Q39.新リン吸着剤「レナジェル」「フォスブロック」は、魔法のリン低下薬なんでしょうか。また、日本でも認可・発売された「炭酸ランタン」「ビキサロマー」「クエン酸第二鉄水和物」「スクロオキシ水酸化鉄」とは、どのようなリン吸着剤ですか。

2004/05/15 (Sat)
A.リン吸着剤(一般的にリン低下薬とほぼ同義語)は、Ca剤、塩酸セベラマーのような高分子化合物(ポリマー)、その他に分けられます。
 ご承知の通り、「塩酸セベラマー」として、平成15年6月26日より、「レナジェル錠250mg」は「中外製薬(株)」から、「フォスブロック錠250mg」は「キリンビール(株)」からそれぞれ製造・販売されています。
 強力なリン吸着能をもつアルミニウム製剤(「アルミゲル」)がかつては使われていましたが、アルミニウム骨症や脳症の副作用がありますので、急激に短期間にリンを下げなければならない特別な場合を除き基本的に投与禁忌になって以来、「塩酸セベラマー」が発売されるまで、Ca剤がリン吸着剤として汎用されてきました。
 Ca剤としては、『沈降炭酸カルシウム(商品名:「カルタン錠500」「炭カル錠」「沈降炭酸カルシウム(粉)」)』が最も一般的で、よく食物と混ざるよう食事中に服用するよう指示されていますが、皆さん方の中でも処方されておられる方は多いと思います。この薬は、1日あたり1.5〜3.0g処方されることが多いですが、ときに6.0g/day以上と大量に用いられることもあります。
 この「沈降炭酸カルシウム」の特徴は、血清リン値の低下のみならず血清Ca濃度を上げることができますが、反面活性型ビタミンD製剤と併用すると血清Ca値の上昇を招き、Ca×リン積(理想55以下)が上昇してしまうという欠点があります。また、「沈降炭酸カルシウム」が、リン吸着剤として有効に機能するためには、胃酸の存在が必要ですので、胃酸分泌を抑える薬、即ちPPIやH2ブロッカーを服用している場合には、特に「沈降炭酸カルシウム」の錠剤の効きはよくないと考えられます。尚、後記の「塩酸セベラマー」は、こういった胃酸の影響を受けない薬とされています。
 別のCa剤としては、「乳酸カルシウム」や「酢酸カルシウム」がありますが、「乳酸カルシウム」はCa含有量が「沈降炭酸カルシウム」の半分のため倍量服用しなければならないし、「酢酸カルシウム(商品名:「リンゴ酢カルシウム」)」はリン吸着能は「沈降炭酸カルシウム」より優れ、血清カルシウム値上昇もきたさないと言われていますが、健康保険が適用にならずまた味覚の点で服用しにくいという欠点があります。「沈降炭酸カルシウム」で血清カルシウム値が上昇しすぎる場合は、主治医の先生と相談して「酢酸カルシウム」服用やこの薬と「沈降炭酸カルシウム」の併用(主治医の先生に要確認)も試してみる価値はあると思います。
 以上のCa剤の欠点を補うべく登場したのが冒頭紹介した「塩酸セベラマー」です。発売前から、健康保険適用のCaやアルミニウムを含まない高分子化合物で、腸の中でリンと結合し、体内に吸収されることなく糞便中に排泄されるという夢の新リン吸着剤として前評判や期待が極めて高かった薬剤です。
 私も、発売日に早速「レナジェル錠250mg」を処方してもらい、その後約半年間「カルタン錠500」と併用いたしました。
 確かに、活性型ビタミンD製剤を服用していても血清カルシウム値は上昇せずに、リンのコントロールは良好でしたが、いかんせん酷い便秘に苦しむようになり、QOLが著しく阻害され、その時点では「沈降炭酸カルシウム(粉)」に切り替えざるを得ませんでした。
 この「塩酸セベラマー」は、リン吸着能(Ca剤:塩酸セベラマー≒3:2、錠数にして3:1)に加え、腸肝循環の際にコレステロールも吸着されることから血清コレステロール値の低下作用(故に低栄養患者では問題も)も期待できますが、しかし一方では、代謝性アシドーシス(pHが7.4未満に低下した状態=詳細は本「Q&A」のQ58のA参照=)の増悪の可能性もあり、さらにこの薬剤は水分を吸収すると急速に膨れることから腹部膨満・便秘等の消化器系の副作用があり、その出現は欧米のデータに比べ日本では高く、軽症を含めると60%にもなり、投与量の増量(それでなくても炭酸Caの1.5倍程度の投与量が必要なため服用錠数多い)の妨げになったり、コンプライアンス(遵守)の低下に繋がっています。皆さん方の中にも、「レナジェル錠250mg」や「フォスブロック錠250mg」服用に伴う便秘等でお悩みの方も多いと推察いたします。
 従って、欧米ではすでに臨床応用されていたこの「塩酸セベラマー」はようやくわが国でも使用可能となっているわけですが、決して魔法のリン低下薬ではなく、これまで通りの高リン血症対策は必須であり、過信は禁物です。(食事中のP制限<1日800mg以下>があくまでも基本)
 尚、「塩酸セベラマー」はCa剤と異なり胃内pHの影響は認められないため、服用のタイミングは食事前・中・後いずれもOKです。また、「塩酸セベラマー」をCa剤から切り替えて使用すると血清Ca濃度が下がり、二次性副甲状腺機能亢進症の増悪を招く可能性がありますので、透析液Ca濃度やCa剤からの切り替え法を慎重に検討する必要があります。「塩酸セベラマー」とCa剤との併用(主治医の先生に要確認)は、現時点わが国において明確なデータはありませんが、海外の報告からは少なくとも両者には阻害作用はなく、相乗効果はないものの相加効果はあるようです。この点については、私の体験から言っても正解のようです。
 ここで、ある透析施設における塩酸セベラマー(「レナジェル」「フォスブロック」)の基本的な投与条件を紹介しておきましょう。
【1】適応基準(優先順位)
  @高Ca血症+高PTH血症でパルス療法が行えない場合
  A既に1日4.5g以上の炭酸Caを投与している場合
  Bパルス療法を施行している場合
  C血清Ca濃度が10.0mg/dlを超えている場合
  D食事摂取過剰の場合
【2】非投与対象者(投与除外基準)
  @既に便秘症で下剤を常用している患者または以前の投薬で
   便秘症がひどかった患者、またイレウス、消化管穿孔等の
   既往のある患者
  A過敏症状、胃部不快感が慢性にある患者、胃潰瘍、逆流性
   食道炎等の消火器症状の強い患者
  B炭酸Caの投与で既に血清Ca濃度が9.4mg/dl即ち
   目標数値に達している患者
 更に、本来高コレステロール血症の治療薬の『コレスチミド(商品名:「コレバイン錠500mg」「コレバイン顆粒70%」「コレバインミニ83%」)』も、Caを含まないリン吸着剤として、また同時に高カルシウム血症の予防薬としても使われますので、紹介しておきます。(但し、便秘等の副作用あり。)
 最後に、その他のリン吸着剤としても使われる『ニセリトロール(商品名:「ペリシット錠125mg・250mg」)』を紹介しておきましょう。この薬は、本来脂質代謝改善の目的で使用されていましたが、血清リン濃度の低下作用があることがわかりました。しかしながら、透析患者においては掻痒・貧血・血小板減少等の副作用が多く、処方するにあたっては注意が必要です。
 以上のように、どのリン吸着剤も一長一短があり、今後副作用の全くない新薬の登場が引き続き期待されているところです。(炭酸ランタン、他の陰イオン交換樹脂製剤等)
 尚、2004年10月に、上記「炭酸ランタン」がアメリカ食品医薬品局(FDA)を通過しましたが、カルシウム負荷を軽減させるために腸管でのカルシウムの吸収が少ないとされるこの薬が日本でもついに平成21年3月11日に登場しました。(詳細は下記<参考>参照)(欧州ではスウェーデンにおいて承認済み、今後も承認国が増加する見込み) さらに、アステラス製薬から、高リン血症治療剤「キックリンカプセル250mg」(一般名:ビキサロマー)が、平成24年6月26日に発売されました。この薬は、リン酸結合性ポリマーで、「塩酸セベラマー」と同作用を有し、リン酸を結合しますが、水と固化しないので、「塩酸セベラマー」と比べ、便秘の副作用が少ないとされています。Caと金属イオンは含みません。「キックリンカプセル250mg」の詳細は、次のURLをクリックしてご覧ください。
http://www.interq.or.jp/ox/dwm/se/se21/se2190032.html
 また、腸管リン吸収機構である「Na-Pi(ナトリウム・リン共輸送担体」阻害薬はまだ基礎研究段階です。
 尚、最後に現在私が服用しているリン吸着剤「リンゴ酢カルシウム(酢酸カルシウム)」の販売サイト1つ紹介しておきます。
◆(有)ネフロン         http://www.nephron.co.jp/foods/ringo_su/ringo_s_page.html

