をよくするよう積み重ねればHbA1cが改善されるということです。
 それと、以上のようなHbA1cと血糖の違いから解るように、血糖値の正常化がHbA1cに反映するのは2〜3ヶ月後になりますので、HbA1cがまだ高いからといって、インスリン量等を増量したりすると、低血糖ショックになる可能性があります。治療効果の判定にHbA1cを使用するときは、HbA1c値の改善や悪化が遅れること即ちタイムラグがあることに注意を払う必要があります。
  尚、「糖尿病透析患者の血糖管理」については、本HP左ボタンコンテンツ「その他インフォメーション」の【20】も参考にされて下さい。
※日本透析医学会による「血液透析患者の糖尿病治療ガイド2012」における糖尿病透析患者の血糖コントロールの指標と目標値のポイントは、次の通りとしています。
@透析開始前の随時血糖値(透析前血糖値)及び「グリコアルブミン(GA)」値を血糖コントロール指標として推奨する。
A随時血糖値(透析前血糖値:食後約2時間血糖値)を180〜200mg/dl未満、「グリコアルブミン(GA)」値「20.0%未満」、また、心血管イベントの既往歴を有し、低血糖傾向のある対象者には「グリコアルブミン(GA)」値「24.0%未満」を血糖コントロールの暫定的目標値として提案する。
B「グリコアルブミン(GA)」は、1ヶ月に1回測定することを推奨する。(非糖尿病透析患者においても1年に1回の測定推奨)
C「ヘモグロビンA1c(HbA1c)」値は、貧血や赤血球造血刺激因子製剤(ESA製剤)の影響により低下し、透析患者の血糖コントロール状態を正しく反映しないため参考程度に用いる。


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