Q21.透析患者は、ビタミン剤等サプリメントを服用しても問題ないですか。

2004/05/10 (Mon)
A.食事さえ適正にきちんと摂っていれば、基本的にビタミン剤を補充する必要はないと思います。しかしながら、低リン・低カリウム食に伴うビタミン摂取低下やハイパーフォーマンス膜による透析によって水溶性ビタミンが抜けるということも考えられます。
 近年透析患者に「カルニチン」欠乏が指摘されており、「L−カルニチン(アミノ酸の一種で脂肪の燃焼が促進される)」の補充により、エリスロポエチン不応性貧血や心筋障害に対して効果があることや透析後の倦怠感、下肢の痙攣等を抑えられることが報告されています。
 また、必須アミノ酸の一種である「メオチニン」が代謝される際に一時的に動脈硬化や心筋梗塞のリスクファクターとの報告もある「ホモシステイン(高ホモシステイン血症については、このページ一番下<参考>参照)」という物質ができます。この物質は、肝臓でビタミンB6・B12・葉酸の働きで、元の「メオチニン」に代謝されますが、ビタミンB6・B12・葉酸が欠乏すると、「ホモシステイン」が上昇します。
 従って、「L−カルニチン」「ビタミンB6」「葉酸」をサプリメントを使うなどして補充することは問題ないと思われます。「ビタミンB6」以外のビタミンB群(B1・B2・B12)も、比較的安全に摂ることができます。例えば、「葉酸」を補うお薬としては「フォリアミン」等があります。
 逆に、補充してはいけないビタミンは、蓄積する傾向にある脂溶性の「ビタミンA」です。「ビタミンA」が蓄積すると現れる「ビタミンA」過剰症状には、「神経過敏」「頭痛」「食欲不振」「掻痒感」等があります。
 「ビタミンC」は、水溶性でも代謝される過程でシュウ酸ができ過剰に補充すると「高シュウ酸血症」となるので控えた方が良いという考え方と、最近では「ビタミンC」はエリスロポエチン使用時の鉄の利用を促進するという報告が増えつつあり、透析患者では健常者に比べ「ビタミンC」摂取量が少なく、酸化ストレスによって「ビタミンC」の消費は増大しており、透析によっても除去されやすいため、むしろ積極的に「ビタミンC」は投与した方が良いという考え方もあります。最近では、後者の方が主流になりつつあります。(健常人<成人>の1日の必要「ビタミンC」は「100mg」。透析患者の場合の推奨摂取量は「60mg/日」、多くのサプリメントの推奨用量である1日約1000mgは過量と思われます。)
 尚、「ビタミンE」は、同じ脂溶性のビタミンでも「ビタミンA」と違って蓄積による害はないようです。(私も「ビタミンE」は処方してもらって服用しています。)
「ビタミンD」と「ビタミンK」は、透析で処方される薬の中に入っていることが多いですから、サプリメントによる補充は基本的に必要ありません。
 その他上記ビタミン等以外では、いわゆる「健康食品」等々はリンやカリウムが多いものがよくみられますので、これらの食品の摂取は避ける方がよいと思います。
 いずれにしても、ビタミン剤などのサプリメントや健康食品を利用する場合は、インチキくさいものもありますので、主治医の先生や栄養士さんとよく相談・確認することが重要です。
 厚生労働省では、健康食品・サプリメントによる健康被害の防止等を目的とし、氾濫する健康食品・サプリメントに関する情報を収集し、ホームページで紹介しています。健康食品・サプリメントに関する制度の説明や、医薬品を添加するなど危険な健康食品・サプリメントの事例が紹介されています。また、独立行政法人国立健康・栄養研究所ホームページの「健康食品」の安全性・有効性情報のページでは、健康食品・サプリメントの素材についての情報が検索できるページがあり、これらは正しい情報として有用ですので、それぞれのホームページを次に紹介しておきましょう。
 @厚生労働省ホームページ該当ページ
  http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/hokenkinou/index.html 
 A独立行政法人国立健康・栄養研究所ホームページ
 (健康食品等の安全性・有効性情報等)
  http://www.nih.go.jp/eiken/
それから、本Q&Aの関連書籍1冊を紹介しておきましょう。
・「腎不全と健康食品・サプリメント・OTC薬(一般用医薬品)」
  平田純生、藤田みのり編著・南江堂(2006・7・10発行)
(上記Q&Aは、「愛腎協旧HP」Q&Aから提供して頂いたものがベースとなっています。)
 尚、おあつらえむきな透析患者の栄養ドリンクを次の通り紹介しておきましょう。これは、L−カルニチン・ビタミンB群等を配合した透析専門医も薦める栄養補助食品(医薬部外品・健康保険非適用)です。それと、純度100% L-カルニチン(錠剤)も紹介しておきましょう。
 @商品名「エルピス」:L−カル二チン270mg含有・50ml
  (詳細http://www.elpis-net.com/参照)
  尚、「エルピス」に不足する水に溶けにくい栄養成分、コエン
  ザイムQ10、リコピン等が配合されている「コエンザイム粒 (1粒40
  0mg)」もあります。
 A商品名「カルフェロマルチ20」:L−カル二チン350mg含有・20ml
  (詳細http://www.beta-k.com/design/gcom371/car/index.htm参照)
  尚、L−カル二チンにコエンザイムQ10、必須アミノ酸、亜鉛などの
  栄養素が加わった「カルフェロスーパー30プラス」「カルフェロ50プ
  ラス」もあります。
  加えて、筋肉成分の栄養補給に「アルブミアップ」もありリます。
  (詳細http://www.beta-k.com/design/gcom371/car/index.htm参照)
 B商品名「液状カル二チン含有カプセル」1カプセル中:L-カルニチン
  500mg含有
  (詳細http://item.rakuten.co.jp/speed/743/参照)
 最後に、なかなか「アルブミン」が上がらない(3.5g/dl未満)透析患者のために、ニプロから、新たに「APQ10」という「アルブミン」を上げる商品(サプリメント)が販売されています。この商品には、ビタミンAやビタミンDが入っていませんので、透析患者でも安心して内服できます。
・発注先:セイコーメディカル(株)
・TEL:0725ー31ー3610

