Q101.ドライウエイト(DW)の概念が今一よく分かりませんので、改めて分かりやすく記述して下さい。

2016/08/14 (Sun)
A.「ドライウェイト(DW)」を常に適正な状態に保持しておくことは、透析治療を安定的・恒常的に施行するためと透析生活の質(QOL)を向上させるために極めて重要です。しかしながら、「ドライウェイト(DW)」というのは、極めて曖昧模糊とした概念であり、「ドライウェイト(DW)」を正確に適正に算出できる方程式や公式は存在しませんので、実に厄介な代物です。従って、ほとんどの透析患者の現在の「ドライウェイト(DW)」が真に適正であるかどうか極めて疑問であり、一人もいないのではないかとさえ思えます。こう言っては身も蓋もありませんので、以下に「ドライウェイト(DW)」の定義と調整について記述します。
 その前に、「ドライウェイト(DW)」の日本語訳ですが、いろいろな日本語があり、「基礎体重」「適正体重」「基本体重」等と訳されています。一般的に「基礎体重」が多く使われ、わがクリニックでもこれを使っています。最近では、その意味合いから「適正体重」という言い方も増えてきましたし、本HPでもこれを使っています。

◆最初に適正な「ドライウェイト(DW)」の定義ですが、透析の教科書に載っているものを整理すると次のようになります。

       ★適正な「ドライウェイト(DW)」の定義
体液(体の水分)が過剰である症状=すなわち「むくみ」「体腔液貯留(胸水・腹水等)」「心不全症状」等の溢水兆候がないことや、体液(体の水分)が過少である症状=すなわち「血液透析時の血圧低下・筋痙攣」「透析後疲労感」等の脱水兆候がなく、血圧も良好な体重のこと。
 《上記を一言で表現すれば『患者の体調が最もよい体重』のこと》

 以上のように適正な「ドライウェイト(DW)」は、日本語の定義はあっても、繰り返しになりますが、これを算出する一定の公式・方程式なんていうのはありませんので、実際の運用上は実に曖昧な悩ましい複雑な概念と言うこともできます。また、「ドライウェイト(DW)」は、健常者(健腎者)の「体重」に当たるものですから、透析生活を通じて一定ではなく、数週間から数ヶ月の間には、栄養状態で必ず変動(太ったり痩せたり)しますので、定期的に見直すことが必要です。それぞれの透析患者の「ドライウェイト(DW)」の適正判定や変更は、ドクターのいわば専権事項であり、他の透析スタッフはいじれないことになっています。ドクターは、それぞれの「患者の体調」「臨床所見(家庭血圧含めた血圧等)」「補助的な検査(胸部X線写真に基く心胸比<CTR>等)」等を総合的に勘案して、鉛筆なめなめ、その患者のそのときの適正な「ドライウェイト(DW)」をアバウトに判断・調整しています。ここでこれらの中の「補助的な検査」のうち「心胸比(CTR)」について具体的に説明しておきましょう。

「心胸比(CTR)」とは、わがクリニックでは2ヶ月ごとですが、たいていは月末の週末透析後に撮影される胸部X線を用いて測定され、心臓の影の大きさと胸の幅(胸郭)の比率のことで、一般的には『男性50%以下、女性55%以下』が正常範囲とされています。但し、心臓弁膜症や心筋症(心臓のポンプ機能に障害をおよぼす原因不明の心筋の疾患の総称)のある場合は参考とはなりません。また胸の形等でも多少異なります。これらの場合は、個人により適正な範囲があります。それから、レントゲン撮影の際の吸気の度合い、写真の計測法等で誤差が出ることもあります。いずれにしても、基本的には体液(体の水分)が過剰であれば心臓は大きくなりますし、逆に体液(体の水分)が過少であれば心臓は小さくなります。

 それから、適正な「ドライウェイト(DW)」を決める参考指標となる「補助的な検査」として、「心胸比(CTR)」以外にも、透析後採血検査の「hANP(ハンプと読みます)」、心臓超音波検査(エコー)で「下大静脈径を測定(6〜10mmなら適正)」する方法、「浮腫率」や「血液濃縮率」を算出する方法等があります。ここではすべての説明は省略しますが、これらの項目の中でわがクリニックにおいてはドクターの判断で、必要に応じ患者によっては「hANP」検査を行う場合がありますので、この「hANP」とはいかなる血液検査であるのかについてだけ簡単に紹介しておきましょう。「hANP」は、正式には「ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド」と言い、心臓の心房から分泌されるホルモンで、循環血液量が増大している場合、すなわち体液(体の水分)が過剰になっているとこの数値が上昇します。「hANP」の正常値は「20〜40pg/ml」ですが、透析患者の場合は「20〜60pg/ml程度(透析後採血)」が管理目標値とされています。この「hANP」も、それぞれの患者により適正な値の範囲があり、それと「心胸比(CTR)」と同様に経時的な観察が望ましいと言われています。

◆さてそれでは、「ドライウェイト(DW)」を「上げる時」と「下げる時」とは、すなわち、具体的にどんな場合に調整するのでしょうか、あくまで一般論として挙げればそれぞれ次の通りですが、実際には患者個々によってその状況・状態は異なりますので、皆さんも現在の自分の「ドライウェイト(DW)」に疑問を感じたならば、上記の「補助的な検査」結果を踏まえるとともに以下の内容をも念頭に置かれ、ドクターとじっくり相談・確認されてください。

<「ドライウェイト(DW)」を上げる検討をする時>
 @透析終盤で血圧が下がる時(収縮期圧100mmHg程度)
 A透析終盤で足がつったり、声が嗄(か)れたりする時
 B透析後の疲労感が強い時
 C日頃の血圧(家庭血圧)が低い時

<「ドライウェイト(DW)」を下げる検討をする時>
 @透析前に息切れなど心不全症状がある時
 A透析後にも浮腫やうっ血肝などが認められる時
 B風邪や下痢などで体調を崩した後や大きな手術の後
 C日頃の血圧(家庭血圧)が高い時(高血圧の管理が難しい時)

 最後に「ドライウェイト(DW)」の調整の実際ですが、たぶん想像するに『それまでの透析記録における透析中の血圧変動、透析間体重増加量、実際の透析終了時体重、検査結果(特に「アルブミン」「ナトリウム」)等を「ドライウェイト(DW)」増減のヒント』にして、変更する場合はドクターがそれまでの「ドライウェイト(DW)」のおおむね「0.5〜1.0%程度」ずつ変更されているものと思われます。この辺も、改めてドクターに確認されてみてください。あくまで私の場合ですが、病気時期の前後に1回に1Kg上げ下げすることがしばしばあります。

 尚、「ドライウェイト(DW)」のさらにの詳細については、「透析百科」の次の該当ページURLをクリックしてご覧ください。
http://touseki.loglog.jp/09.12.htm


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