<参考>「炭酸ランタン」(非Al非Ca含有P吸着剤)の詳細
ランタンは、希土類元素で食物中のP(リン)と不溶性複合体を形成することによって腸管でのP吸収を抑制する。炭酸Ca製剤を対照とした多施設RCT(無作為割付比較試験)において、炭酸ランタンは、炭酸Ca製剤と同等の血清P値低下効果を認めたが(P吸着能は炭酸Ca製剤や塩酸セベラマーより上、「アルミゲル」に匹敵するとの報告も)、高Ca血症の発現率は有意に低値で、安全性と忍容性も問題がなく、また1年間の炭酸ランタン投与前後の骨組織学的検討で、炭酸Ca製剤に比較して低回転骨の改善に優れた効果を示したとのことである。心配な点は副作用であるが、ランタンは金属元素でわずかに腸管吸収を受けることから、Al(アルミニウム)と同様、骨に蓄積による副作用の懸念があり(ランタンの主要排泄経路は胆汁とされており、Alと異なり腎不全患者には有利)、ラットを用いた検討では肺、肝、腎への蓄積が観察されてはいるものの、少なくとも3年間の炭酸ランタン長期投与研究では、悪心(おしん)など軽度の消化器症状を認める以外重篤な副作用は報告されていない。炭酸ランタン(海外での製品名:「フォスレノール」)は既に欧州では認可され使用可能となっているが、わが国でも現在治験が済んでおり、かねてから市販化が待たれていたところである。
 尚、わが国で製造販売する会社は「バイエル薬品(株)」であるが、「バイエル薬品(株)」の薬相談デスクによれば、平成18年12月20日、「バイエル薬品(株)」は、一般名「炭酸ランタン」について、「ホスレノールチュアブル錠250mg・500mg(以下「ホスレノール」)」という商品名で、厚生労働省に対して、日本における製造販売の承認申請を行った。そして実際に承認され、平成21年3月11日に全国発売の運びとなった。この「ホスレノール」は、その服用に水を必要としない「チュアブル錠」であり、水分摂取が制限されている透析患者のニーズに合った製剤である。
 この「ホスレノール」の用法・用量は次の通り。
「通常、成人にはランタンとして1日750mgを開始用量とし、1日3回に分割して食直後に経口投与する。以後、症状、血清リン濃度の程度により適宜増減するが、最高用量は1日2,250mgとする。」
 尚、「バイエル薬品(株)」の説明文書によれば、本剤は噛み砕かずに服用すると溶けにくいので、口中で十分噛み砕いた後、唾液または少量の水で飲み込むこととされている。