<参考>「高ホモシステイン血症」
必須アミノ酸である「メチオニン」の代謝(脱メチル化)によって作られる「ホモシステイン」も、アミノ酸の一種で、葉酸・ビタミンB12・ビタミンB6といったビタミンの助けによって、アミノ酸(元の「メチオニン」)に代謝されていきます。正常の血中濃度は、10μmol/L前後ですが、腎不全では上昇し、透析患者では20〜30μmol/Lとなっています。「ホモシステイン」は、尿中排泄で血中濃度が保たれているわけではありませんので、なぜ腎不全で血中濃度が増えるのか、完全には解明さていません。しかし、「ホモシステイン」の代謝に関係する酵素の個人差(遺伝子の違い)や上記ビタミンの作用不足が推察されます。
 「ホモシステイン」が増えて「高ホモシステイン血症」になると、数多くの心・血管系障害の危険因子の一つ、即ち「ホモシステイン」が増えると、血管内皮細胞が障害され、血液が血管内で固まりやすくなること(血栓症)が主因の一つだと考えられています。では、血中ホモシステイン濃度を下げるにはどうすればいいのでしょうか。透析患者の一部には上記の「ホモシステイン」の代謝に関係するビタミンが不足している場合があります。このような場合には、ビタミン、特に葉酸の補給で血中ホモシステイン濃度が下がります。また、血中の「ホモシステイン」の8割近くは蛋白質と結合しているため、透析での除去が困難ですが、大きな血中蛋白質も除去するダイアライザーを長期間使用すると、ある程度の血中濃度低下が期待できます。
 「高ホモシステイン血症」は、上記のように数多くの心・血管系障害の危険因子の一つと考えられていますが、透析患者の心・血管系障害にどの程度関与しているのかははっきりしていません。また「血中ホモシステイン濃度を下げると心・血管系障害は減るのか?」「至適血中ホモシステイン濃度は?」「血中ホモシステイン濃度を下げることで新たな不都合は生じないのか?」等については、今後の検討を待つ必要があります。 

<オマケ情報>「ビタミン」の種類
ビタミンには、脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンがあり、次の合計13種類あります。
@脂溶性ビタミン4種類
ビタミンA、D、E、K
A水溶性ビタミン9種類
ビタミンB1、B2、ナイアシン、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、パントテン酸、ビオチン、ビタミンC
一般的に透析患者では、透析液中に水溶性ビタミンが除去されるため、これらが低下しやすくなります。脂溶性ビタミンは、除去されにくいです。しかし、代謝や排泄異常により、透析患者の場合は、水溶性ビタミンでも過剰に蓄積しやすい傾向にあります。ビタミンDは、透析患者の場合は、腎臓で活性化されませんので、例えサプリメントで補充しても意味がありません。


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