【追記】クエン酸第二鉄水和物について
一般名:クエン酸第二鉄水和物、商品名:「リオナ錠」について、2014年5月12日より鳥居薬品から発売されました。
「リオナ錠」は、クエン酸第二鉄水和物を有効成分とする新規リン吸着剤であり、消化管内で鉄とリン酸が結合し体内へのリンの吸収を抑制することにより、血清リン濃度を低下させる効果があります。国内で実施した、高リン血症を呈している透析中の慢性腎臓病(CKD)患者及び保存期CKD患者を対象としたそれぞれの第V相臨床試験において、本剤の血清リン濃度の低下作用が確認されております。また、長期投与時における安全性に大きな問題は認められていません。
<リオナ®錠250mgの概要>
・商品名:リオナ®錠250mg (Riona® Tab. 250mg)
・一般名:クエン酸第二鉄水和物
・効能・効果:慢性腎臓病患者における高リン血症の改善
(注)慢性腎臓病患者には、透析中及び保存期の慢性腎臓病患者が含まれます。
・用法・用量:通常、成人には、クエン酸第二鉄として1回500mgを開始用量とし、1日3回食直後に経口投与する。以後、症状、血清リン濃度の程度により適宜増減するが、最高用量は1日6,000mgとする。
・包装:100錠(10錠×10 PTP包装)
・薬価:1錠 99.80円
・製造販売承認日:2014年1月17日
・薬価収載日:2014年4月17日
・発売日:2014年5月12日
・製造販売元:日本たばこ産業株式会社
・販売元:鳥居薬品株式会
尚、「リオナ錠250mg」の詳細は、次のURLをクリックしてご覧ください。
http://www.interq.or.jp/ox/dwm/se/se21/se2190033.html

その他「非Ca含有P吸着剤」二つを紹介しておきましょう。
(1)正式一般名「ビキサロマ—」
詳細URL(クリック)
http://www.interq.or.jp/ox/dwm/se/se21/se2190032.html#6
@正式商品名
「キックリンカプセル250mg」
A用法・用量
通常、成人は、ビキサロマーとして1回500mgを開始用量とし、1日3回食直前に経口服用する。以後、症状、血清リン濃度の程度により適宜増減するが、最高用量は1日7,500mgとする。
B主な副作用
比較的多いのは便秘で、10人に2人くらい、その他腹部不快感、膨満感、便が硬め、きわめてまれな例として腸管穿孔や腸閉塞
(2)正式一般名「スクロオキシ水酸化鉄」
詳細URL(クリック)
http://www.interq.or.jp/ox/dwm/se/se21/se2190036.html#6
@正式商品名
「ピートルチュアブル錠250mg・500mg」
A用法・用量
通常、成人は、鉄として1回250mgを開始用量とし、1日3回食直後に経口服用する。以後、症状、血清リン濃度の程度により適宜増減するが、最高用量は1日3,000mgとする。
B主な副作用
下痢、便秘、吐き気、腹部不快感、腹痛、血清フェリチン増加、血中鉄増加、ヘモグロビン増加


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